142話 難民対策
フェアネス王国執務室
アルは宰相であるデラと話をしている。
このフェアネス王国についてだ。この国は今大量の移民が押し寄せている。他国で貧困にあえぐもの達・国を逃げ出した者がこの国へと押しかけてきたいる。何故そうなったのか、それはマセル王国の悪政が原因となっていた。
マセル王国は、6カ国同盟の盟主となり、各国に対してある法律を6カ国の者たちに呑ませた。その法律は奴隷制度であった。6か国内で唯一奴隷制度が存在していたマセル王国が6カ国に広がり奴隷商人たちが、他5か国に押し寄せて農家や貧しいもの達から子供や若い男女を買い漁ったのであった。その為に奴隷にされる事を恐れて逃げて来た者達であった。
アル「理由が理由だ。全員保護する。」
デラ「よかったわ、アルが以前と変わりなくて。」
アル「当たり前だろう。人はそう簡単に変わらないよ。」
デラ「いいえ。悪い方には人はすぐ変わるわ。」
アル「それよりも、この難民たちは、新規の開拓村に行かせるか。」
デラ「そうね、人々の体調や出身を確認して決めるわ。」
アル「任せるよ。」
今のフェアネス王国は、新興国家であるためにかなり忙しい、新たに開拓された村も多く、今も開拓を行なっている場所も多数ある。だが人手不足という訳ではない。
開拓にはゴーレムを使い、道路整備、城壁の修繕にもゴーレムが作業をしているのだ。その為に人自体は足りている。
それでは人々は何をやっているのか、重労働の無くなった人々は、ゴーレムの出来ない仕事をしている。細かい作業である。
機織りや各工場内での作業、酒造り、まぁ重労働以外だ。
技術も器用さも無い者達の多くは軍に入ってきている。給料も良く食事と寝床も付いている、これほど好待遇な職場はまずないだろう。多少キツイが強くなれると保証されている。その為に新兵たちは、皆本気だ。兵士から領地持ち貴族になった者達がこの国には大量に存在している。
強くなって偉くなる、新兵たちは毎日辛い訓練を行っている。怪我をしても病気になっても次の日には元気になってしまう。仮病で休むなんて出来ない。何しろ治療魔法の使い手がゴロゴロいるのだ。
新兵たちは、即死しなけれが助けてやると毎日言われている。首さえあれば死ぬ事も無いと言われるのであった。
デラは、難民問題に取り掛かる。今難民は、1000人を超えた。国境付近にとどる事は得策でないフェアネス王国の開拓地に送り込む事にした。その輸送だけでも大仕事になる。兵たちを護衛として50人単位で移動させる。そこでフェアネスに入り込んだ奴隷狩りからの襲撃も何度も発生する。
9カ国の国境を無くしたことが此処であだとなっていた。
フェアネス以外から簡単に密入国が出来てしまっている。これは問題だが今は難民が優先されている。
デラは、アルに奴隷制度を無くさなければこの問題は解決しないと訴えるが、その奴隷制度が他国の制度であるために、フェアネス王国としては何の手立ても出来ないのが現状となっていた。
デラもその事は分かっている。奴隷狩りは、フェアネスや9か国の国の民は絶対襲わない。一度でも襲えば報復が来る事を分かっているのだろう。6か国同盟の民にしか奴隷狩りを行なっていない。
デラも色々と対策を考えた。兵士の巡回を増やし監視を強化した。それでも相手は少数で行動すため中々捕まる事が出なかった。運よく捕らえても法律が邪魔をしていた。そこで難民たちをフェアネス王国民として対応した。自国の者が襲わてた事にしたのだ。もちろん本当に自国民とするのだが、手続きだけを先にした形だ。
デラと奴隷狩りの攻防も決着が着かない状況で、今度は難民どうしで争いが起こっていた。5か国の難民が同じ場所に居ればいざこざの一つや二つは起こるだろう。だが今回は少し違う。マセル王国の難民が混ざっていた。このマセル王国の難民たちも奴隷狩りに会い逃げてきていた。同じ境遇なのだが、マセル王国という事で他の5か国から攻撃を受けていたのである。
デラは、他5か国の難民にマセル王国の難民も同じ境遇だと説明する。その時は皆納得するが少し経つと同じ事が起きたしまう。
そんな事を繰り返している時に動いた。
国外に対しては何の手立ても出来ない状況が続いていた時に、6カ国同盟で動きがあった。マセル王国以外の5か国が同盟を解消したのだ。6か国同盟に居てもマセル王国だけが利益を得ている事に5カ国が嫌気がさした。そして5か国は、奴隷制度の為に国が乱れている事で奴隷制度の法を破棄した。
この5カ国の同盟脱退に激怒したマセル王国は5か国に対して戦争を仕掛けたのだ。まさか5か国もいきなり戦争になるとは思っていなかった。
初手で、5カ国は後れを取った。5か国が団結していればマセル王国を撃退していただろう。だがいきなり戦争となった事で、準備も整っていなかった。マセル王国のレイボン王国進撃で5か国は分断されてしまった。その結果、マセル王国は余裕をもって各国を侵略できるようになっていた。
各国も黙ってはいない。単独ではマセル王国には敵わないが、連携を取る事が出来れば撃退は可能だ。
だがレイボン王国がマセル王国に、占領されている状況では打つ手は少ない。
マセル王国に占領されているレイボン王国の王族の一人がフェアネス王国に助けを求めて来た。
レイボン王国から逃げ出してきたのだ。レイボン王国の王子は城に軟禁されていたが、隙を見て側近たちと城外に脱出し追手を振り切ってやっと此処までたどり着いた。
フェアネス王国はレイボン王国の救援要請にこたえる事になった。総指揮官はデラが指名された。
デラは、国内兵士に出陣を通達、兵士たちが集まるとまずはレイボン王国に進軍する事になる。
レイボン王国は、王都が占領されている状況で王族も人質に取られている。王都の奪還は兵士で何とかなるだろう。だが王族の救出は分からない。だが王子は王族より国を取った。
レイボン王国は、今民たちが苦しんでいる。民を優先してくれとデラに訴えたのだ。
デラも王子の訴えに答えるために兵士たちを進軍させる。王子も一隊を預り同行する。
フェアネス王国からゲイメル王国を通過してレイボン王国に入る。国境では抵抗もなく侵入することが出来た。王都までは二日もすれば到着する。進軍を開始した翌日、マセル王国軍が立ちふさがっていた。
マセル王国軍の最前列にはレイボン王国の民がいた。