表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
自作小説倶楽部 第24冊/2022年上半期(第139-144集)  作者: 自作小説倶楽部
第140集(2022年2月)/季節もの「ウィンター・スポーツ(冬五輪・スキー)」&フリー「心(以心伝心・裏切り)」
6/25

02 柳橋美湖 著  心 『北ノ町の物語 93』

【あらすじ】

 東京のOL鈴木クロエは、母を亡くして天涯孤独になろうとしていたのだが、実は祖父一郎がいた。手紙を書くと、祖父の顧問弁護士・瀬名が夜行列車で迎えにきた。そうして北ノ町に住むファミリーとの交流が始まった。お爺様の住む北ノ町は不思議な世界で、さまざまなイベントがある。

 ……最初、お爺様は怖く思えたのだけれども、実は孫娘デレ。そして大人の魅力をもつ弁護士の瀬名、イケメンでピアノの上手なIT会社経営者の従兄・浩の二人から好意を寄せられる。さらには、魔界の貴紳・白鳥まで花婿に立候補してきた。

 季節は巡り、クロエは、お爺様の取引先である画廊のマダムに気に入られ、そこの秘書になった。その後、クロエは、マダムと、北ノ町へ行く夜行列車の中で、少女が死神に連れ去れて行くのを目撃。神隠しの少女と知る。そして、異世界行きの列車に乗って、少女救出作戦を始めた。

 異世界では、列車、鉄道連絡船、また列車と乗り継ぎ、ついに竜骨の町へとたどり着く。一行は、少女の正体が母・ミドリで、死神の正体が祖父一郎であることを知る。その世界は、ダイヤモンド形をした巨大な浮遊体トロイに制御されていた。そのトロイを制御するものこそ女神である。第一の女神は祖母である紅子、第二の女神は母ミドリ、そして第三の女神となるべくクロエが〝試練〟に受けて立ち、見事、免許皆伝。


挿絵(By みてみん)

挿図/Ⓒ奄美剣星「スポットライト」

     93 心(以心伝心)


「クロエさん、いえ、至高のお方、私たちの役目は終わりました」

「お名残り惜しい」

 私は、浮遊ダンジョン〝トロイ〟第十三階層で、初代至高神である紅子お婆様の最終試験を受け、どうにか合格し、役割を終えた審判三人娘の皆様は、身体がかすんで消えていきました。

 紅子お婆様は、巫女装束というよりは、黄金の冠を被った神主姿で、太刀をおび、紫の服を着ていました。お婆様が扇子を開くと瞬時に、私も同じ衣装に変わりました。

「では昇神の儀式を始めましょう」

 そこで、浮遊ダンジョン〝トロイ〟最上層第十三階層到達の試練途中で、脱落したパーティー・メンバー、あるいはディフェンサーが、お婆様によって、召喚されました。

 瀬名さん、浩さん、白鳥さん、マダム、父、母、お爺様の七人。

 それからお婆様は短く、術式詠唱をすると、足元に七星符が現れ、七人は線が曲折したところへ歩き出し、立ち止まりました。

「詠唱とは基本、舞い歌。クロエ、舞いのイメージを送ります。イメージに従い、舞いながら七人の間をすり抜けてお行きなさい」

 私は、うなずいて、金箔を貼った扇子を開き、〝禹歩〟と呼ばれる、蝶のようにふわふわとした物腰の舞いをしながら、七人の合間を抜けて行きます。

 途中、当該異世界女神の一柱である母・ミドリから盃を受け取り、最後に立っているお爺様に、盃を渡すことになっています。マダムは香炉や手にし、残った皆さんは鈴を鳴らしだしました。

 盃を受け取ったお爺様は、腕を傷つけ、血を満たします。死神であるお爺様は、死とともに再生を司りますので、私が通り抜けると、足元に撒きました。するとどうでしょう、蔓草が頭上に向かって伸びてゆき、赤い花々を咲かせてゆくではありませんか。

 私は、プログラムされたかのように、舞っています。けれどですね、実をいうと、頭の中は混沌を極め、ここに至るまでの出来事が、走馬灯になって現れては消えていたのですよ。

 東京のアパートで、母と暮らした日々。建設会社に事務員として就職、現世と異世界との狭間にあった北ノ町の皆さんとの出会い、お爺様とお婆様の共通の友人であるマダムが経営している烏画廊への再就職。それから異世界行きの軽便鉄道車両での旅。終点・竜骨ノ谷からの浮遊ダンジョン冒険の開始。

 そして無我に。

 第七ノ星であるところのお爺様を過ぎたところで、私は跪いて、扇子を閉じ、下に置いて一礼。儀式は終わりました。

 長の試練を受けていた浮遊ダンジョン〝トロイ〟は消滅しました。

 私が至高の女神位を継承したことが伝える役をおびた、白鳩数千羽が、四方の空に飛び発って行きました。

 そこで、瀬名さん、浩さん、そして白鳥さんの三人が私の前に立ちました。

「ところで、至高の女神クロエ。あなたの夫となる男は三人のうち誰なのです?」

 はい?


          ◇


 そういえばそうでした。恋の行方を忘れてました。

 それでは皆様、また次回にお会いしましょう。


 By クロエ

【主要登場人物】

●鈴木クロエ/東京暮らしのOL。ゼネコン会社事務員から画廊マダムの秘書に転職。母は故ミドリ、父は公安庁所属の寺崎明。女神として覚醒後は四大精霊精霊を使神とし、大陸に棲む炎竜ピイちゃんをペット化することに成功した。なお、母ミドリは異世界で若返り、神隠しの少女として転生し、死神お爺様と一緒に、クロエたちを異世界にいざなった。

●鈴木三郎/御爺様。富豪にして彫刻家。北ノ町の洋館で暮らしている。妻は故・紅子。異世界の勇者にして死神でもある。

●鈴木浩/クロエに好意を寄せるクロエの従兄。洋館近くに住み小さなIT企業を経営する。式神のような電脳執事メフィストを従えている。ピアノはプロ級。

●瀬名武史/クロエに好意を寄せる鈴木家顧問弁護士。守護天使・護法童子くんを従えている。

●烏八重/カラス画廊のマダム。お爺様の旧友で魔法少女OB。魔法を使う瞬間、老女から少女に若返る。

●白鳥玲央/美男の吸血鬼。クロエに求婚している。一つ目コウモリの使い魔ちゃんを従えている。第五階層で出会ったモンスター・ケルベロスを手名付け、ご婦人方を乗せるための「馬」にした。

●審判三人娘/金の鯉、銀の鯉、未必の鯉の三姉妹で、浮遊ダンジョンの各階層の審判員たち。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ