第二十五話 謎多き少女
「はーづきーーー!!!!」
屋上から教室にかえると、その途端に磨綺が飛んできた。
琶月は突然のことで反応できずに突っ立っていると、桃真が琶月を引っ張る。
すると、まるでスローモーションのように磨綺は廊下へふっとんでいったのだった。
「鷹倉、お前はいったいなにがしたいんだ?」
「うー、いたた・・・。なにがしたいもなにも、琶月。よけるなんてひどいじゃないのー!あたしの愛がうけとれないっていうの!?」
「あうー・・・ごめんなさい」
「はぁ、お前も謝る必要ねぇだろ?勝手にふっとんでったんだんし、第一琶月をひっぱったのは俺だ」
桃真はなにかと磨綺に冷たい。
彼女を見る目も、なんだか信用できない・疑っているというふうに取れるほどだ。
琶月は不安な気持ちなまま自分の席についた。
☆★☆
時はもう放課後。
窓からさしこむ橙の光に身を染めながら、琶月と桃真と秋はお茶をすすっていた。
「そういえば桃真君。気になっていたのですが、磨綺ちゃんのこと嫌いなんですか?」
「あ?あぁ、アイツか。うー・・・ん、なんかな、なんでだろうな。うまく説明できないんだけどよ・・・」
「嫌いというわけではないんですね?」
「まぁ、そうなんだろうけど。なんか、俺らとは違う感じがするっつーかなんつーか。なにもかも、この世界のことも全部知ってる感じ?って言やいいのか」
桃真が言葉に詰まっていると、珍しく仕事が早く終わっていた秋が会話にまじってきた。
「複雑だな。だが、あの鷹倉・・・といったか?俺から見ても、なぜか孤独そうに見える」
「孤独、ですか?つねにまわりに誰かいると思うんですけど・・・」
「そういう孤独じゃないんだよなぁ。なんか、うーん」
そのとき、生徒会室の戸がガラガラと音をたてて開いた。
入ってきたのは、真鶴だった。
「今朝ぶりだな」
「こんにちわです」
「おう、真鶴。今日ははやかったな」
「はい。今日の委員会はとても早く終わったんです」
そういって真鶴はソファーにこしかけた。
琶月はすかさずお茶をいれて、真鶴にわたす。
真鶴は「ありがとうございます」といって、湯のみに手をかけた。
「ところで先輩方は、さっきなんのはなしをしてたんですか?」
「えっとですね、私のお友達の話しをしてましたよ~」
「鷹倉磨綺ってやつだ。一応あいつ顔広いからな、真鶴でも名前くらいは知ってるだろ?」
桃真がきくと、真鶴は一瞬だけはっとした表情になり、こくんとうなずいた。
「一番最初に僕と桃真先輩と俊祐君が会ったとき、覚えてますか?琶月先輩を尾行してるときのことですけんむっ」
「ままま真鶴!?」
真鶴がしゃべっているときに、桃真がいきなり真鶴の口をふさいだ。
・・・びこう?
琶月はその言葉にまゆをよせる。
「尾行、ですか・・・?」
「な、なんのことだよ」
「いえ・・・。んー・・・?」
桃真がなんのことだといっているので、琶月はあまり気にしないことにした。
琶月は真鶴に話しのつづきをするよううながす。
「はい。それで、なぜ僕があの廊下にきたのか、どうしてあんなにタイミングよくあなたがたに会えたのか。不思議におもったことはありませんか?」
真鶴は、妙に深刻そうに問う。
「ただの偶然だろ」
「特になにも思いませんでしたよ?」
「・・・・・・」
桃真と琶月は頭に疑問がうかんでいただけだったが、秋はもうわかったようだった。
そして真鶴は、耳をうたがう真実をつげた。
―――『生徒会室にむかうと、おもしろいものが見れるわ。そして、あなたの探し物が見つかるはずよ』
「僕をあの廊下へ導いたのは、鷹倉先輩です」




