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氷竜の娘  作者: 春風ハル
213/570

212.温かい食事

沢山の誤字報告をしてくださった方へ、ありがとうございます。すべてに目を通すのが難しいため、大変助かります。

また、「172.港町へ」で写し絵の下りの描写抜けがあった部分を追記させていただきました。申し訳ありません。ストーリー自体に大きな変更はありません。

 リエティールがテーブルの準備をして待っていると、調理を終えたイザルが料理を持って現れ、それを次々にテーブルの上へと並べていく。

 瑞々しいオタモ、ムククにクッテルを切って盛り付け、そこに調味料を合わせて作ったソースをかけたダラス。リエティールが手伝った、温かいニックパンプのプオ。そしてその合間にイザルが作った、ホクホクとした食感が特徴のタトプと干し肉に、スパイスで味を調えて焼いたものが並び、最後に丁度よく焼けたパンが用意された。飲み物には野菜と一緒に購入した果物で作ったものが注がれる。

 豪勢な、とまではいかないが、二人で食べるには十分すぎるほど立派な食卓へと変貌し、リエティールはその目をキラキラと輝かせた。


「すごい……!」


 並んだ料理を眺めながらそう呟くリエティールに、イザルは無意識のうちに満足げな笑みを浮かべていた。


「冷めないうちに食べるぞ」


 イザルの言葉にリエティールも我慢できないといった様子で頷き、二人は席について早速料理へと手を伸ばした。

 ダラスはシャキシャキとした食感で、野菜の鮮度がいかに高いかを表していた。プオはまったりとしたコクと甘味が満足感を与え、タトプと干し肉はスパイシーでまた違った美味しさがある。少し前までは、まさかイザルがこのような料理を作るなど想像もできなかったであろう。

 初めて食べる料理に、リエティールは夢中で手と口を動かし続ける。そして、ふと顔を上げると、その視線は偶然にもイザルとばっちりと合ってしまった。

 思いがけず目が合い、二人は思わず同時に顔を背ける。先に視線を戻したのはリエティールで、イザルに向かって眩しい笑顔を向ける。


「とっても美味しいです! ありがとうございます」


 そういえばまだ感想も御礼も伝えていなかったと思い、リエティールはそう口にする。その言葉に向き直ったイザルは、気恥ずかしそうにしながらも、小さい声で「そうか」と答える。

 それからやや間を空けて、


「……俺からも、礼を言う。 あー……なんだ、ありがとう、な」


とぎこちなく言った。それを聞いたリエティールは、不思議そうに首をかしげ、


「えっと……?」


と、お礼を言われた理由がわからないと態度で示す。

 そんな反応を見て、イザルはもどかしそうにため息をつくと、目を泳がせながらこう続けた。


「俺を外に連れ出して、怒ってくれたこと、だよ。

 まさかお前みたいな子どもに励まされるなんて思ってなかった。 けど、まあお前の言う通りだ。 父さんのためにも、もっと前を向かないと駄目だって、気づいたんだよ」


 イザルの答えに、リエティールは自分が勢いに任せて説教のようなことをしてしまったことを思い出し、恥ずかしくなって顔を俯ける。


「あ、その……なんか……ごめんなさい」


 リエティールがそう誤ると、イザルはジトッとした目を向けて、再びため息をつく。


「はあ、なんでお前が謝るんだよ。 俺は感謝してるって言ってるだろ」


 そうしてお互いに気まずそうな顔で見合うが、すぐに表情を和らげて微笑を浮かべる。


「……そういや、お前の名前を聞いてなかったな。 なんていうんだ?」


 イザルにそう尋ねられ、そういえばそうだとリエティールも名乗っていなかったことを思い出す。


「リエティールです」


「そうか」


 名前を聞くと、イザルはいたずらな笑みを浮かべる。


「じゃあ、リエティール。 改めて、ありがとうな」


 改まってそう礼を言われ、リエティールは意表を突かれて目を丸くするが、それからすぐに恥ずかしがりながらもにっこりと笑い、


「どういたしまして!」


と答えた。


 食事を終えたあと、リエティールは浴室を借りることにした。オルのような湯船は無いが、体を軽く洗い流すだけでもしておいたほうがいいとイザルに言われ、その言葉に甘えることにしたのである。

 実際、海を渡ってきたことで若干のベタつきがあり、海竜リム・ノガードとの激しい戦いによって多少の汗もかいているので、ここで体を洗えるのはとても都合がよかった。

 浴室を使う前に、中にいるネットナック達を呼び出さなければならないと、イザルが浴室に向かってそれぞれの名前を呼びかける。


「カン、テン、ワー、テル……」


 名前を呼んでいくと、それぞれに応じて次々にネットナックが姿を現す。ぽよぽよとした水を含んだ重たそうな体を揺らしながら歩くその姿は、やはりリエティールには見慣れない光景であり、好奇心をくすぐられるものであった。

 ネットナック達をじっと見ながら、リエティールはふと浮かんだ疑問をイザルにぶつける。


「皆同じ顔に見えます……どうやって見分けてるんですか?」


 ネットナックはどれも同じ体形に同じ顔をしており、リエティールにはどれがどれなのか到底見分けがつきそうにも無かった。


「名前を呼べば分かるが……首の後ろに書いてある」


 書いてある?と、その言葉に首を捻りながらも、リエティールは一番近くにいたネットナックの首の後ろを覗き込む。するとそこには、目立たない色のインクで「テン」と書いてあった。

 よく見ればここが違う、などの見分け方を教えてもらえると思っていたリエティールは、思いも寄らない単純な見分け方に、思わず拍子抜けして苦笑いをした。

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