第十四話 涙のあとの
また、泣いてしまった。
「泰人先輩・・・ありがとうございました」
ようやく落ち着いた声で、泰人先輩にお礼を言うことができた。
こんなに迷惑をかけてしまっているのに、先輩は「お礼言われるようなことしてないよ」といって笑いかけてくれる。
・・・そんなんだったら、また甘えてしまいます。
琶月はそう言おうとしてやめたのだった。
そして、いいタイミングで俊祐が入ってきた。
「姉さーん!」
「おかえりなさい」
俊祐はポフっと琶月に抱きつく。
でも、いつもより勢いがないような気がした。
「俊祐も、ホントに琶月ちゃん好きだよな」
泰人先輩は苦笑しながら言う。
「はい!当たりまえっすよ!!」
と俊祐。
当たり前なのかと疑問に思ったが、琶月は特に気にしない。
不意に、喉がカラカラなのに気付いた。
さっきたくさん泣いたからだろう。
冷たいものが飲みたくなった。
「すみませんが、私お水を飲んできます」
二人に軽く頭をさげて立ち上がった。
「おう」
「いってらっしゃい姉さん!」
また「はい」と小さく返事してから、琶月は生徒会室を出たのだった。
☆★☆
「にしても、なかなか遠いものですね」
琶月は、渡り廊下を歩いていた。
生徒会室は、職員室の近くにあるので水のみ場から遠い。
職員室や生徒会室には、水のかわりに温かい飲み物が用意されているため、トイレしかないのだった。
渡り廊下には、部活の生徒の声が響いている。
外の野球の声、体育館のバレーの声・・・。
なんでも聞こえるようだ。
人通りは少ないが。
音に耳をすましているうちに、琶月は水のみ場にたどりついた。
渡り廊下と同様、ここは人があまりこない。
おまけに音も聞こえない。
琶月が水を出す音、歩く音くらいしかなかった。
「ふぅ」
琶月は十分に喉を潤わせたので、またきた道を戻っていく。
相変わらず、聞こえるのは琶月の足音だけ。
・・・と思ったが。
コツ、コツ、コツ
違う足音も聞こえてきた。
琶月は一瞬おどろき立ち止まったが、別におどろくことではないことを思い出し、また歩き出そうとした。
だが、さきほど足音が聞こえたほうから見慣れた声が聞こえた。
「琶月!なんでこんなとこにいるんだ?」
琶月は無意識に声のしたほうを向いた。