結末、そして
目の前が開ける。さっきまでの薄暗さが嘘のように光溢れた。
立ち上がって砲弾の飛んできた方向を見る。
(生命反応二体 距離七百六十二)
赤い文字が視界の隅を走る。
僕は自分の手を見る。僕の手は銀色に光り輝いていた。
思わず足も見た。足も手と同じように月明かりに照らされて銀色に輝いていた。
僕は狼狽えた。何だこれは……まるでこれでは……
「ゼ、ゼロ……」
アーチャの声が聞こえる。
狼狽えて、両手をマジマジと見ていた僕はその姿勢のままで、声のする方に振り向いた。
アーチャが力無く横になったまま、消え入りそうなか細い声で僕を呼んでいた。
「ゼロ……ごめんなさい……」
アーチャは悲しそうな顔を僕に向けていた。
(生命反応ホボ無シ 残リ数分)
「アーチャ、これは一体。僕の手が銀色なんだ……」
アーチャに近寄りながら両腕を見せて、僕は問いかけていた。
「ゼロ、あなたは私達が作り出した最終兵器なの」
「そんな、まさか……」
「あなたの正式名は、シュタイン型零式。通称ゼロ」
(生命反応更ニ減衰)
「ゼロ、あなたは私達の希望。お願い……故郷を。ライマンを救っ……」
アーチャの瞳から光が消えた。虚ろな瞳はもう僕を見ていなかった。
(生命反応消滅)
「そんな、僕は……僕は……」
何度見ても僕の両腕と両足は、無機質で銀色に光っている。右手で左腕を触ってみるが、さっきまで確かにあった触感は無くなっていた。
「うわああああああああぁぁぁぁぁぁ」
僕はその場でひざまづき、大声で叫んだ。
その声は月明かりの照らす、砂漠で反響を繰り返しやがてかき消えていく。
(熱反応確認 距離七百六十二 回避不可能 最終兵器ヲ起動シマスカ? YES/NO )
僕の視界に再び赤い文字が光る。最終兵器?何だろう。使ってしまったら僕は一体どうなるのだろうか。
(距離三百七十九 限界点マデ残リ百七十九 YES/NO ? )
時間がない。判断しなきゃ。死にたくない。まてよ、僕は生きているのだろうか。手足のそれは既に人では無い。何だ、そうか……使ったところで何も変わらないじゃ無いか。いいさ使ってやる。
使ってやるとも!YESだ!!!
(意思ヲ確認。最終兵器ヲ起動シマス)
視界に赤く表示された途端に、お腹のあたりから熱を感じた。その熱は瞬時に大きくなり、やがて僕を包み込んだ。視界は真っ白に変わり、意識が遠のく。
ああ……何だか気持ち良さすら感じる。
次の瞬間、僕の意識は無くなった。
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( Program Alice start. )
突然僕の視界に文字が浮かんだ。
(各数値良好 記憶領域良好)
周りを見渡すと無機質な部屋であった。窓は無く、ドアや扉もない。椅子や机は何も無く、床は真っ白で壁は鏡のようになっていた。
(武器システムニ エラーヲ確認 ブレードノ使用ハ可能)
反射的に右手を上げた。何もない空間に銀色の刀が現れる。無意識の内に、僕の右手は動きその刀を掴んだ。大きさの割に驚くほどに軽く、異様なほどに手に馴染んだ。
(武器システム修復ヲ継続シマス 修復中ハ処理能力ガ二十パーセント低下)
僕はゆっくり立ち上がり、壁に映る自分の姿を見て驚いた。
「えっ……」
壁には銀色の刀を持ち、白いドレスを着た美しい女性の姿が写っていた。
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