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新しい作戦

 ドワーフたちをバルモス島へ送り届け、各種の指示を出しておいた。

島の人口がいきなり243人になってしまったので、食料の買い付けが必要になってきている。


「どこかで買ってスカイクーペで運ぶしかないな」

「でしたら、レオの領地である南ルプラザで買うべきよ」


 どうせ買い物をするのなら、自分の領地を富ませなくてはね。

忙しくて視察にすら行っていないけど、俺はもう南ルプラザ伯爵でもあるのだ。


「フィルの言う通りだ。じゃあ、これから行ってみようか」

「まるで抜き打ちの検査みたい。南ルプラザの代官たちは驚きそうですけど、いいアイデアだと思うわ」


 フィルが悪戯っぽく笑う。

新しい領地は皇室直轄領だったころと同じ代官が政務を取り仕切っている。

いきなり訪ねて行ったら腰を抜かしてしまうかもしれないな。


「アリス、潜入チームからの報告は上がっているの?」


 土地を拝領した時点で、俺は特戦隊の隊員の数名を南ルプラザに潜入させている。

こちらはアリスが直接鍛え上げた情報戦のプロフェッショナルだ。

潜入、諜報、破壊工作が主な任務となる。

今は30人ほどの部隊だが、年度内には中隊規模にして、特戦隊とは別の独立組織にする予定だ。


「あらましだけ報告は上がっております。もともとが辺鄙な場所なので、それほどの大事件は起こっていないようです。代官のレック・ボウルズ殿も少額の賄賂をとるくらいで、目立ったあらもないようでございます」


 ボウルズ代官は可もなく不可もなし、といった感じの人らしい。


「真面目に仕事はしているんだね?」

「はい、勤勉ではあるようです」


 だったら、文句はない。

世の中優秀な人ばかりではないのだ。

こんなふうに領主と皇女がいきなり来ることもある、というプレッシャーを与えることができれば程よい緊張感も生まれるだろう。

南ルプラザのことばかりには構っていられない。

俺たちにはやらなくてはならないことが山ほどある。


 城壁を北部へ押し上げ、人工魔石工場を完成させる。

 大陸縦断鉄道の北側開発。

 カルバンシア‐ルプラザ間の鉄道開発。

 林業の安定化と森林軌道の設置、および山岳地帯の道路の設置。

 軍手工場の拡充。

 バルモス島の開発。

 バルモス-南ルプラザ間の連絡船の設置。

 南ルプラザ領の経営。


 数え上げたらめまいがしてきそうだ。

いくら俺の体力が無尽蔵で、アリスが優秀なオートマタであっても、上記のことをやるには手がなさすぎる。


「そろそろ本気で人材を募集しようかな……」

「それは良い考えでございます。広く優秀な才能を集めるのは王者の務め」

「アリス、俺は王様じゃなくて、単なる伯爵だからね」

「何を言っているのですか。貴方は王族に連なる予定なのでございますよ、婿殿むこどの


 婿殿って……、間違っていないけどさ!


「でも、人なんて集まってくるかな。新興の伯爵に仕えたい人なんて多いとはおもえないんだけど……」


 こう言うと、フィルは大きな胸をさらに張った。


「心配することはないわ、レオ。仕官の口を求める貴族の子弟はいっぱいいるのよ。それに、各貴族家でもレオの元へ人材を入れようと画策してくるに決まっているもの」

「そんなものかな?」

「ええ、間違いないわ」


 結果的にフィルの言葉は正しかった。

後日、家臣を召し抱える旨の回覧を回すと、皇太子のシリウス殿下をはじめ、貴族派、皇帝派の貴族たちがこぞって推薦状を送ってきてくれたのだ。


 最初は勢力バランスをみながらの採用を考えたんだけど、途中でそれはやめた。

ここは恨みを買ったとしても実力と人柄で決めることにしたのだ。


「身辺調査は私にお任せください。新たなハーレム要員を決める大事な選考ですから」

「ちがう! 家臣を探すんであって愛人を探しているわけじゃないんだからね! それよりも使える人材を見極めるんだ」


 アリスに任せるといつも若干の不安が残る。


「冗談はさておき、とりあえず一次面接をしてしまいましょう。二次面接が始まるまでにスパイの疑いがあるものはすべて弾きますので」

「特にバルモスへ派遣する人員には気をつけてくれ。あそこはララミーとマシュンゴを中心に新技術開発の聖地にする予定だからね」

「心得ておりますよ。表向きはスパリゾートでも、地下は秘密の研究所という中二病感溢れる夢の施設でございます。この私が手を抜くわけがございません。既に優秀な人材に接触して引き抜き工作も開始しております。魔導科学の大家レオ・カンパーニの元で研究できるとあって、若くて優秀な人材が続々と反応を示しております」

「や、やり過ぎないようにね」

「もちろんでございます」


 アリスの笑顔がやけに怖かった……。



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― 新着の感想 ―
[一言] 更新ありがとうございます。 毎回楽しんで読んでます。
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