龍国の襲来(1)
【瞬間移動】
と、頭の中で唱えると、身体が分散しているような感覚に襲われ、次の瞬間、俺は高いビルの上にいた。
夜。
時刻はおそらく、明日の1時くらいだろうな。
見下ろすと、下にははぐれドラゴンがたくさんいて、目にしたものをことごとく破壊している。
一瞬にして平和に包まれた王国は戦場化してしまっていた。
龍王は?
知らん。
多分、気づいてさえいないと思う。
…………いや。
前言撤回する。
流石に気づいてはいるよね。
まだ姿を現さなかった理由はたぶん、俺の計画が成功するのを信じているからだろうか。
考えればそれしか答えはないな。
多分。
でももしそうだったらやっぱ、失敗するわけにはいかない。
じっくり考えて、やるべきことを慎重にやる。
ただそれだけなのに、何故か不安に襲われる。
ほんとに、大丈夫のかな。
俺が考えていた計画は果たしてうまくいくだろうか。
くだらないことで頭を悩ませていると、こっちへと飛んでくる炎の息吹でもう少しで焼かせるところだった。
【瞬間移動】
と、もう一度頭の中で唱えると、ギリギリのところで炎の息吹を躱すことができた。
危なかった。
俺がついさっきまで立っていたビルが炎に包まれ、燃え滓に化された。
このままじゃあ【龍の王国】、シリカの生まれ育った場所が滅びる。
そんなわけにもいかない。
考えろ、俺。
どうしよう。
とは言っても、するべきことはもうすでに決まっている。
力押しではぐれドラゴンの長を制圧して、強引に平和会議に出席させることだ。
口で言うほど簡単ではないけど、何もしないとほんとに滅ぼさせてしまう。
深呼吸をして、冷静になれ。
冷静に……冷静に……冷静に……。
パッ!
と、目を開けると、前より視界が広くなったことに気づいた。
……少なくともそんな気がする。
まるで、白眼を開眼したような、そんな感覚だった。
ってか、いつのまに日向になったんだ?
……いや、どうでもいい。
くだらないことを考えるな。
いまは集中すべきだ。
そう思ってもうひとつ深呼吸をすると、襲っているはぐれドラゴンの軍を見据える。
もし、俺がはぐれドラゴンの長だったらどこにいるだろう。
前線か?
……いや、危険が多すぎる。
ってことは、後衛なのか?
そんな可能性は……なくはないが、それでもそれもありえないと思う。
大局的に見れば長は所詮、軍の頭のようなものだ。
もし、頭が断頭されれば、人間の大抵の機能が制限されるように、軍の大きな戦力が制限されてしまう。そんなふうに考えると、軍と一緒に戦うより、長は……と、ふと気づいた。
……やばい。
あれが狙いだったのか!?
早く行かないと!
と、そう思った瞬間、なにか大きなものが、俺を包む月の淡い光を遮ってしまったことに気づいた。




