十八話「二日酔い」
「……頭がガンガンするぅ」
二日酔いした。
あたまがいたい。
◆
昨日はかなりきつい仕事だった。
だからがっつり飲もうと、夜遅くにスーパーへ赴いた。
そうしたら丁度餃子が鉄板で焼かれていて、その香ばしい香りに負けて衝動買いしてしまった。
当然日本酒も一緒だ。
そうして原付ぶんぶんして家に帰り、にゃん助もふもふしながら一人餃子パーティーを敢行した。
とてもおいしかった。
もふもふ。
だがその時、めっちゃお酒飲んだ。
餃子がおいしかったものだから、どんどんお酒が入った。
多分過去最高レベルに飲んだ。
おかげで案の定二日酔いだ。
ずつうがいたい。
「……ゲームする気になれねぇ」
とりあえず朝飯として菓子パン一個を腹に入れて、それ以降はたくさん水を飲んでいる。
だが一向に頭痛が治まる気配がない。
起きていても横になっていても頭が痛い。
「スマホで動画……いや絶対集中できねぇなこりゃ」
だから当然、いつものゲームやネットサーフィンも捗らない。
とにもかくにも頭痛が付いて回ってこの身を苛んでくるものだから、どうにもならない。
「…………散歩、しよっかな。気分転換に」
◆
我ながら珍しく、散歩することにした。
普段の外出なら原付を使うところだが、今日は徒歩で歩き回る。
とにもかくにも、ただ景色を見て回る。
そうすればこの頭痛がまぎれると思ったのだ。
「そういえば向こうにもコンビニあったっけ。そこが目的地かなー……」
とてとてとサンダルで歩いてコンビニへ向かい、そこでラムネと水を購入。
コンビニの裏で、なんとなく風に揺れる朝空を眺めながらそれらを消費。
コンビニのゴミ箱でそれらの残骸を処理してから、来た道を戻った。
なんかそれだけですごく新鮮に感じる。
如何に普段、仕事と買い物とゲーム以外何もしていないかがよくわかる。
「…………川、か」
来た道を戻っていると、川が見えた。
アパートのすぐそばに流れている川だ。
「ちょっと、眺めていこっか」
ガードレールの隙間を縫って道の外に出て、川のすぐそばまで行く。
ここ最近は晴れてばかりということもあり、川の流れは穏やかだ。
「……」
のどかな川のせせらぎに耳を傾けつつ、川の向こうに見える田んぼと巨大な鉄塔の景色を見やる。
とても高い。
鉄塔の頂点を見やれば、その鉄塔の後ろに青空が広がる。
上を見上げれば風に揺れる青空が広がって、どこまでも流れる千切れ雲がたゆたう。
(確かここは釣りスポットだ。よくここで釣りをやっている人を見かけたな。……なるほど、こりゃいい場所だ)
周りを見渡す。
朝早くということもあってか、人はいない。
だから、すごく静かだ。
「釣り人っていうのは、こういう時間が好きだから釣りをやってるんだろか」
聞こえるのは、田んぼの向こうの道を走る車やトラックの走行音のみ。
大きな道だから結構大量に車が通っていくが、それなりに遠いせいかうるさく感じない。
むしろ下手な無音よりも心地よい。
「いいもんだねぇ」
十分ほど、何もせずぼうっと景色を眺めた。
そうしたら、二日酔い由来の頭痛は治まっていた。
もしくはそう思い込んでいるだけかもしれないが、それでも気分は悪くなかった。
「うん、いい気分転換になった。帰ってゲームやるかぁ。確か、例の和風ファンタジーゲームに釣りあったよな。それやろ」
◆
「そういえば、今日結構涼しかったな。もう冬も近いってことか。…………やだなぁ、確実に俺の誕生日が近づいてやがる」




