154話 別大陸の者達
ホントウ島で、モルトからの報告を聞いて事で、一応様子見をしている。何か問題になれば即動くつもりだ。ただ待っているだけでは勿体ないので、俺はクレメン島へ行く。
魔物の種類は相変わらず多いが、其れだけだ。
特段変わった事もない、アルは魔物を適度に狩っていく。唯の暇つぶしなのだから本気になっていない。大きな木の場所までたどり着くと木に触れる。大きな木は嬉しそうに葉を揺らしている。
木の感情がアルに流れてくる。木の寿命は長い、つい先日アルが来たような感情だ、アルとしたら久しぶりなのだが木にしてみれば昨日の事のように感じているのだろう。
そんな木の意識が教えてくれる。この星の動きを教えてくれているアルは少し不思議に思ったがその意識に集中する。するとある事が分かった。火山が噴火する。
アルはその場所を特定しようと木に問いかける、木は星の力の流れを教えてくれた。キロエ山か拙いな。
このキロエ山というのはロング帝国内にある山だ。この山はアルの本拠地である。フェアネス王国にも近い。風の向きが悪ければかなりの被害が及んでしまう。
今日明日という事ではないが近いうちに噴火するだろう。
アルは一度ホントウ島に戻る。そこでモルトが待っていた。モルトは別大陸の者たちが挨拶にきていると伝える。アルも一度会ってみたいと思っていた事からモルトの屋敷で会う事なった。
別大陸の者たちは、この大陸から半年かけてここまで来たようだ。
目的は交易というがそれだけではなさそうだ。この者達から異様な感じがしている。もしかしてら侵略を考えているのかもしれない。
ホントウ島の王からアルたちの事を聞いたのだろう。ホントウ島の王都とアルの領地では暮らしぶりが全く違う。ホントウの生活レベルを見て侵略可能と判断していたらこのアルの領地を見てどう判断をするのだろうか。アルは別大陸の者たちにこちらの戦力を教えてやることにした。侵略できないと思わせればそれでいいのだ。
アルはワイバーン隊を島に呼び寄せた。それも20個中隊も呼んだのだ。
別大陸の者たちはワイバーンに物凄く興味があるようだが売るようなことはしない。別大陸にもワイバーンは生息しているがアルたちのように乗りこなす事は出来ていないらしい。
別大陸の者達は色々と物を物色している。高値で売れる物を探しているのだろう。そこにワイバーンの大編隊が到着した。200頭の大編隊はホントウ島上空を旋回してクレタ島へと向かう。ホントウ島ではワイバーンを200頭も休ませることが出来ないのだ。クレタ島にはワイバーン用の施設があり、足りなければクレメン島も使う予定だ。
別大陸の者たちは驚愕の表情をしていた。ホントウ島の王から話は聞いていたのだろうが聞くとみるとでは全く違うのだ。ワイバーン隊もそうだが飛竜にドラゴンまでいるのだ。余興の為にドラゴンにブレスを吐かせて山の頂が吹っ飛んだの見て恐怖したに違いない。顔が青から白に変わっていた。
そんな脅しが分かったのだろう。アルたちにこれからもよろしくと言ってきた。交易ならば喜んで商いすると伝えると向こうも真剣に取り組むだろう。
数日後、別大陸の者の中で一人の少年が隙を見てアルに近づく、アルも気づいている。
少年「あの、話をしてもいいですか。」
アル「いいよ、どうした。」
少年「実は、俺はこのままここに居たいんです。ダメでしょうか。」
アル「どうしてだい。別の大陸には家もあるだろう。」
少年「家はありません。船が家なんです。」
アル「大陸の者たちには聞かれたくないのか。」
少年「はい。」
アル「分かった。任せろ。」
アルは別大陸の代表者に声をかける。
代表者は、アルに対して気さくに受け答えをしているが、目は笑ってはいない何を考えているのか探っている。そこでアルは友好の印として剣と槍のスキルオーブを代表者渡す。代表者はもう喜んだ大喜びだ、自分たちの大陸ではスキルオーブはないのだと言う。これ一つで大金持ちになれると必死に訴えている。
そこで、もう一つスキルオーブだす、アルは提案する。今回来た者の中で数人アルが召し抱えたいと伝える。
代表者は思案するがアルの機嫌を損ねるのは拙いと考えたようだ。快諾をする。
アルは数人と言った手前何人か選ぶことにあった。一人は勿論少年だ、少年の近くに数人で固まっている者達がいる。アルはお前たちも来るかと問う。すると少年がみんなを見て頷く。
アルはこの少年たちを家臣とすることを伝える。代表者は、何となく察したようだがスキルオーブの魅力にはただが少年が数人だ問題はないと判断したようだ。次も同じようにやれば又ただに近い価格でスキルオーブが手に入ると判断をしている。
アルもその辺は分かっている。剣や槍、弓なら問題ないと考えていた。
アル達には圧倒的強さが有るのだ、その強さを実感させる意味でも剣、槍、弓のスキルは渡したほうが実感できるだろう。
すぐさま少年たちを引き取り、屋敷に連れて行く。そこで改めて事情を聞いてみる。
少年たちは元船乗りを親に持つ子供たちであった。親が死に船で下働きをして生きていたと言う。船に乗れば絶対服従だ。もし逆らえば海に捨てられてしまう。過酷な海の上の生活は、船員たちの機嫌を損なえばボロボロにされて海に捨てられてしまうのだ。この生活から何とか抜け出そうとしたがいつまでも船での生活だった。上陸の許可も出ないのだ。そして今回初めて許可が降りたこのチャンスを逃せばもう死ぬまで船の暮らしとなる。
アル「そうか、これからは自分の好きなように生きろ。その為に生活の基盤は用意してやるからな。」
少年「ありがとうございます。仲間も一緒で嬉しいです。」
「「「「ありがとうございます。」」」」
アル「応、良かったな。」
少年「もしよかったら、アル様の大陸に行きたいです。そこで一生懸命働きます。」
アル「いいぞ、騎士でも兵士でも農家でも好きなことをすればいい。ワイバーン乗りでもいいぞ。うちで一番人気だ。」
少年たちはその夜、夢を見た。船では一度も見る事の無かった夢である。不思議なくらいゆったりとした夢であった。不安もなく恐怖もなく、ただゆっくりと生きている夢であった。