129話 捕虜の処遇
アルたちは、ロング帝国の直轄地の屋敷を借りていた。この直轄地は、貴族の領地に近く便が良い事で帝国と話をして一時的に借りた。
そして、捕虜とした貴族達の家族を呼んでいた。
捕虜の家族たちは、貴族の家臣たちだ。家臣と言っても身分の高いものばかりだ。貴族籍を持ち領地を持っていいる者もいる。
軍(義勇兵)を統率しなければいけない立場の者達だ。それが傭兵として捕虜となってしまった貴族としては恥となっているのだ。国と国との戦ならば仕方ない事であるが私闘となれば話は変わってくる。
貴族としては私闘にはしたくない。主人である貴族に頼むしか方法が無い。そこに捕虜にした人物が現れた。それがアル達であった。
アルたちの共に続々人が集まってくる。2万人以上の捕虜交渉だ、並の人数ではない。一家に1人ではなく数人で来ている者も多い。アルたちはこの事を予想していたのか日にちを分けて呼んでいたようだ。
第一陣とのに話し合いが始まった。第一陣の者達は比較的裕福な者が多い。
話しはスムーズに進み大方決まっていく。
問題は第2陣以降の者達だ。
この者達は、貴族籍を持つ者は多いが、籍を持っているだけであり裕福ではない者だ。
中には平民よりも貧しい生活をしている者もいる。この事実は捕虜たちからの聞き取りで判明している。
アルはその事実を踏まえて交渉を成立させるつもりでいる。では如何するのか、簡単だ。金を稼いで支払う事が出来るようにする。
そこで、今回の伝統しかない貴族、オワーリー伯爵領が出てくる。この伯爵領を利用して金を稼がせる。
アルはこの交渉の為にロング帝国から監視役としてきている。ロング帝国宰相補佐であるイカロス・トレイシー伯爵を通して帝国の意見を聞いた。
トレイシー伯爵は帝国の対面・面目が保てるのであれば問題ないとの事である。
現在オワーリー領を占領しているのはギルバート家だ。この領地を捕虜となっているロング帝国貴族に売る。その金はアル金行がだす。そしてこの領地から齎される富で捕虜を買い取る事を提案する。ロング帝国は承諾した。
領地もないロング帝国貴族は、この提案に飛びついた。ロング帝国外ではあるが領地持ちとなれるだけではなく。生活も成り立つようになる。飛びつかない方がおかしいだろう。
アルは伯爵領を細かく割振る事はしない。細かく割振れば問題も多くなり管理が出来なくなる。そこで一つの領地を共同経営をさせる。支払いが終われば各自で割り振る事も同時に提案をしている。これは帝国貴族達を納得させるための餌だ。後に細かくされた領地は疲弊していく場所が出る。
この貴族達は膨大な借金を追うがその事に気付いていない。だが領地が手に入り生活が保障される。
アルの提案は、真面目にやれば問題のはならない。返済計画も無理のない範囲となっている。きちんとした生活をしていれば全く問題にならない。
オワーリー領を貴族達に売却、資金はアル金行からの融資とする。その後の共同経営において返済完了まではアル金行の指示指導の下に行う。
捕虜の解放の為に毎年の利益では何年先に成るか分からないために経営権を担保とした融資で一括にて捕虜を戻す事になった。
ロング帝国は、内容は別として対面と面目は保つ為に領地替えと提案する。リーフ王国内のオワーリー領を別の帝国領地と交換する。オワーリー領を自国の物として対応したいのだ。そうすれば領地が他の国の物にならず、帝国貴族の内での所有者の変更だけだ。捕虜にしても普通に金を支払っただけである。ロング帝国としては問題なしとなる。アルたちも了解する。
こうして第2陣の者達も交渉が無事終わった。
そして一番人数の多い第3陣だ。これは又二つに別けた数が多すぎるためだ。3陣4陣となる。
この3陣と4陣の者達は捕虜となった平民だ。普通捕虜となった平民は戦争奴隷となり、多くの者は使い潰され死んでいく。平民であるが為に捕虜の買取など夢の又夢物語である。
交渉に訪れている者達も話を聞くだけと思っている者がほとんどだ、戦争奴隷となりいつ解放されるのかを確認に訪れている者が多い。
この者達へのアルの提案は、捕虜の買取であるが資金が無い事ははっきりしている。金のない者から金をとる。金を作らせるしかないのだ。ではどうやって金を作らせるのか、
オワーリー領の占領される事実を知ったキュンメル子爵とドロイゼン子爵の両領主だ。他にも領地持ちが数名いる。
アルはこの二人に占領と金のどちらかを選べと脅した。
両者は金を支払う事を選んだが金がある訳ない。そんな金があるのならばこんな事には成らなかった。
アルは此処でもアル金行から資金の融資を行なう。人数が多くとも平民であるために価格は安い。それでも莫大な資金だ一子爵家で出せる金ではない。
勿論、資金の担保は領地と領地の経営権だ。経営権が無いと返済が間違いなく滞る。
この子爵領などに住んでいる者も多くいる。住んでいない者達は移住させる。そしてこの領地で働かせ税を数年間高くするとを決める。その高くなった税が返済という事になると伝える。通常より2割高だ。普通では生活が出来ない税の高さである。それでも平民たちからしてみれば買い戻せる事の方が嬉しいのだろう。ほとんどの者達が承諾した。承諾した者達には仕事を世話をする。その仕事の多くは農家であるが、農業の出来ない者達は、酒造りの工場勤務となった。これであれば夫婦二人で働ける。今までの習慣では夫が一人で働き家族を養う事だ普通であっただが、それでは高くなった税で暮らしが成り立たない。そこで夫婦二人で働く。収入が2倍になれば多少高くなった税でも暮らすことが出来る。今以上の生活が出来るようになっている。
この試みは、後にロング帝国やリーフ王国に多大な影響を与えていく。女も働く事で国力が倍になる事実を知ったのだ国を経営する王や王族たちは女が働く事を推奨していく事になっていった。
農民の者達にもテコ入れをする。造った農作物は、全て定額で買い取る事を約束する。酒の原料とする為に多少高めでも問題なく買う事が出来る。農家の暇な時期は工場でも働けるように手配もした。これで多少は余裕の出る生活が出来る。
農家や工場を造りそこで働かせる。帝国からしてみれば面目も保たれ、国としても国力が上るとても良い話であった。一部貴族は、そうでないが全体変えあみれば民も救われ、仕事もでき、今より余裕のある生活が出来るようになる。全てが良い方に向いている。
他の領地持ちにも同じ提案を行っていく。違うのはアル金行の融資ではなく、ギルベルト金行に変わった事だけであった。