十七話「トラックの中」
2022/11/18 19:40 誤字一か所修正しました。 ご指摘ありがとうございました。
「うっへぇ……びしょびしょだぁ」
トラックに乗り込むと同時にタオルで体を拭く。
酷い目にあった。
外はめっちゃ雨降っている。
そんな外を尻目に、トラックの中で寝転がりつつスマホを見やる。
指定の時間になれば晴れるそうだ。
とてもそうは思えないほどのザーザー降りだが。
「ともあれ、ここからずっと休憩か」
◆
今日はとんでもない時間指定の仕事がある。
かなり遅い時間だ。
一応ほかの配送もあったが、すぐに終わってしまった。
だから、待つ必要ができてしまった。
「えっと、どこにあったっけ……今日はたくさん持ってきたからなぁ。……あった!」
とはいえ、こうなることはわかっていたから、今日はいろんなものをトラックに持ち込んでおいた。
「さぁ、いっぱい飛んでいっぱい撃つぞー」
鞄から取り出したるは、ちょっと大きめな携帯ゲーム機。
ここ最近衝動買いした。
そのゲーム機で遊ぶのは、ちょっと前に話題になったロボットゲームだ。
傭兵としてロボットに乗ってお金を稼ぐ奴。
ゲーム機を買ったついでに衝動買いした。
そういうわけでロボットで空をいっぱい飛んで、敵の機体を銃でいっぱい撃って、いっぱいお金を稼ぐのだ。
「えいしょ!」
ポテチの袋を開ける。
助手席に寝転がってゲームしながら食べるポテチは至福の味だ。
そこにキンキンに冷えたエナジードリンクも合わされば、もう最高だ。
「撃つぜ撃つぜ撃つぜー!」
ゲーム内のミッションもやっていて楽しい。
敵機体がたくさん出てきて、この敵を撃てば撃つほど報酬が増えるタイプのミッションだ。
こういうシンプルでわかりやすいミッションは至極好みで、銃を撃つたびに能汁がドバドバ出てくるのだ。
「うわ、このミッションボスが出るやつだ……」
だが、問題が発生する。
次のミッションの敵が強すぎるのだ。
報酬の額は高いのだが、このままでは倒せない。
今のロボットの装備じゃ、割とすぐに撃ち落されてしまう。
「……仕方ない。強いパーツ集めるかぁ」
魔法の板スマホを開いて強いパーツが手に入るミッションを調べる。
「このフリーミッションをマラソンってわけね」
そうして同じミッションを何度もこなすマラソンが始まる。
このミッションをクリアすればすぐ手に入るというわけではなく、何回かやって手に入るかどうかの代物なのだ。
とりあえず手に入るまでやりまくるしかない。
◆
「……出てこねぇ」
それから数十分後。
パーツの内、三つは割とすぐ手に入った。
だが最後の四つ目がなかなか出てこない。
しばらく同じミッションの景色ばかりだから、なんとなく飽き始めてしまっている。
ポテチもエナドリも、もうほとんど残っていない。
「……スマホで音楽でも流すか」
スマホを起動する。
そのまま音楽が流せるアプリを開いて、そのままゲーム音楽を検索する。
「……ん? え?! これあのゲームのラスボスBGMじゃねぇか?! やっと出たのか」
すると、ずっとずっと探していたあの音楽の動画が偶然見つかった。
これは燃える。
「いいねぇ、こりゃマラソンが捗るわ」
そういうわけで、マラソンはまだ続く。
最終的に四つ目のパーツが出て、そのパーツを使ってボス敵を倒した頃には、外の雨は止んですっかり晴れていた。
きちんとパーツを集め終えて、強いボス敵も倒していっぱいお金を稼いだ後だから、時間指定の配送仕事も気持ちよくできた。
実に有意義で楽しい時間だった。
◆
「そういや、あと数か月で俺二十六歳か。嫌だなぁ、さらにおっさんになっちまう…………」
突然ですが二十話が最終回です。




