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氷竜の娘  作者: 春風ハル
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60.武器選び

 エレクニスは店内の一角にある、空いているスペースに一通りの種類の武器を集めて並べ置いた。どれも簡素な作りで、扱いやすいものであった。店内に置かれているほかのものと比べるとやや小さく見え、どうやらリエティールの体格にあわせてできるだけ小さめの物を選んでくれたようである。


 リエティールはとりあえず片っ端から手に取ってみることにし、まずは片手剣を持ってみる。イップが持っているのも片手剣であり、エルトネの中ではスタンダードな武器のようだ。盾と合わせて用いるのが普通らしく、隣には盾が置かれていた。イップも普段は盾を背に背負っている。

 ソレアが持っているのは両手剣で、片手剣よりも大きく重く、盾が持てず素早さが落ちる代わりに一撃が重い。体格が大柄であったり筋力に自信があるエルトネが選びやすいという。リエティールも片手剣を置いて隣に用意されていた両手剣を持ってみるが、あまりしっくり来ないようであった。


「両手剣、重くないかい? 見かけによらず力持ちなんだね。

 でも、リエティールさんは小柄だから、そういう一撃の重さを重視した重量級の武器よりも、素早く動ける軽い武器の方が合っているかもね」


 エレクニスはどうやらリエティールが両手剣をすんなりと持ち上げたことに驚いているようであった。リエティールは知らないため気がついていないが、用意されたのは一般的な青年女性向けのサイズの武器であったのである。どんな相手にも武器を売るとは言え、常に全ての人に向けた物は置いてはおらず、受注生産が普通のため、こういう場合に備えているのは多い客層向けのものだけであったためである。ソレアもそれが分かっていたため、少し驚きの表情を浮かべていた。

 リエティールが平然としているのも、氷竜エキ・ノガードの力を継承して身体が強化されているためである。現時点では流石に成人男性並とまではいかないが、平均的な成人女性よりは高い筋力を持っている。なので、青年女性向けの重量系の武器が問題なく持てるのは当然のことであった。なお、本人は力が強くなったことには気がついているが、それがどの程度のものなのかは分かっていない。


 そんなことは露知らず、リエティールは両手剣を置いてエレクニスに言われた通り軽そうな武器を持ってみることにした。

 手に取ったのは短剣で、名前の通り刀身の短い小型の剣で、そのまま通常の剣を小さくした形のもののほかに、片刃のナイフの形をしたものや、鏃のような形をしたものなどが用意されていた。彼女が手に取ったのは剣の形をした一番スタンダードなものであった。

 軽いというだけあって、振り回すのに力も要らず、直感的な攻撃ができるが、その短さゆえ攻撃範囲が小さくなるのが難点である。しかし間合いをつめれば通常の片手剣相手にも有利に動ける。如何に相手の攻撃を避けて動けるかが鍵であり、小柄で素早く動ける人に向いた武器であった。


「そのまま手に持って戦うこともできるが、場合によっては投げるというのも手だな。 尤も、コントロールは難しいが」


 リエティールが短剣を手に取ったのを見てソレアが言う。実際に投擲武器として扱われることも多く、メイン武器と言うよりはサブの攻撃手段として用いる人も一定数いる。攻撃が届かない場所にいる標的を狙ったり、相手の攻撃範囲外から奇襲を仕掛けるなどにも有効な手段である。単純に物をきるのにも使いやすいということもあって、短剣使いのエルトネは少ないが、殆どのエルトネは短剣を持っている。


 汎用性が多いと言う点に魅力を感じ、リエティールは短剣を候補に入れつつ、別の武器を見ていく。並べられた軽い武器の中でリエティールの目を引いたのは槍であった。


「槍っすかー! いいっすね、かっこいいっす!」


 どうやらイップはそのチョイスに惹かれたようで、弾んだ声でそう言った。エレクニスはその隣で頷き、


「確かに槍は片手剣に比べても軽いし、リーチもある。 身長の低さによるリーチの短さを補うにも丁度良いかもしれないね。 両手剣を簡単に持てるくらいなら問題ないだろう。

 経験が無くてもある程度戦える反面、極めるのは難しい武器でもあるけれど……使ってみるというのはアリだと思うよ」


と肯定の意思を示す。


「ああ、リーチの長さは戦いにおいて優位に働く。 槍は刺突のほかに斬撃もできるしな。

 だが、間合いを詰められると弱い。 そうだな、短剣と合わせて使うのが良いんじゃないか?」


 ソレアも同意のようで、短剣と合わせて使うのを勧めた。

 リエティールは三人の反応を受けて乗り気になり、短剣と槍を使うことに決めた。


「よし、じゃあ早速父さんに話しに行こう。 皆もついて来て」


 エレクニスはそう言うと、店の奥へと進んで行く。どうやら奥が鍛冶工房につながっているようで、彼の父親である店主はいつもそこで武器の製作作業に勤しんでいるらしい。カーンと言う音はそこから響いてきていたようであった。先ほどから音は止んでおり、恐らく作業が一段落ついているのであろう。

 リエティール達はエレクニスの後に続いて工房へと足を踏み入れた。

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