桜の木の上で
桜の木の下に埋めた命であったものは
桜の木の上で咲いた花であったものに
変わるようでいて
別ものである
繋がりなど無い
養分に変わり吸い上げたところで
別々の形であり
別々の意志がある
桜の木の下に埋めた箱の中には
桜の木の上で見れた写真を入れた
永久に掘り出すことは無い
静かな時間は
誰かに見つかろうと
塵にしかならず
逸脱した手招きとして
変わらず埋められるだろう
その為の希望である
桜の木の下に埋めた価値の無い世界は
桜の木の上で聞いた声すら届かない
地中深くに沈んでいく
白色だけが取り柄の形は
衰退する可能性を高めて
誰の為にもならない歌になる
口にすれば
爛れていく悲哀の歌は
奏でる時間すら殺すだろう
桜の木の下に埋めた心情の呼吸は
桜の木の上で開いた一瞬の出来事だ
あからさまな型の外れに
異様さだけを纏うならば
崩れ込んだ家も
冬の遊び方も
粉々にしていくだろうか
もう一度、丸めて
球になったまま投げ捨てられるのか
桜の木の下に埋めた時間の隙間に
桜の木の上で飛んだ意味合いを付け足した
最初からこうしていれば
沈むことも浮くことも無い
簡単な考え方は嫌いとするしかないのだ
他人の話で鼻を出し
爪先立ちになりながら滑り落ちるのである
桜の木の下に埋めた深く考える人は
桜の木の上で蒔いた種と同じである
必要性の神様であり
答えとして正しいものだが
誰も見ないフリをして
行動に当てはめようとはしない
不正解でありツッパっているだけだ
嫌いなくせに不思議な話である
桜の木の下に埋めた透明な液体は
桜の木の上に映ったあの人の雨だろう
削り取った銅像も
侵食した岩山も
くだらなさを含んでいる
悲しいだけの存在は
繰り返し作られて
終わりにする為に無視という行動を使うのだ
桜の木の下に埋めた人の型は
桜の木の上で吹いた風の姿をしている
明るい世界の中で
明るいままに照らすならば
その活力こそが肉であり骨であろう
忘れた人間から
腐乱していくのは
生き物であることを知らないからである