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夢のまた夢  作者: 砂糖人形
4/5

平凡な日々

私の明晰夢を起こす条件には二つある。一つは強いイメージが必要であること、最後は眠りにつくまでの間、そのイメージを想像し続けることだ。こうすることによって明晰夢が起こり、私は夢の中での自由を得る。

しかし、これはいつも都合良く発動するわけでもない。例えば強いイメージでないものを想像し続けても夢の中でボヤけてしまったり、ホラー系の映画なんか見てしまった日にはどうなることか…

だから私は明晰夢が使えることを知ったその日からホラー系の映画は見ないようにしている。何故ならテレビの中の出来事が実体験のようになるのだから…


私が明晰夢を出来ることを知ったキッカケがホラー映画だとはまだ誰にも公表していない。



〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜〜


部室に着いた私達はいつものように自分の席に座り図書室から借りている本を読んでいた。私が今日読むのはよくある青春をテーマとした本である。何故、私がそんなものを読むのかと思うだろう。それは私がまだ青春というものを感じたことがないからだ… 例えば、恋とか……

話を戻そう。

部活時間は平日の大体午後4時から6時までの間で休日は部活は無い。図書室の司書さんからは私達専用の部室用の鍵が渡されていて、学校が開いていればいつでも部室が使えるようになっている。


本を読んでいる時間は基本、お互いに話しかけたりはしない。そのため、時間はあっという間に過ぎていく。まるで時計の針にイタズラされたかのように。

時計を見ればもう5時半を過ぎていた。えりかはまだ本の中だ。私はえりかの邪魔をしないようにそっと部室から出てトイレに向かおうと部室を出てドアを閉じた。


だが、私のすぐ隣にはここにいるはずのない人物と私は出会った…


カリヤくんだ。


生徒会室と図書室は別棟にありほぼ正反対に位置している。また、生徒会が図書室に来ることなんて知らされてもいないし今までだって一度もきたことがない。ましてや、生徒会長のカリヤくんが来ることなんて思いもよらなかった。


「うわっ!!」

私は思わず大きな声をあげてしまった。カリヤくんも驚いていたが声をあげたのは私だけだった。その声に気づいたえりかが不機嫌そうに部室から顔を覗かせた。

「どうしたんだよ、ゆい。幽霊でも見たか?」

「え、えっと、カ、カリヤくんが…」

そういうとえりかはカリヤくんの方を一度見て

「幽霊を見ちゃったんだね、可哀想に。大丈夫、もう怖くないよ」

「は、えっ、そ、そうじゃなくて、」

「酷いなえりかは…」

カリヤくんは苦笑しながらそう言った。

対してえりかは読書中だったため少し不機嫌であった。

「で、生徒会長が何か用?」

「まあ、ちょっとした野暮用があってね。いくつか調べたい事があってそのことに関する本が何処にあるのか聞こうと思ってたんだよ」

「そ、生徒会長なら部下の一人や二人、使えばいいのに…

あっ、それなら私なんかよりゆいの方が本の場所を知ってるわ、ねー、ゆ・い」

素敵な笑顔で私の方を向いている。多分、面倒事になるだろうと思い、私に押し付けるつもりだろう。

「えっ、あ、うん」

ついついいつもの癖でえりかにのせられてしまった。まあ、カリヤくんと二人っきりで話すことなんて今までで一度も無かったし、もしかしたら次二人っきりで会う時は無いかもしれない。そんな事を考えていると

「あの、ゆい?」

「あ、ごめんね」

そう言ってカリヤくんと私は図書室の中へと入って行った。


他愛もない世間話をしながら本を探していた。緊張していたのだろうか、読書していた時より時間は長く長く感じた。だが、カリヤくんが探していた本はすんなり見つけけられなかった。私的にはもう少しカリヤくんとうまく話せていたらなぁ〜と意識は別の方に行っていたせいもあるのかもしれない…。気づけばもう6時を過ぎていた。


「ごめんね、見つけられなくて…」

「いや、図書室に来るのが遅かった僕の方に非はあるよ、また明日来るけどいいかな?」

それを聞いて私は少し嬉しかった。

「うん、」

対してえりかは面白そうにこっちを見ていた。


玄関先にはいつもの声が聞こえてきた。

「おーい、早く帰ろーぜー!」

サッカー部のシンは大抵、片付けをサボる。そのため私達が帰るのを待っている事が多い。

「今日もまたサボり?」

「おう!」

堂々と言うその姿にみんな呆れ顔になってしまう。シンは一応、サッカー部のエースだ。

「シン、エースがそんなんで大丈夫?今度の大会」

ナイス、カリヤくん!とつい言ってしまいそうになるのを私は堪えた。

「平気平気、俺が抜けたところで変わりはしないし、それに先輩だって俺が抜けたって咎めないしね」

サッカー部の上下関係は実力によって決まっているようだ。


「ただあんたがハブられてるのに気づいていないだけなんじゃないの」とえりかは毒突く。

「ひっでーな、えりかは」

「だって、サッカー部の面子で帰ればいいのにわざわざ私達と帰るのに待ってなくても……

あっ、なるほどね」

あー、またえりかが勘付いたらしい。


「で、誰が好きなの?」

えりかはいきなり核心についてきた。

それにはえりか以外の全員が驚いた。


「そ、そんなのいるわけないだろ!!」

シンは反論してるがその真っ赤な顔を見れば一目瞭然であった。


「まあ、シンをからかうのはこれくらいにして帰りましょ」

えりかは満足そうにそう言って、私達は帰路についた。

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