二十話「二十六歳」
最終回です。
二十六歳。
人によってはおっさんと呼んでもおかしくない年齢だ。
いつの間にか、そうなってしまった。
「二十六歳か……」
今日は誕生日だ。
今日で二十六歳となる。
だからといって何かが変わるわけではない。
この日も普通に配送の仕事があって、ずっとちろちゃんの配信動画や例の人のカバー曲を聞きながらトラックを運転していた。
昼に飲んだエナジードリンクの反動もあって、もうくたくただ。
「────」
コンビニに入る。
一年前にも入ったあのコンビニである。
「さぁて何があるかなー?」
一年前と違って色々風変わりした。
麺類の種類も増えたし、おにぎりとかも新しいのがたくさんある。
焼き鯖系も複数ある。
当然、弁当の種類も盛りだくさんだ。
「なんとなくこれかな」
でも買うのは一年前と同じかき揚げ弁当。
一年前と変わらない味が、未だにやみつきなのだ。
「せっかくだ。今日はお酒もいっぱい飲もうっか」
◆
いつものように風呂を済ませ、いつものようにベランダの洗濯機を回し、洗濯が終わったら物干し竿に洗濯物を干す。
そうしてようやくお楽しみである。
気分が乗るまでの間、ついでに洗濯が終わるまでの三十分前後の間、にゃん助を膝に乗せて待っていた。
もふもふ。
「にゃん助~」
思えばぬいぐるみのにゃん助ともそこそこの付き合いになった。
あのデパートの時以来だ。
一年前はこいつなんていなかったのに、今はこいつを抱き枕にしないと寝れなくなっちまった。
もっふー。
「うまっうまっ! ……酒も胃に染みるぜ」
でもかき揚げ弁当と一緒に飲む日本酒の味は変わらない。
甘辛いタレが効いたかき揚げとご飯のおかげで、どんどん酒が進む。
「おらおらおらー! 撃つぜ撃つぜ撃つぜ弾幕だー!」
酒飲みながらやるTPSのドンパチゲームの感覚も一緒。
いつものようにアサルトライフルを構えて、ただひたすら敵の集団に弾をばらまきまくる。
どこまでも鳴りやまない銃声と、次々と銃弾で倒れていく敵の姿のおかげで、とても気持ちがいい。
そうして酒に酔うまま撃ちまくるとわりと当たらないもので、敵の何人かが近づいてくる。
そういう敵には、足元に手榴弾を転がすことで対応する。すると手榴弾が爆発して敵が吹っ飛び、その間に物陰に駆けこんでリロードも済ませる。
いつぞやのFPSで身に着けたテクニックだ。
すっごく楽しい。
もっふもふ。
「たのしーな。銃撃ちまくるの、すっげーたのしーなぁ。お前もそーおもうだろ、にゃん助ー」
あーだこーだ言っているが、この身は結局酒飲めてゲームができればそれでいい。
結局、去年と同様に今年も同じような日々を過ごすのだろう。
なんとなく、にゃん助を抱きしめながらそう確信したのだった。
もふもふ。
「あ、唐突にロボットゲームやりたくなってきた。……こういう時、気軽に起動できるのが携帯機ゲームの強みだよな」
◆
「先輩、噂のあの娘がまた来たっすよ」
「なにぃ?! でかした! 今すぐレジに……」
「いや、もう会計済ませているっすけど」
「なん……だと……?」
「そんなショック受けることっすか。どうせまた来るのに。……あの娘とはもう一年以上の付き合いっすよ?」
「そういう問題じゃない! いつあの娘の学生服姿が見れるかわからんのだ……たとえ一回の来店であろうと見逃すわけにはいかんのだ」
「いやだからあの娘、普通に成人済みだから。毎回のように酒買ってるから」
「うおー! 今度こそ見てやるぞー! ブレザーで前ボタンをきっちり留めてるとなお良いぞー!」
「先輩。本当にきもいっす」
今までありがとうございました。




