第二十四話 秋の頼み
「はーらへったあ~~」
そういって泰人先輩は、太陽に照らされ続け熱くなった屋上の床に腰を下ろした。
それに続いて琶月、桃真、俊祐、真鶴、秋先輩、遊先輩が入ってくる。
当然俊祐は琶月の隣に座った。
「にしても、あっついですね~。さすが夏の昼というところでしょうか」
琶月たちは、昼ごはんを食べに屋上へきていた。
「もう8月だからね。部室も熱気がすごいよ」
「あー。アレはサウナみたいっすよね。剣道って結構汗かくし」
「僕は夏休みが待ち遠しいです。桃真先輩は夏休み中にどこかいきますか?」
「真鶴、夏休みなんて宿題の地獄だぞ。俺はたぶん・・・海にでもいくか」
「海!?おい桃真!この泰人先輩もつれていけ!!!それとこのおかずもらった!!!」
購買のパン、家からもってきた弁当を食べながらいろいろ話しをしていると、妖のことなど忘れてしまう。
琶月はこの時間が好きだった。
そんなことをのほほんと考えていると、今まで黙っていた秋先輩が口を開いた。
「ところで、少し話したいことがあるんだが・・・」
すると、みんな話すのをやめて秋先輩を見た。
「お?秋が話したいこと??なんだ、言ってみ」
泰人先輩がおどけた顔できくと、秋先輩はめずらしく言いずらそうに言った。
「実は、再来週の学校祭のことなんだが」
「ふむふむ」
そういえば、朝のHRで磨綺ちゃんが言ってたなぁ。
学校祭。
翠藍高で一年に一度行われる、大きな行事のこと。
去年のことからこの祭りは、ほかの学校の生徒やこの学校の家族など、いろいろな人で溢れたので、今年もたくさんの人がくるだろう。
クラスの出し物も生徒の出し物も、凄いものばかりだった。
「学校祭には生徒の出し物があるだろう。それが、なんというか・・・少ないんだ。だから数合わせのために生徒会からも強制的になにか出し物をすることになったんだが」
「ふむふむ。んで?どうしたんだ?」
泰人先輩がマメにあいづちをうち、秋先輩もたんたんと話していたのだが、急に口を閉じてしまった。
そして、秋先輩らしくもなく、恥ずかしそうに言った。
「・・・協力してほしいのだが」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
「・・・・・・」
琶月は、なんだかおいしいものを見たような気がした。
「そういえば、生徒会のメンバーって秋先輩しか見たことなかったような・・・」
真鶴が首をかしげながら言うと、秋先輩がそれに答える。
「いや、一応いるんだ。副と書記がな。普段は別々に行動していてな・・・まぁ書記はいつも副にくっついてるが。生徒会室は俺しか使わない。書記は琶月、お前のクラスにいるはずだが」
琶月は話しを振られて、クラスの人の顔を思い浮かべていた。
そのなかで、一人だけ心当たりのある人物がいた。
「あ!もしかして、透君のことですか?」
「ああ、そうだ」
同じクラスの男子、風宮透。
なぜか恋愛相談をうけることがあり、結構仲がいいほうだ。
そういえば、彼の想い人は・・・氷雹先輩といっただろうか?
「副は、千茅氷雹。あいつも契約者だ」
「え!?」
琶月はつい驚きの声をあげてしまった。
透の好きな人だったとは・・・。
しかもこの学校には、こんなにも『普通』でない人がいるのか。
「それはまずおいておこう。そして、再来週に行われる学校祭の件なのだが・・・引き受けてくれるか?三人でどうこうできるものではなくてな」
屋上には少しの沈黙が訪れたが、みな即答した。
「もちろんです!」
「俺でよければやらせてもらいます」
「俺も参加します!」
「僕も力になりたいです」
「なぁにみずくせぇこといってんだよ秋ぃ!協力するにきまってんだろ?」
「仕方ないなぁ。秋君がどうしてもっていうなら、僕も協力してあげるよ」
答えはすべてYesだった。
「感謝する」
秋先輩は無表情で言ったが、とても優しい瞳をしていた。