冒険者試験、その後のこと
「それでは登録しますので、事前に記入した冒険者試験申込書の情報にを踏まえてギルドカードを作ります」
グランドから戻ってきてから5分後。
俺がジャックに勝ったという事実をやっと受け入れたか、通常運転に戻ったエレンはまた俺の受付をしてくれた。
今回はどうやらギルドカードを作ってくれるらしい。
このギルドカードはもしかしてだけど、身分証の代わりになるものでは?
だったら無くさないように、キッチリとインベントリーに仕舞わないとな。
ちなみにジャクはどうやら壁に衝突した際、コンクリートに頭をぶつけて意識を失ったらしい。
幸いなことに、ここのヒーラーによって全回復はするが、2~3日の間に意識を失ったままでいる。
それはすまんな。
あの回し蹴り、正直に言ってそんなに力を入れなかったかと思ったんだけど、俺の勘が違ったみたい。
まあ、まだ生きているから大丈夫でしょ?
もし俺が敵だったらもうこの世にいない。
「これはこう、と」
と、何かを呟くエレン。
考え事から現実に戻り、エレンの言うことに集中する。
「さてと、登録にしばらく時間がかかりますので、その間にギルドの説明を行いますね」
そう言えばエレンってまだギルド制度を説明しなかったな。
これ大事かもしれないから耳を澄まして拝聞するとしよう。
「まずはギルドカードですね。ギルドカードにはカエデさんの情報が書き込まれていきます。冒険者ランク、受けた依頼の数。依頼の内容、成功数、失敗数。現在受けている依頼などが登録されます。この情報はどこのギルドでも見ることができます」
失敗数も成功数も記録されるんだな。
まあ、そりゃそうだな。失敗数が多い冒険者には依頼は頼みたくないもんな。
それにどこのギルドでも見ることができるか。
つまり、このギルドに登録しているのに、他のギルドで依頼とか受けることができるというわけか。
だったら思っていたよりギルドの制度がかなり共同している。
「次はギルドランクの説明をしますね」
「はい」
「ランクはFから始まり、E、D、C、B、A、Sと上がっていきます。ランクが上がるのは依頼の成功数、失敗数を考慮します。失敗が多い場合は上がることはありませんので、依頼を受けるときは自分の力に合った依頼を受けてください。あと、同ランクの依頼を受け続けた場合も上がることはありません」
「ふむ………つまりどういうことですか? 自分の力に合った依頼、すなわち同ランクの依頼を受け続ければランクが上がらない場合もあるって言いましたよな? ってことは、ランクを上げる為に自分のランクに合わない依頼を受けないといけないってわけですか? もしそうでしたらFランクの冒険者はEランクの依頼を受けることができますよね?」
「勘がいいですね。うん、依頼は一つ上のランクまで受けることができます」
一つ上のランクまで受けることができるか。
つまりFランクの冒険者はSランクの依頼を受けることができないってわけか。
ふむ。そういうことか。
でも、あれ?
ゲームのようにここにもパーティーを組めるんじゃない?
もし、自分よりランクの高い人とパーティーを組めばどうなん?
そのままエレンに聞くと、エレンは答えてくれた。
「ランクが高い人とパーティーを組む場合はかなり複雑ですね。状況によって異なりますから」
???
「ん? と言うと?」
「その場合、ランクを上げる為に依頼の成功数は特定数に至らなければなりません。FからEに5、DからCに20、CからBに50、BからAに100。もし、Sランクに手伝ってもらうと、いくら依頼をこなしてもランクが上がることはありません。次にパーティーにいるランクの高い人の証言が必要です。ランクが高い人が認めれば最後のプロセスに切り替わります。それは実力テストです。冒険者試験の模擬戦みたいなものです。例えば自分がBランクの冒険者だったら、Aランクに上げる為にAランクの冒険者と戦わなければなりません。もし勝負に勝ていたら、ランク昇格が認められます」
依頼の成功数が特定数に至らなければならない。
Sランク冒険者とパーティーを組めばいくら依頼をこなしてもランクを上げることができない。
それにパーティーで一番高いランクのメンバーの証言の必要性と狙っているランクの冒険者との実力テスト。
うん、マジで複雑だな。
あと自分の意見だけど、高ランクの冒険者とパーティーを組まないのよくねぇ?
少なくとも俺には必要ないんだけど。
「あと最後に、このカードはカエデさんしか使うことはできません。紛失すると再発行に5000エリスの手数料を頂きます。身分証の代わりにもなりますから無くさないように」
出来上がった銀色のカードを渡される。
カードを見ると、
─────────────────
名前 カエデ
職業 魔法使い
冒険者ランク F
属性 不明
現在の依頼
・現在は依頼がありません
依頼の内容
・現在は依頼がありません。
魔物討伐数
30003体
依頼数
0
依頼成功数
0
依頼失敗数
0
─────────────────
情報はこれしか書いていない。
随分とシンプルだね。
あとちゃんと魔石を集める為に倒した魔物の数もきっちりと記録されている。
とりあえずインベントリーにしまう。
「依頼はあちらのボードに貼り出されています。自分が受けたい依頼がありましたら依頼書を受付まで持ってきてください」
見ると、ボードの前には人が沢山いる。
でも、人がいないボードもある。
「あちらは?」
人のいないボードを指さすと、エレンはしばらく指さしているところを見ると、答えてくれた。
「あちらのボードは高ランクの依頼になります」
なるほど。
つまり今の時点で高ランクの冒険者がいないってわけか。
「あと何かお聞きになりたいことはありますか?」
そうエレンは聞いてくるが、特にないよな。
「今のところはないですね。何か知りたいことがあったら改めて聞きにきますね」
俺が答えると、エレンはさらに質問をしてくる。
「それでは本日は依頼を受けますか?」
どうしょう?
別に今でも依頼を受けてもいいんだけど、その前に、
「いや。いまちょっと行きたいところがあります。この街に来てからずっとこの装備ですし、ちょっと新しい武器や服装を買いに行きたいなぁ、って思っているところですね。それにしばらくは街を探索するかも知りません。昨日、初めてこの街に来たんで」
そう言えば、俺がこの世界に来てから1日しか経っていないよな。随分と長く感じたね。
じゃあ、これで決まりだな。
装備を変えたら街を探索する。
そう決めると、エレンと別れて、ギルドの外に出る。




