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氷竜の娘  作者: 春風ハル
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45.貨幣価値

 食べ歩きで昼食を済ませた二人は、リエティールの希望で近くにあった雑貨屋を見ることにした。

 扉を開けるとベルが鳴り、中から「いらっしゃいませ」という声が聞こえてくる。店内はこぢんまりとはしているが、テーブルの上には様々な品物が所狭しと並べられており、二人の目を楽しませた。

 革でできたポーチや、小さな靴などの形をした置物に加え、焼き物でできた食器や、羽根を使ったアクセサリーなども置かれていた。羽根は白いものや灰色のものが多く、理由をリエティールが店員に尋ねると、多くはワルクの羽根を使用しているようで、一部の色がついているものはネクチョクの羽根を利用しているらしい。

 焼き物は近くの鍛冶工房から出してもらっているそうで、売り上げは半分ずつ分けるという。デザインと販売を雑貨屋で、製作を鍛冶工房でという形らしい。

 二人はじっくりと見て回り、最終的に折角来たのだから何か一つ買っていこうということになり、リエティールは迷いに迷って、ワルクの白い羽根とネクチョクの黒い羽根を使ったブローチを買った。


「こんな風にじっくりと雑貨屋を見ることなんて今までなかったな。 たまにはこういうのもいいもんだ」


 雑貨屋を出てからソレアはそう言った。彼は元々かわいい小物などにはあまり興味がなく、行くのは食事処を除けば武器屋や防具屋、エルトネ向けの便利道具を扱っている店ばかりだったという。そのため、今回の雑貨屋を見るという経験は、彼にとって新鮮なものだったようであった。

 一方のリエティールは、ドロクの町を出てからは全てが新鮮であった。見るもの全てが目新しく、驚きと喜びが混じるようなその気持ちを、ソレアと共有できたのが嬉しかったのか、彼の言葉を聞いて顔をほころばせた。


 町並みを見ながらゆっくりと歩き、二人が宿に戻ってきた頃と時を同じくして、商人達三人も戻ってきた。彼らは食事処で昼食をとった後、顔馴染みの店にいくつか寄って商売関係の話をしてきたらしい。クシルブに近いということもあって商品の仕入れはしていないようであったが、世間話も交えて彼らなりに充実した時間を過ごせたようであった。


 全員で部屋を見に行くと、それは広い部屋であった。作りは簡素ではあるが、寝る場所が五つあるというだけあり、随分と広い印象を与えた。二段ベッドが縦に並べて二つ、反対側の壁に一人用のベッドが一つ。

 五人で泊まるとなると、パーティを組んでいるエルトネ達がたまに訪れる程度で、長期滞在をする為にくるグループはあまりいないらしい。そのため、単純に泊まるためだけの部屋故か、家具はそれ以外にはサイドテーブルが一つあるのみであった。それでも休息を取るには十分立派であった。

 商人達も五人部屋というのは初めてなためか、珍しそうに部屋の中を眺めていた。ちなみに五人部屋はこの宿にしかないが、この宿の中でもそれはここの一部屋のみだという。理由としてはあまり需要がないというのがやはり大きいらしく、大人数のエルトネのパーティがあまり無いという訳に加え、二つに分かれてもっと安い宿を選ぶという人が多いというのが原因なのだという。

 そのため、この折角の五人部屋も殆ど利用者がいないというのが事実ではあるが、五人部屋があるという特色をつけておくことで、この一行のように部屋分けに悩む集団が時たま利用してくれる例もあるため、維持しているという背景があった。

 余談ではあるが、クシルブでも同様の理由から五人部屋を持つ宿は数が少ない。


 明日早めにここを発てば、昼過ぎにはクシルブに到着できるというため、早めに寝るという方向に決まった。夕食はこの宿で済ませることになり、それまでは各自また自由時間となった。

 商人達はまた別の店を覗いてくると言って宿を出、リエティールは部屋で休憩することにした。ソレアは先程は寄らなかった道具屋を見てくるといって部屋を出たが、出かけ際にリエティールに鍵を内側からかけておくのを忘れないようにと声を掛けて言ったのは、すっかり保護者のようであった。


 リエティールはベッドの上で、今もっている所持金全てを取り出す。銅色のものが三枚、銀色が二枚、金色が四枚、一番綺麗で大きい白金色のものが三枚ある。

 今日の買い物の中で値段の表記を見て、通貨単位が「ウォド」ということがわかったが、分かりやすさ重視のためか、屋台の多くでは「○貨何枚」というような表記が使われていた。

 最初は銀色のものが五枚あり、銅色のものは持ってきていなかった。リエティールには貨幣の価値が分からなかった、当然物の価値も良くわからない。ドロクの宿からお金を拝借する時に、取りあえず価値のありそうな方から三種を、数枚ずつ持ってきていた。

 一人部屋に泊まった時には、銀貨二枚と言われたので、銀貨を二枚出した。今日の食べ歩きでは銅貨五枚だったため、銀貨一枚が崩れて結果銅貨五枚になった。そして最後に買ったブローチが銅貨二枚だった。そして今の状態になったのである。

 宿で彼女が見た限りでは、銅貨より下に鈍色の鉄貨という硬貨もあり、それが一番価値の低いものだと思われた。今日彼女が買ったネクチョクの串焼きは三本で銅貨二枚であったが、一本別々に買うと部位によって値段に差があり、銅貨一枚であったり、鉄貨五枚というものもあった。

 現状では銀貨と銅貨で事足りており、金や白金の硬貨はまだ使う場面に合っていない。それらは彼女が思っているよりも価値がありそうであった。

 現状分かっていることは、鉄、銅、銀の順番に価値が上がっていくことと、銅貨十枚で銀貨一枚分の価値があるように、十枚で一つ上の価値のもの一枚になるということで、それ以外の事は分からないが、食事は銅貨数枚があればできることは理解できた。


 貨幣価値について自分なりに考えた後、リエティールは現状特にすることもなかったので、部屋の窓から町の様子を眺めて時間を潰していた。

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