10話 新村の開拓作業
今、ギルバート領が熱い
領民全体で、新村の開拓を行なっているからだ。
盆地の中の平地開拓と言っても木々がないわけではない。それはなりに大きな木あり凹凸もかなりある。
それを総人口600の内、下は10歳から上は50歳の老若男女300人が木を切り整地している。普通の開拓ではなくギルバート流の開拓である。
ある程度の身体能力の高い者達で木々の伐採等を行い。器用な者達は小屋を建てていく。小屋といってもかなり立派な物だ。真四角で同じ建物だが建てる分には、かなりの効率化が図れるようだ。
何故、300人の者たちで新村建設となったのか。それはソルト家からの使者から始まった。
ソルト家は塩湖の町を中心に交易地である。交易地では色々な者達がいる。貴族、平民、奴隷と難民もいる。その難民たちがこのギルバート領にやってくるのである。その数なんと300人である。
ギルバート領は小作人たちを集めて開拓に乗り出した。小作人たちにタダで仕事を遣らせるわけもなく自作農家に引き上げるためである。
80年の歴史を持つギルバート領の殆どが小作人であった。だがそれは仕方のない事でもあった。
80年前は自作農では食べる事も出来なかったのである。領主に守られる小作人で無ければ生きていけなかったのである。
では今はどうなのか、開拓も進みある程度の農地を持たせることができ、大麦などはエールに加工する事も出きるようになった。今の本村400人と新村200人を自作農家(一部は兵士)に引き上げる事になったのだ。
勿論ただではない。家と土地(田畑)を自作農家に売却をする、代金は自作農家は分割で支払っていく。
開拓に参加すればより安く買う事が出来るために参加者が多くなっている。
万一自作農を失敗してもこのギルバート領内であれば又小作人として生活も出来るために、皆が一丸となっているのである。
祖父「アルのおかげだな。魔法があるから開拓も楽にできる。」
父「それもありますが、農作物の出来もかなり違いが出ています。」
祖父「そうよな麦も米も一回り大きくなっている。今までは品質が良く他より少し高く売れただけだったが、これからは別種と思われるかもしれんな。」
そうギルバート領の農作物は他領に比べ品質が良く高級物として高値で取引されていた。ところがアルの魔法開発に刺激を受けた者達が面白がって農作物に魔力を込めた水や肥料を使ったのだ。その変化は劇的であった。一回りも大きく育ってしまった。それに育ちも早くなっている。このことで二耕作が可能となり今回の緊急会議によって自作農家への引き上げが決定したのである。
それで味が落ちるという事もなく、逆においしくなっている。
祖父「魔力とは凄いものじゃな。」
父「元々この土地自体も多くの魔力を含んでいるようです。母上がおっしゃっていました。」
祖父「ホンに不思議な場所じゃな。」
自作農家になるために、かなりの者達が過重労働をしている。それでも皆笑顔である。一家で約一haの農地が買える。場所によっては作るものは決まっているが農家の収入が安定するように割り振りを考えている。二耕作が出来れば大きな収入となり、税金と分割払いをしても他領の自作農家よりかなりの高収入となるのだ。1回の耕作が丸々利益となる。50%の税を支払っても余裕の生活が出来るのである。ただ娯楽の少ないギルバート領では使う場所が無いのであるが。
そこで新たな酒場や食堂、商店も本村に作る計画も進んでいる。
ある家族
夫「身体強化が無かったら倒れているな。」
妻「ホントよねー、疲れ知らずで働けるわよ、それにうちは2家族に別れるのよ隣同士で2haの農地になるのよ。借金も2倍よ。働かなくちゃね。ルンルン。」
この家族は、長男は成人しているが、次男はまだ未成年である。だがこのチャンスをモノにしようと長男には独立をさせ次男に後を継がせる計画にシフトしたのである。
このような家族は多く、3つに分かれる家族もあるほどだ。
自分たちの財産となる農地は、他の領地では逆立ちしても買う事など出来ないのである。
小作人から自作農家に変わるという事はそれほどに大変なことなである。
ギルバートの館内
祖母「あなた、商店の事ですけど、洋裁店も出来るのよね。」
祖父「ああできる予定じゃな。なんでも女の子たちが共同で店を開くそうだな。」
祖母「フフフ、楽しみね。」
母「そうですわね。お母様」
祖母「メイヤーも出来たら一緒に行ってみましょう。」
母「そうですわね。」
父「店と言えば、酒場も2件できる予定ですね。」
祖父「1件は潰れるな。酒を売るより自分がみんな飲んでしまうだろう。」
父「・・・・・ですかね。」
母「・・・・」
祖母「・・・・辞めさせないのですか。」
祖父「聞かんのじゃよ。」
だがこの飲兵衛の酒場は、後に大当たりする。酒好きが功を奏し自作のエール(ホップを入れてビール)が村民に大うけした。領主もうまいビールを売るために工場を建て交易品とするまでになった。
アル「おじい様、父上ー、おばあ様、母上ーーーーっ、街道から人が一杯来ています。」
このアルの言葉に祖父、祖母、父、は嫌な予感がした。母だけは何も感じない様であった。
祖父「アルよ。ソルト家に連れられてきておるのか。」
アル「そんな風には見えませんでした。みんなボロボロの服を着た者達です。みんなフラフラしていますかなり弱っているようです。」
父「父上行きましょう。非常に嫌な予感がします。」
祖父「ワシも嫌な予感がしている。急ぐぞ。」
ジークとレビンは急ぎ馬に乗り村の入り口である街道の門に急いだのだ。
ジークとレビンは街道の門着くと門の上に上るそしてその光景を見て愕然とする。
祖父「何だこれは。」
父「一体何百人いるんだ。」
祖父「街道門兵士長はいるかー。」
兵士長「はっ、ここおります。」
兵士長は祖父の前に出てくる。
祖父「兵士長この難民たちは何だ。」
兵士長「はっ、隣の領民です。ギルバート領の隣地であるラーク領が戦に負けてその領民たちがこちらに流れてきています。」
祖父「ラーク領とクレイン領が争ったのか。」
兵士長「はっ、そのようです。クレイン領が勝ち、ラークのいらない領民を追い出したようです。その事にこのギルバート領の話をしたようなのです。」
ジークとレビンは顔を歪ませた。