四話「ベビーカステラ」
ノイズ交じりのラジオを聞きながら、トラックを回す。
運転しながら遠くを見れば山の間を通るバイパスが続く景色が飛び出してきて、なんとなくのどかで気持ちいい。
今日は比較的時間に余裕がある。
だからドライブを楽しむことができる。
「残り件数わずか。なんなら時間指定もかなり余裕。そんでもって、今日は土曜日だ」
確認するように呟きながら右折する。
入ったのは、納品先の一つでもある道の駅だ。
いつものように駐車場の一角に停めて、伝票と荷物を持って裏口に入って、ささっと納品を済ませておく。
後は、当初の予定通りそのまま買い物しに行くだけだ。
「あったあった。ベビーカステラ」
買うものは決まっている。
土日だけ出てくる移動販売車のベビーカステラだ。
「買ーちゃった買っちゃった。美味しいベビカス買っちゃった」
速攻で購入し、その袋を抱えたままルンルン気分でトラックに戻る。
これから至福の時が始まると思うと、楽しみで楽しみでたまらないのだ。
「んっ──うんまぁい」
トラックの運転席に座り、スマホを弄りつつ一つ目のカステラをぱくり。
サクッとした食感と蜂蜜の甘みとが組み合わさった味が来て実に美味しい。
思わず満面の笑みを浮かべてしまう。
「幸せだなぁ」
自然豊かな山の景色を見たり、途中からスマホで好きな動画見たり。
そんなことしながら食べる甘いベビーカステラの味は、格別だ。
「やっぱこの味だよ。この味」
そうやって楽しい休憩時間を過ごした。
これで数日分の疲れは取れた。
多分。
きっと。
めいびー。
◆
「ねぇあのトラック見て。すっごい可愛い娘がいる」
「ほんとだ。あんな可愛いトラックドライバーいるんだ」
「うわ、あの娘の笑顔滅茶苦茶可愛い。こっちまで幸せになりそう」
「いい笑顔だなぁ。今週嫌なことばかり続いてたけど、今ので元気貰った気がする」
「だな。オレたちも頑張らないと」