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転生少女は今日もご機嫌♪  作者: しんた☆
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第31話

「あーら、また違う男を連れてきたの?それで私に勝ったつもり?なによ。ぼんやりした振りをして、ふたまたかけていたってことでしょ!よくものこのことここまで来たわね!せっかくローランドに介抱してもらって、少しは気分がマシになったのに、ホント、最悪だわ。」


 いきなり罵声を浴びせられ、クリスは驚いて声が出ない。


「おい、なんてこと言うんだ。この子は…」

「クリス!店長も来てくださったんですね。ありがとうございます。すぐに着替えてくるから、待ってて」


 店長が庇う様に言いかけると、ローランドがやってきた。そして、クリスの頭にぽんっと手を置くと、すぐに更衣室に向かって行った。楽屋の中は、本番が終わってほっとしている生徒たちが、それぞれ仲間と健闘を称え合っていた。


「早くどこかに行きなさいよ!私たちはこれから打ち上げがあるんだから!」


 なおも突っかかるセレスティアだったが、横からエレナが声を掛けてきた。


「何を言ってるの。本番直前で倒れたのはあなたでしょ!打ち上げなんて、する気分じゃないわ。」

「まったくだね。台本を勝手に書き換えたり、配役でごねたり、もういい加減にしてくれよ。エレナ、準備が出来たら、一緒に出店に行こう。」

「ええ、もう出かけられるわよ」

「店長さん、見に来てくれたんですね!今から一緒に回りませんか?ローランドももう出てくるでしょうし。」

「そうだね。お邪魔虫は消えるよ。じゃあ、クリス。またね。」


 アーノルドたちが出て行っても、セレスティアはまだ文句が言い足りない様子だったが、すぐにローランドがやってきて、クリスを連れ出した。


「何よ、あんな子!覚えてなさい!」


 セレスティアは静かに怒りをたぎらせていた。


 一方、やっと一緒に回れると思っていたクリスだったが、ローランドの様子がおかしいことに気が付いた。


「先輩? 大丈夫ですか?」

「あ、ああ。劇の舞台装置に魔力を使いすぎたみたいだ。少しだけベンチで休んでいいか?」


 ベンチにどかっと腰を下ろして、はぁっと深いため息をつくローランドは、今まで見たこともないほどに疲れ果てていた。実際、今回の舞台の装置を動かしていたのはほとんどローランドだった。魔力の多いエレナと組むはずが、勝手にセレスティアに配役を変えられ、しかも装置への魔力提供を拒否されて、ふらふらの状態だったのだ。


「先輩、今日はもう帰りましょう。学校は自由解散なんだし、今は休んだ方がよさそうですよ。」

「あ、いや。そういう訳には…」


 話している傍をアーノルドとエレナが通りかかった。


「ローランド、大丈夫か?ああ、やっぱり魔力切れだな。」

「もう、ほんとに腹立たしいわ。ローランドばかりに頼って、あの人自分の魔力はほとんど使わなかったんじゃない?」

「ああ、もういいんだ。終わったことだ。」


 頭の中がつーんとなって、クリスは思わずつぶやいていた。


「先輩、もう帰ってください。そんな状態じゃ、楽しめないですよ。」

「え?」

「そうだぞ。ちゃんと体を休めておけよ。明日はクラスで反省会だな。」


 ぼやくアーノルドの横で、エレナが驚いた顔でクリスを見ていた。こんな突き放した言い方をするクリスは初めてだったのだ。しかし、その姿を見ると、手を握り締めて口元をぎゅっと閉じて、やせ我慢が隠しきれていない。


「クリスの事なら大丈夫よ。私たちと一緒に回りましょ。ローランドは早く帰って、明日はちゃんと学校に来てよ」

「はぁ…すまない。」


 少しふらつきながら帰っていく後ろ姿を、クリスはじっと見送るしかなかった。



 翌日、カフェ・ブランカにセレスティアがやってきた。窓辺の席に座って、何やらレポートを仕上げているようだった。前日の事があったので、店長もなにげなく警戒していたが、何かが起こる事はなかった。

 マリオが注文を聞きに行くと、セレスティアはすーっと目を細めて魅了の術を仕掛ける。


「いらっしゃいませ。」

「ねえ、今日はパフェが食べたいんだけど、私のために特別なパフェって作れますぅ?」

「店長!なんかややこしい客が来たー!」

「こら!お客様にそんなこと言うもんじゃない!」


 まったく!と呆れた様子で客の前に出てきた店長は、その人物の顔を見てげんなりした。


「あら、またお会いしましたわね。この店の方だったのね。ふふ」

「はぁ。メニュー以外の物は作れませんので、ご了承ください。」


 店長はそれだけ言うと、さっさと厨房に帰っていく。周りにいた客たちが、こそこそと話をし始めて、セレスティアはうろたえた。


『おかしいわ。どうして魅了魔法が効かないの?』


「あのぉ、ご注文はお決まりですか?」


 見上げると、そこにはクリスが立っていた。


「なによ!どうしてあんたがそこにいるの?!」

「えっと、バイトです」

「ブリッ子な服なんて、恥ずかしくないの?」

「ああ、お店の制服ですから」

「まったく!!冗談じゃないわ。この店おかしいんじゃないの?もういいわ!」


 セレスティアは耐えられなくなって店を飛び出して行った。


『おかしい!おかしい!おかしい! 私の魅了魔法が効かないなんて!魔力の多いローランドに効かなかったのは分かる。だけど、あんな普通の店員にも効かないなんて!』


 多くの事を、自慢の魅了魔法で解決してきたセレスティアには、耐えがたい屈辱だった。


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