五話「デパート」
2022年1月13日 17:09 誤字一か所修正。 報告ありがとうございました。
休日の朝は遅い。
布団の中にくるまったまま、ベッドの近くに転がっているスマホだけ手に取ってそれで遊び始める。
そのまま動画とかネット小説とか漁りながら、のんびりと数時間過ごす。
だから布団から出るのが遅いのだ。
「あぁ……」
全然眠りから覚めていない体に鞭を打ち、トイレを済ませて朝飯として菓子パンを食らう。
それが終わったら今度はゲームを始める。
動画やネット小説にはちょっと飽きた。
「うぅ……む」
でもすぐゲームにも飽きてしまう。
我ながら気まぐれなものだ。
「──」
だけど、こうなると本格的にやることがない。
動画も一通り見て、ネット小説も殆ど更新を待つばかりで、手持ちのゲームはやり込み切ったものだらけなのだ。
「そうだ、デパートに行こう」
◆
早速原付を回して、十五分ぐらいかけてのんびりとデパートに向かう。
で、デパートに着いたらさっそくフードコートに向かう。
朝のんびりスマホとかで遊んでいたせいで、ちょうど昼飯の時間になっちゃったのだ。
「カツ丼うめうめ」
今回食べるのはカツ丼だ。
ここのフードコートにあるカツ丼屋さんはそれなりに有名らしく、だからか滅茶苦茶美味しい。
その辺の店よりもワンランク違う。
だからこのデパートに来るたびにここのカツ丼屋さんの世話になるのだ。
この卵に閉じられたカツのふんわりサクサク感と下のご飯にもかかっている特別なタレのおかげで美味い。
最高だ。
「今日はチョコアイスにしよっかな」
そんな最高なカツ丼を食べ終えたら、同じフードコート内にあるアイス屋さんでチョコアイスを購入。
そのまま迷わず食べて、チョコの冷たい甘味を楽しんでいく。
もう殆どこれらのためにデパート来てる感がある。
「む、ゲーセンか。……そういえば、ここ最近全然やってない音ゲーがあったなぁ」
満足して腹ごなしにデパート内の本屋に向かって歩いている途中。
本屋の横にゲームセンターがあるのが見えて、なんだか吸い込まれるようにそこへ入っていった。
「うわ、このぬいぐるみいいなぁ。抱き枕にしたい」
なんとなくゲームセンターの中を色々回って、ここ最近話題になっている漫画のグッズやらぬいぐるみやらが並ぶクレーンゲームを見やっていく。
特に見ていて気に入ったのが、抱きしめられそうな大きさのぬいぐるみ。
猫を模したような、それでいてもふもふな可愛い系のぬいぐるみだ。
「うお、ちょ──またとれないか。……あ、とった」
人生を通してクレーンゲームとはほぼ無縁だったため、そのぬいぐるみを入手するのに相応の時間と金がかかった。
だが金をかけつつ試行錯誤を重ねて、ついにとることができた。
やったぜ。
もふもふ。
「あら。もうこんな時間……明日も仕事だし、そろそろ帰るかぁ」
そんなところで、タイムリミット。
結局やろうと思ってたアーケードゲームはお預け。
ついでに寄ろうと思ってた本屋もまた今度だ。
もっふー。
「ま、いっか。今日は抱き枕があるし」
それでも満足感がある外出ではあった。
先ほど手に入れた猫の抱き枕を抱きしめながら、そう思った。
もふもふ。
ほくほく。
◆
「うお、なにあの女の子。めっちゃ可愛い」
「あんな大きい猫のぬいぐるみをちっちゃいおててで必死に抱きしめてるの、いいよね」
「親御さんはいないのかな? もしくは迷子か」
「いや多分高校生ぐらいだから、一人で来てるんだろうきっと」
「そうかぁ? 中学生ぐらいにしか見えないんだけど? 下手したら小学生レベル」
「それは言い過ぎだろ」