第五話 進んでゆくとき
投稿遅くなってすみません!!
こんな作者でよければ、これからもお付き合いねがいます^^
「へえ・・・君も」
「はい。でもこの学校に、これほどまで契約者がいたなんて・・・。びっくりですよ」
真鶴は桃真の隣に腰かける。
「ところで、先輩方も琶月さん絡みですか?」
「ああ。そうだ」
「・・・・」
琶月はどうやら、知らぬ間に話の中心にいるらしい。
桃真が琶月を遠くから見つめていると、たくさんの視線を感じた。
「なんすか?」
「いや、まず。知っていることをききてぇなって思って」
みな真剣な瞳で桃真を見ていた。
「『だから行くなっていっただろ』ってことは、こうなることがわかってたってことなんだよね?」
「そうです。俺には少し先の未来を見る、つまり、予知能力があります」
桃真は話し始めた。
自分にはなぜか予知能力があり、物心ついた頃には使っていた。
でも、何が起こるのかを他人に言ったり知られたりすると、その未来は確定してしまう。
言わなかったとしても、未来が変わるのはごくまれだが。
でも、ある日から琶月にストップをかけられていて、知っているのは琶月と俊祐だけだった。
「こんなもんです」
桃真が話し終えると、部屋はしんと静まり返った。
そして、陸原先輩の声がその沈黙のなかに響く。
「・・・お前は契約者だろう。知らぬ間にそうなっていることもある」
「・・・契約・・・・」
いきなり契約者なんていわれてもぱっとこない。
納得できないという感情が顔にでていたのか、真鶴があることを提案する。
「信じられないなら、信じてもらうまでです。きっと桃真先輩も、戦いに巻き込まれるでしょう。僕の力を見せてあげます」
真鶴は桃真と目を合わせる。
戦いに巻き込まれる?力?
一体何を言って・・・
「“一体何を言っているんだ”・・・ですよね?」
「!!??」
心を読まれたような感じだ。
真鶴は「僕にはわかります」と言ってにこっと笑った。
「なんでわかった・・・?」
「そういう能力ですから・・・」
どこか悲しそうに言って、真鶴は息をすいこんだ。
「僕は、“憑神”という名の妖と契約しました。目を合わせると、無意識のうちにその人の感情がわかってしまいます。それはアノ頃の僕が心から望んだ力だったけど・・・今の僕は誰とも目をあわせたくない」
そう言って真鶴は顔を伏せた。
そして、波沢先輩が手をひょいっとあげる。
「俺は、風を操る“天狗”と契約したなぁ。そのまんま風を操る程度の能力だけど、こりゃ俺の罪だ。文句言ってらんねえよ」
波沢先輩はへへへ、と小さく笑う。
そして陸原先輩も言う。
「“鬼”と契約した俺は、尋常ではない力を手に入れた」
それ以上はなにも言わなかった。
残るは・・・
「僕だね」
凪森先輩が薄く笑う。
「なんか幼稚園の自己紹介みたいで気が乗らないよね、こういうの。ていうか、どうしても言わなきゃだめ?」
きいても誰も答えずに、じっと凪森先輩を見る。
すると、凪森先輩は苦笑いをして話してくれた。
「僕はね、“名もなき神”の力を持ってるよ。名がないっていうのが名前なんだ。変だよね」
何もないふうに笑いながら言った先輩だったが、次の瞬間。
「うわ!!」
俊祐の声が聞こえた。
あわてて振り返ると、俊祐が髪の毛を引っ張られていた。
・・・・誰に?何に?
俊祐の髪の毛を引っ張っているものは何も無い。
勝手に動いているのだ。
「ふふふ。お姉さんがいくら好きだっていっても、ずっと眺めているのは気持ち悪いよ」
凪森先輩がクスクス笑いながら言った。
・・・え?
やっているのは凪森先輩?
「なんか、こんな感じなんだよね。ん~。簡単に言えば、超能力かなあ?」
何かが切れたと思うと、俊祐は痛がるのをやめたかわりに、なみだ目になりながら混乱していた。
「わかってくれたかな?」
凪森先輩はにやりと笑った。
すると、陸原先輩が溜め息をつきながら言う。
「お前は馬鹿か」
「秋君もお馬鹿さんだよね♪」
すぐに、にこにこと凪森先輩が答える。
そして、俊祐を見た。
「君は、何があるの?この話しを聞いてるんだから、それなりの理由があるんだよね?」
「・・・・!!」
俊祐は体をこわばらせた。
・・・俊祐には、なんの力もないから。
凪森先輩は、どうしてそういうことに鋭いのだろうか。
すると、今までじっとしていた波沢先輩が俊祐のもとに歩いていった。
「俊祐、でいいんだよな?・・・お前も、琶月ちゃんの記憶がない間のことわかるんだろ?なら聞いててもいいんじゃん?」
「波沢先輩・・・!」
波沢先輩はニッと笑った。
きっと、先輩なりのフォローなのだろう。
でも、そんな気遣いを受けて俊祐の心はさらに沈んだ。
「俺は・・・・入院していて、意識が無かったので・・・・わかりません」
そんな、暗い空気になってしまった中。
「にしても、琶月ちゃんてホントかわいいよな」
「「!!??」」
波沢先輩がいきなりそんなことを言った。
もちろん、桃真と俊祐はわずかに反応する。
「いきなりなんすか、先輩」
「姉さんがかわいいのは当ったり前です」
波沢先輩は「そかそか」と言って笑う。
・・・去り際に耳元で。
「その話し、今度詳しく聞くからな」
そういわれたが。
一瞬この部屋の緊張が解けた気がした。
波沢先輩は、とてもいい人だ。
だが、そんな空気もすぐに終わってしまった。
「では、また話しを戻してもいいか?」
陸原先輩が有無を言わさないような声で言う。
・・・まだ続くのか。
そんな感情を押し殺して、桃真はうなずく。
「そういえば、まだ話していなかったよな。俺らの共通点」
「ああ」
「共通点・・・?」
なるほど。
その『共通点』で、この人たちは無意識に集まったのか。
「俺たちが契約した妖はみな、“我愛しの魔女を守りたまえ”という願いを俺たちに与えた。これは、魔女と契約した者を守るということ。つまり、琶月を守れということだ」
魔女・・・?
「魔女って一体な」
「ま、そういうことだからよろしく」
聞こうとしたが、凪森先輩は「今日はこれでおわり」とでも言うように、桃真の発言をさえぎった。
「桃真ぁ、俊祐!これから仲良くしようぜ!!」
「よろしくお願いします」
そのあと、なぜかみなあいさつをした。
これには俊祐も意味がわからなかったようで、琶月の傍を離れて桃真の隣へ行き、俊祐も疑問符を浮かべている。
「・・・?」
なんだか、『これからずっと一緒にいるから』といっているような・・・?
「妖さんが守れって言ってるんだから、琶月ちゃんはなんらかの理由で、なにかに襲われるってことでしょ?だから、これからは僕ら、出来る限りそばにいるから」
「そゆこと」
ぽかん・・・
「「ええぇぇええええ!!!??」」
さすがに、それはちょっと!!
二人は同時に声を上げた。
すると・・・
「・・・・・ん?」
「姉さんっ!!!」
琶月が目を覚ました。
俊祐は風のように琶月のもとへ駆け寄る。
「姉さん!!!大丈夫???」
「は、はい・・・大丈夫、です」
大丈夫といっておきながらも、体がとてもだるそうだった。
桃真は琶月のもとに行き、しゃがんで背中を向ける。
「ほら、おぶってやるから。帰るぞ」
「桃真君・・・?」
軽く寝ぼけているようだ。
「そうだ。桃真だ」といいながら、自分の背中をぽんぽんとたたく。
「う~・・・?」
すると琶月は、ふらふらと桃真の背中に身を預けた。
桃真は一瞬、背中にあたるやわらかなふたつの感触と、手に触れたふとももの体温にドキっとしてしまったが、そういう気持ちはだめだ!!!と自分に言い聞かせて、冷静を装う。
そんな三人を見ている人たちは。
「な~んか、二人の世界だよね」
「・・・・・」
「仲がいいんですね」
「む~・・・・・・」
取り残された気分で見ていた。
「じゃあ、俺ら帰りますんで」
「さようなら~」
そそくさと帰ろうとする三人を、真鶴が止めた。
「まってください!僕らもご一緒させてください!」
外はもう橙色。
7つの影がならんでいた。
――そんな様子を、遠くから眺める影・・・・また一つ。
・・・・まだ、物語は始まったばかり。
それでも、歯車は回っているのだ。
彼女らが笑っていられるのは、あとどれくらい?
はたまた、彼女らが本当に笑えるまで、あとどれくらい?
どうでしたか~^^
キャラ紹介をします!
火谷真鶴
礼儀正しい。真剣なときは真剣だが、普段はおどおどしているかわいい少年。
波沢泰人
ムードメーカ的な存在で、運動神経抜群だが残念な学力。
凪森遊
いたずら好き。なんでもはっきり言うタイプ。
陸原秋
生徒会長。自分の努力は人に見せないタイプ。
です!