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A afternoon party

作者: 黄泉沼

日曜の午後2時。

夏を迎えた都心に、その日の最大出力の太陽光が降り注ぐ。


主人公はクラスメートの女の子を連れて、旧道沿いのカフェにいた。

カフェは一階の洋服店と三階の不動産屋に挟まれた二階。

基本的なスペックとしては、人が寄りにくい。

それをいい事に、よく学生がたむろしている。

つまり、長所は、冷房が程よく効いているのと、茶が美味いこと。

雰囲気はクラスの10分間休憩時間と言った感じで、うるさいほどでもない。


店主は、学生が律儀にお茶を買い直していくのでなにも言わない。


高校と最寄りの駅とを繋いだ道にあるのも集客に一役買っているようだ。


机の向こうに座っているのは、彼女ではない。

クラスブースのリーダーと、会計係が、学園祭に向けての準備に向けて、話していた。

窓側の、旧道の様子がうかがえる席で。

机にはクラスの子から受け取った書類が並べてある。

作業は改稿。

相席の女の子が口を開く。

小さな怨嗟は、彼の耳のみに届いて。


「歩き回る観客の皆さんに休憩所を作ろうという心意気は私も買いますけどね。」

「うん。」

「カフェ+ゾンビの組み合わせって聞いたことあります?」

ないね。

「発想が世紀末ですか?いや、合成獣だ、キメラ!

一目見てああ、業界には存在しないなってわかるやつですよ!」

そうだね。腹からモツがはみ出した店員がいて、平気で茶をすする奴の気が知れない。

「で、承りましたご注文の中に、木炭(ボディペイント用)が御座います。

衛生観念ねぇのかテメェら!バッカじゃねぇの!」

確かに。精神的にくるよね。


相席にいた彼は、言葉を交わす。

根本的に、言いたいことはある。この時期まで来ると、ただの蛇足に成り下がるが。

生徒に利益を追求させるような仕掛けを学校動かして作りゃいいに。

彼女は、書類の余白にク◯トガを突き立てる。

勢いが余った。何度も。

このシャーペン独特の機構が、解き放たれた(テイク オフ)

しかし、下敷きが盾となり、紙のみに焼き跡を描いていく。

目の行き所には困らないな。飽きない。

下敷き、削れてねぇか?


「誰がここに来てアイスティー1杯飲む食欲が湧くの!?

教えて!?

私は経費のやりくりしなきゃいけないのに!

それ以前の問題!!ぁー!」


と、気力を搾り尽くし、机に突っ伏した。

彼女は、会計担当。


「経費が足りないので物品を減らさなきゃなりません。減らすべきものはこちらでまとめてSNSに流します。で、いいんじゃない?」


「ホームルーム、あなたもいたよねっ!

何故リーダーにまでなって素通りさせたのこれを!」


「そりゃ、クラスの雰囲気が大体、いい感じになってたから。普遍性だけは彼らから猛反発食らって僕は首を切られる。」


「私なんていなかったのよ。頑張りなさいよ。

なんのための大統領制なのよ!」


「民主制にそれを問う?世論の重要性について理解していて?」


「30人規模!」


「無茶な。」

フォローもしよう。

なんせこいつは議場となった下校のホームルームより前の時間に体調を崩して早退。


いたらどう行動したかを聞くと(動くのは確定事項)、清潔さをスローガンに壇上に上がるとか何とか。


クラスの奴らは感性が死んでる。

全くひどい。


彼女は、顔も上げない。


「それがね、リーダー。今ここに書いてある値段より安く売ってるところがあるの。

トラップとしては最高だよ?

今の私のやってる作業を(多分)こっちにお願いしてきて、帳尻合わせしてくるに違いないの。

ここまで奴ら、計算に入れてたら、一匹残らず駆逐してやる。」


嫌がらせではないだろうけどねぇ、とは思うが。

本人もわかってるだろうし。言わない。

とにかく、彼女1人でやらせると色彩が黒一色になってしまう。

それを知るくらいには関わりが深くなったものだから、手伝っている訳で。


彼女の節約癖と人間不信が作業を倍にしているのも原因か。

意識高いのは悪い事じゃない。


うん。こっち? 残業増えるの?

いや、聞こえてなかった。大丈夫だろ。


本日の課題を6割ほど消費できたので、主人公は外を眺めた。


午前中は、食品関連の情報誌とにらめっこ。

彼女にストレスが溜まるのもわかる。

ましてや、今日のみに留まってないし。


微笑を浮かべながらこの空気を楽しんでいると、ふと淡い黄色の少年が歩いているのが目に留まった。

悲しそうな顔をした男の子だ。


あまり関心を寄越さないとよく言われる、彼が見ても、同情を誘える。そのくらい表情が酷くて。

夏はまだ続くというのに、すでに打ち負かされた。

そんな感じ。


彼女もなんの気まぐれか、リーダーの目線を追っていた。

彼女は、座席代の代わりのジュースで喉を潤しながら。


黄色のシャツ(せなか)にはこうプリントされている。


I'm sleepy .


「最強だな、あれは」


少年は、正面にて同情(混沌)を誘い、背中にて語っているのだ。

要するに、周囲の人間の感情をさらなる混沌へと導いていた。


目と鼻の先で、喉を鳴らした彼女も発見してたらしく。

吹き出した。


リーダーが目線を再び戻すときには、テーブルに散って役目を終えたジュースをティシュで拭き取っていた。

銃槍を生やしたプリントにも及んだ。


「ああ、もう、書き直し!」


どうせ後で書き直せさせたよ、とリーダーは心の中で呟いた。



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