一話「二十五歳」
二十五歳。
人によってはもうおっさんと呼んでもおかしくない年齢だ。
「俺ももう二十五歳か……」
コンビニに入りつつ、思わずそうぼやいてしまう。
何か特別なきっかけがあったわけじゃないが、なんとなく時間の流れが早く感じることに寂寥感を覚えてしまったのだ。
「ショックだな……ただでさえ仕事きつかったのに」
未だに晴れない寂寥感に苛まれつつ、コンビニの弁当コーナーに向かう。
目的は今晩飲む酒とそのツマミだ。
酒はもうすでに流れ作業で確保したから、後は晩飯兼ツマミとなる弁当を選ぶだけだ。
「さぁ何がある?」
弁当コーナーを見やれば、カツ丼やらカレー弁当やらで色々並んでいるのがわかる。
どれも酒が美味しくなりそうなもので、既にちょっとよだれが出そうだ。
「よし、これだ」
そうして選んだものは、ここ最近に新しく出たかき揚げ弁当。
このコンビニは謎に弁当に力を入れているらしく、だからなのか謎に美味い。
「楽しみだな」
やっぱり一人で晩飯を買う時間というのは、なんか謎の魅力がある。
さっきまでしおれていたのに、いつの間にか元気になってたのがその証拠だ。
◆
帰ったらまず風呂だ。
きつい仕事でかいた汗を流して、とりあえず頭が動くうちに洗濯物をベランダの洗濯機に突っ込んでおく。
洗濯を終えて洗濯物を適当に干したら、ようやくお楽しみだ。
「ぷはぁ……うんまぁい」
まずはグラスに注いだ日本酒で一人乾杯。
そのついでにレンチンしたかき揚げ弁当の蓋を開いて、アツアツのかき揚げを頬張る。
「うまうま」
それからさらに甘辛いタレが効いているご飯も食べて、それから流し込むようにもう一回日本酒を飲む。
「はぁ……最高だ。──ついでにゲームしよ」
続いてもっかいかき揚げとご飯を頬張って、ゲーム機を起動する。
この身はゲームが大好きで、酒に酔うとやりたくなるのだ。
「さぁたくさん撃つぞー」
今日やるのはTPSゲーム。
銃を持ってたくさんドンパチできる奴。
割と最近買ったやつで、すっごく楽しい。
酒で酔って銃を撃ったらもっと楽しい。
「おりゃああああああ──あ、撃たれた」
酒をもう一杯かっ食らって適当に乱射しているものだから割と当たらない。
ぶっちゃけ叫んでるだけで、逆に撃たれて殺されることも少なくない。
でも楽しい。
これが酒の力だ。
「今のうちにうまうま──ってやば、もう蘇生されてる。撃たれる前に撃たなきゃ」
こうやって今日も楽しい夜に生きていく。
美味しい酒が飲めて、ゲームができるのだから、幸せというものだ。
◆
「さっきのあの娘、可愛かったよね。アイドルでもあんな可愛いのはいないぞ」
「さっきって、かき揚げ弁当と酒を買ってた女の子っすか?」
「そうそう、あの娘。どこの高校だろ? ……いや中学か?」
「あの女の子、なんか『俺ももう二十五歳か』ってぼやいてたっすけど。てか酒買ってる時点で気づけ」
「まさかの俺っ娘?! しかもあの中高生みたいな小さい見た目で二十五?! しかもお酒好き?! ……合法ロリってまじでいるんだな」
「先輩。きもいっす」




