第十二話 月が綺麗な夜
聞いたあとの反応はさまざまだった。
俊祐は相当ショックだったのか、目を見開いて固まっている。
真鶴は困ったように、小さく眉間にしわを寄せた。
それにくらべて陸原先輩は、特に驚いた様子もなくお茶をすすり、凪森先輩は、やれやれと大きく溜め息をついている。
「・・・・・・」
誰もしゃべろうとしない。
重い空気が漂い始めたとき、泰人先輩が言った。
「帰るか」
☆★☆
歩いているときも、会話は長くは続かなかった。
あっという間に空は藍色になり、月が顔を出す。
「・・・・・・」
そして、琶月の家が見えてきた。
先輩三人の家はもっと先にあるらしい。
桃真の家は隣だ。
だが真鶴は、今来た道をまた戻ろうとしている。
「僕の家は、反対側にある双葉神社の近くですから」
そういい残して、真鶴は行ってしまった。
そして、先輩方とももうお別れだ。
「もう琶月ちゃんの家か。じゃあな」
「はい。お気をつけて」
「また明日~」
「また明日です」
それぞれ告げると、軽い足取りで歩いていった。
どうも、これだけ空気が悪いと居心地が悪い。
琶月は、桃真に一言「おやすみ」と告げると、逃げるように家へ向かったのだった。
その晩。
窓から、月を見た。
それは、いやになるほど綺麗で。
無意識のうちに、頬を雫が伝っていた。
なぜ、こんなことに巻き込まれてしまったのか。
なぜ、命を狙われているのか。
すべて、まだ闇に包まれている。
怖い。
恐い。
暗い部屋のなか、ねむりについた。