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氷竜の娘  作者: 春風ハル
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256.トファルドの屋敷へ

「君、もしかして肩に乗せてるのは霊獣種ロノ?」


 列に並んでいると、ふと隣からそう声を掛けられ、リエティールはそちらを振り向いた。声の主は女性であり、ゆったりとした服装をしていたことから恐らく魔術師ストラであろうことがわかった。

 リエティールが頷くと、その女性は目を輝かせてこう言った。


「いいなあ、霊獣種! 魔法が使えてかわいくて頼もしいなんて最高よね!

 私も君くらいの年齢までに霊獣種と出会えてたら、魔術師じゃなくて霊獣使い(ロノアルト)になりたかったのになぁ……」


 羨ましそうな視線を向けつつ、大げさなため息をつく。リエティールが苦笑いし、ロエトもどうしたものかと首をかしげていると、女性は続けてこう言った。


「ねね、ちょっとその子に触ってみてもいい?」


「え? えっと……ロエト、いい?」


 戸惑いつつリエティールがそう尋ねると、ロエトもはっきりとしない様子であったが、小さく「フル」と鳴いて、特に嫌がる様子は見せなかった。触られたいとは思わないが、別段嫌でもない、若干警戒心があるといった具合だろうか、リエティールはそんなロエトの態度に少し困りながらも、


「た、多分……大丈夫、です」


と女性に答える。すると女性は心底嬉しそうな笑みを浮かべて体を小さく弾ませ、それからそっと手を伸ばしてロエトの首後ろに優しく手を触れた。それからゆっくりと手を往復させて撫でると、ロエトは気持ち良さそうに目を細める。撫でられた羽毛が波打ち、キラキラと煌いている。


「さわり心地は普通のティルブと殆ど同じなのね。 魔法でできた体なのに不思議だわ……」


 そんなことを呟きながら、女性は夢中になってその手を動かしている。心地が良いのかロエトは、最初の曖昧な態度はどこへやら、すっかりうとうとと眠たげに頭を傾げていた。


「撫でるの、上手なんですね」


 ロエトの警戒心がすっかりなくなっていることを見て、リエティールは女性にそう声を掛ける。すると女性は少し誇らしげな笑みを浮かべて言った。


「私、小さい頃から無垢種ラミナとか好きでね、家で色々お世話とかもしてたの。 だからどういう風にすれば喜んでもらえるのか、大体理解してるのよ。

 だから最初は調教師ニニヤートにでもなろうかと思ってたんだけど、魔術師もロマンがあって憧れだったの。 だから霊獣使いになりたかったんだけど、出会いに恵まれなくて……君が羨ましいわ」


 よく見ると、女性の身につけている服や装飾品は、どれも動物のモチーフが含まれていた。見れば見るほど、動物好きのオーラが溢れ出てくるような姿であった。


「あ、気がついたら結構進んでるわね」


 そんな風に話を続けていると、女性はふとロエトを撫でる手を止めて、前を見て言った。列の流れに身を任せて無意識のうちに歩いていたようで、気がつけば門はもう目の前に迫っていた。

 程なくしてリエティール達の順番が回ってきて、カードの確認の後簡単な身体チェックを経て、二人とも無事に首都の中へと入ることが出来た。


「今日はありがとう。 それじゃあ、元気でね!」


「はい、さようなら! ほら、ロエト」


 肩の上で眠ってしまっていたロエトを、リエティールは指で軽くつつく。驚いて飛び起きたロエトに、女性は小さく笑いながら手を振り、リエティールもまたそれに手を振り返して別れた。


 女性と別れた後、リエティールはセイネに貰った地図を頼りに、セイネの父が住む家を探して歩いた。

 通りは活気に溢れていて、特に魔道具スルートを扱っている店が多かった。それに加え、イザルの店のような、魔道具の材料になるものを取り扱っている店も数件垣間見えた。その中には、店先にネットナックが顔を覗かせている所もあり、行き交う人々が微笑ましく見つめたり、子どもが鼻先をつついたりと、店のマスコット的存在となっているようであった。

 それ以外の店でも、魔道具を使って調理している様子を見せている料理店なども立ち並び、いかにも「錬成術師ミクラルトの国」の呼び名に相応しい光景が続いていた。

 道すがら、匂いに誘われ少し食べ物を買いつつ、リエティールは先に進んで通りを抜けた。静かな住宅街を抜け、更にその先にある貴族街へと到達する。

 重々しく厳格な雰囲気であったり、華やかで美しい様子の門が立ち並ぶ、いかにもといった道を進んでいくと、暫くして目的の邸宅が目に入った。

 薄い青色の外壁に緑の屋根が特徴的な、小奇麗な外観の屋敷は、十分豪華ではあるが他とは違って少し控えめにも見える。

 門に近付くと、その脇に小さなボタンが設置されていることに気がついた。これも魔道具で、押すと音が鳴り来客を知らせるものであった。リエティールはそれを知らなかったため、触れていいのか悩んで周囲をキョロキョロと見回していると、


「あら?」


と、不意に声が聞こえてきた。その声は門の向こう側からで、リエティールがそちらを向くと、簡素なドレスに身を包み、片手に如雨露を持った淡い青紫の髪をした女性がいた。


「あらあら、お客さんかしら?」


 女性はそういうと、如雨露をその場において門へと近付いてくる。そしてリエティールと門越しに対面すると、


「こんにちは、可愛らしいお嬢さん。 何か御用かしら」


と声をかけてきた。リエティールはセイネからの手紙を取り出し、差し出しながらこういった。


「リエティールです。 あの、これ、セイネさんからのお手紙です。 トファルドさんにお願いがあって……」


「まあ、シーちゃんから? わかったわ、ちょっと待っていてね」


 女性はそう言うと、ふわりと笑みを浮かべて手紙を受け取り、屋敷の中へと入っていった。

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