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その夜

こっちも更新しようと。

「このバカ! 何格好つけてんだよ!?」


夜。


龍王との対話の後、お手伝いさんが用意した部屋に案内され、俺たちは明日に備えて寝ることにした。


……が、その前にルシアナの気に障ったことを言っちゃったみたい。

それに対してルシアナが、


「もう信じられない! バカにもほどがある! 」


このありさまだ。

実はさっき俺が龍王に提案したことが原因だ。

それを聞いたルシアナがキレて酷く俺を叱り始めた。


ちなみにその提案というのは、襲ってくるであろうはぐれドラゴンの長を1人で退治すること。長さえ倒していれば、理性に耳を傾ける者が増えるだろう。


シリカによってどうやら、はぐれドラゴンの長は龍王に匹敵する力の持ち主であるらしい。

1回タイモンで龍王に勝てた俺だが、当時の龍王は龍化しなかった。つまりしがない人間に対して本気を出さなかったという。


もちろん、まぐれで勝ったと堂々と言っている者はいないが、考えていることがお見通しだ。

森のドラゴンはともかく、龍化したシリカに対してすら勝った。

ルシアナはそれを知っているにもかかわらず、それでも叱ってくるのはなんだ?


意味不明。


まあでも、シリカだってお父さんに敵わない、と言っていた。

北門の守護者という肩書きを持つ、あのシリカだぞ?


つまりお父さんより強くない。

でも、その他の有象無象よりも強い。

ってことはつまり、龍化したシリカに勝てる俺もその他の有象無象より強いってことだ。


けど、よく考えてほしい。

当時、シリカに勝てたとき、俺は何をした?


…………

……………………

………………………………そう。


中級の氷魔法で凍らせたんだ。

確かに使ってたとき魔力を過剰に注ぎ込んだんだが。、


まあでも効果が変わらないから事実は不変のままだ。


これで、言いたいことがわかっただろう?


すなわち、“本気を出さなかった”俺はシリカより強いってこと。

ってことは、少しでもはぐれドラゴンに対して本気を出したら、どうなるかわかる?


……まあ、正直に言って俺もわからないが、おそらく手加減という概念を知らなかった俺は当時森のドラゴンを焼き殺したときみたいに、かなりエグいことになると思う。


少なくともそんな自信が俺にはある。


だからルシアナ、


「……確かにあなたが強い。ここに集まってるみんなはそれを知っている。でもやっぱりはぐれドラゴンの長を1人で退治するなんてあまりにも無茶過ぎない? 大体……」

「心配すんな」

と、ルシアナの次の言葉を遮って、俺が言う。

「え?」

するとルシアナは一瞬戸惑ってから、黙りこんだ。


「俺はお前らを守るって言ったろ? だから心配すんな。俺、絶対勝つからな」

そう言うと、何故かルシアナの顔が真っ赤っかになった。


ずっと見ているアリスもシリカもルシアナみたいに真っ赤っかになり、何故かそわそわし出した。


あれ? 俺なんかしたのか?

そう思いながら、


「シレッとそういうことを言わないでください」


と、ルシアナは頬を膨らませながら言う。


何、その反応?

超かわいんたけど。

まるで猫みたいに。


「まあまあ」


と、シリカが語り始める。


「明日も父親とミーティングでしょ? そろそろ眠ったほうがいいんじゃない?」


彼女の言う通りだ。

いつはぐれドラゴンが来るかわかんないし、今のうちにどんな状況で何をすればいいのかきちんと龍王といろいろ決めないとな。


「そういえば、そうだったな」


とりあえず、相槌を適当に打つことにした。

するとシリカはしばらく俺を見つめてから、


「やっぱあなたに頼んでよかった」


と、顔を紅潮させながら目を背けて小声で言う。

ルシアナもアリスもまるで聞こえかった様に見えたが、俺はハッキリと聞こえた。


正直に言って前もって何を企んでいるか教えて欲しかったが、まあ覆水盆に返らずってことで。


とりあえずそんなことより、もうそろそろ寝るとしようか。


そう決めると、寝床を探す為部屋をぐるりと見回す。


きちんと片付いている部屋だった。

貴族の部屋にしてはかなり小さいが、どこからか落ち着きを感じる。




ベッドは…………………………………


ひとつしかないんだが?


そしてそのベッドはもう3人どもに占領されている。


つまりどうゆうこと?


もしかしてソファで寝ろってことかこれ?


なんか理不尽すぎないか?


いやでも……まあいいか。


時々こういうこともあるんだ。


男として子供みたいに駄々をこねないで素直に受け入れろ。

現実をな。


とまぁ、ちょっと格好つけてみたんだけど、失敗に終わったみたい。


まあいい。


寝よう。


と、そう決めると、そのままソファで仰向けになって目を閉じる。


できれば毛布ぐらい欲しかったな。





──そして場所が移って、空を高く飛んでいる、はぐれドラゴンの軍勢の視点に変わる。



目指しているのはもちろん、山の向こうにある龍の王国だ。


軍勢の前方を、一体の黒龍が飛んでいく。

その目は血を連想させる真紅だった。



「グリムさま、シリカさまと「龍の末裔」の紋章を持っている人間はどうされますか?」


と、隣で飛んでいる龍が黒龍に聞くと、黒龍が当たり前のように答える。


「シリカさまは俺のだ。お前らは紋章の持ち主を殺せ」


と、それだけを言うと、そこで会話が途切れる。



はぐれドラゴンの到来まであと何時間が残っているだろう。


龍の王国にいる者達は、それを知る由もなかった。

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