北天のボラリス(3)
やはりこうなったら、早く終わらせたほうがいいかも。
あまり魔法を使っていないというのに魔力量がそれほど減らされたっていうことは、コイツの威力がめっちゃくちゃ高いという証拠である。
確かに【高級結界魔法】を使ってたんだけど、【結界魔法】はそもそもそれほど魔力は減らされない類の魔法だ。
”展開"よりむしろ"維持”するほうは魔力消費が激しい、ということ。
それにしても、当たってたら絶対燃え滓にされるほどの威力だったな、ボリラスの【炎の息吹】。
完全に防げるためには何度も結界を強化せなければならなかった。
キツかったけど、なんと防ぐことに成功はしたが、その代価としては魔力量の半分以上を使わせてしまった。
龍に対して物理攻撃だけ使うのもバカバカしいし、でも魔法を使えば使うほどいずれ魔力量も尽きちゃう。
でもどうやって残りの魔力を維持しつつ手早く済ませられるだろう。
高級魔法はもう禁止。
破壊半径を減少する仕方も知らないし、被害者が出る確率も高い。
けれど何もしないと王国がはぐれドラゴンに踏み躙られる。
どうしようかな。
そう、思いながらポラリスの【氷の息吹】攻撃を結界を張って防いだ。
つい、魔力を使っちゃった。
もう何度も龍と戦ってきた俺は何かに気づいたはずなんだ。
弱点とか。たしかに翼を凍らすのは効き目があるが、相手は何らかの理由で北天のボラリスと呼ばれているものなので、前も言ったようにおそらく【氷属性】の魔法は効かない。
あと戦って数分が経ってて気づいたのは【炎属性】も若干強いということだ。
そんなことを慮ると、【炎属性】にも【氷属性】にも耐性があると判断もつけられる。
つまりコイツを相手にすればなるべく【氷属性】の魔法も【炎属性】の魔法も使わないように、と。
龍としては鱗も固いし、身体もデカいので物理防御力では俺みたいな人間よりも遥かに凌駕している。
ってことは……
と、ここで俺は目の前のボスをよく観察する。
鎧を連想させる雪のような鱗に覆われ、大きな目で鋭くこっちへと視線を投げて睨み付けている。
身体は俺の何倍よりもデカい。
……まあ、あたりまえだろう。
でもよく見たら龍化したシリカよりもデカいし。
どこを見てもやはり戦車って感じがするが、ひとつ鎧のような鱗に覆われていない部分を強いていうなら、それが目玉である。
………………。
と、ここで、俺はようやく気づく。
なるほど。
おまえの弱点はその目玉だったのか。
人間も同じだ。
視力が奪われればほとんど何もできなくなる。
それを知って作戦がようやく見えてくる。
とても簡単だ。
要は【黒薔薇の刀】を【雷属性】に付与されたまま目玉に突き刺さって目の神経を断ち切るという。
そうすることによって相手は視力が奪われた恐怖で暴れまくるが、代わりにトドメをさせる隙がたくさん生まれる。
イシン様の教えを楯突くはぐれドラゴンとイシン様の教えに従うドラゴンの関係をさらに悪化させないようにコイツは殺さないが、もう2度と誰にも害をなせないようにしてやる。
そう決めて魔力を引っ張り出して、【雷属性】で今日俺は何度も無理やり【黒薔薇の刀】を付与する。
【身体強化】をもうすでに施しているのであとは距離を縮めて作戦を開始することだけだ。
辿る線も見えてるし、もう終わりだ、この戦いは。
――――北天のボラリス。
ごめんだけど、今回は俺の勝ちだ。




