十三話「エナドリ」
「ありがとうございましたー失礼しまーす────やっと終わった、もうつかれたよー」
やっとこの日最後の納品が済んだ。
ここまでかなり長く仕事していた気がする。
ずっと愛想笑いしているか無表情でつーんとしているかだったせいだろうか。
ともあれ、後はトラックを運転して事務所に戻るのみ。
だけど今回のルートの都合上、かなり遠くにまでやってきてしまった。
ここから事務所までドライブするとなると、下手すると一時間はかかってしまう。
正直つらい。
今日は色々と疲れてしまったし、何か癒しが欲しいというものだ。
「……ちろちゃんの配信聞こうかな。あの子の声が一番癒される。これにエナドリを合わせたら、もう最高だな」
◆
「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛ ち゛ろ゛ち゛ゃ゛ん゛か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛あ゛ぁ゛!゛!゛!゛」
我ながら汚い。
それは十分わかっている。
でもそう叫んでしまう。
このバーチャルライバーの娘、すっごくかわいいんだもん。
バ美肉なのに。
ボイスチェンジャー使っている娘なのに。
「ん、ん、ん……この美味しい背徳の味よ。ちろちゃんお墨付きだからおいしくて当然だけどね、にしし」
そんなちろちゃんの声を聞きながら飲むエナドリの味は最高だ。
間違いなく体に悪いものだけれど、だからこそおいしいのだ。
「可愛いなぁ。なんでこの娘ここまで可愛いんだろー」
ちろちゃんもこのエナドリが大好きといっていて、だからこそこのエナドリを飲み始めたところがある。
それ以外にも某配送ゲームの影響もあるにはあるのだが、それはそれとしておいしい。
色々と仕事に嫌気がさしてくるけれど、ちろちゃんの癒しロリボイスを聞きながらエナドリを飲んでるとそれらが全部吹き飛ぶ。
その効果が本当に絶大で、だからどうしても週に一回は飲みたくなるのだ。
「あ、ちろちゃんも飲んでる。……そんだけで幸せ感じる辺り、俺本当に安い女だな。いやおっさんだけど」
◆
「猫かぁ、確かにかわいいよね。でも俺はちろちゃんの方がいいなー。むしろ猫になってちろちゃんに甘えたい抱き着きたい」
最高においしいエナドリを飲みつつ、ちろちゃんの音声だけ聞きながら運転を続けた。
そうしたら、ちろちゃんから猫を飼いたいという話が出てきた。
正直本気でちろちゃんに飼われる予定の猫がうらやましい。
「ちょっと猫の練習でもしよっかな。にゃあ、にゃおにゃお……なんちゃって、えへへ」
だから勢い余ってこういうことする。
「やっべ、テンション高いな俺。酒でも飲んでるみたいだ。これアルコール入っていない筈だけどねぇ。うめうめ」
こういうことになるから、エナドリは最高なのだ。
これはもう劇薬というものだ。
「あぁ、耳も幸せだしエナドリもおいしいなぁ。にひひ」
◆
「ん゛あ゛あ゛あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛!゛!゛!゛ あ゛の゛娘゛か゛わ゛い゛い゛な゛あ゛あ゛ぁ゛!゛!゛!゛」
「汚い」
「仕方ないだろ、あの娘可愛いんだもん。トラックドライバーの癖に!」
「トラックドライバーだからってかわいい女がいないとも限らないだろ」
「あの無表情で凛としているだけでもすごくイイ!」
「そうか」
「でもあれで好きなものに対して可愛い笑顔してたらすごくすこ!」
「あぁそうか」




