第二章4 護衛作戦発動
「え? ハンターなのに病院初めてなんですか?」
と、ルシェルは俺たち二人に対して驚きの声を漏らした。
「いやほら、俺は怪我をする機会がないしジャンヌは頑丈だから」
「驚きました……。二人ともやっぱりお強いんですね」
まさかルシェルに世間話感覚で「俺ここ来るの初めてなんだよ~」とか言ったらここまで感心されるとは思っておらず、俺とジャンヌは顔を見合わせていた。
実際病院の中はハンターと思われる人がちらほらと見受けられた。
そこで俺は確かに病院に来たことなかったのはおかしいなと改めて感じた。病院は言って見れば回復施設である。冒険RPGをプレイしている時などで回復施設を使わずにプレイするというのはよっぽどの縛りプレイをしていない限りはないだろう。
それを俺たちは一月も通うことなく依頼を全うしていたのだから確かに異常と言えば異常である。
「さて、受付付近で待っているという話だったがどこにいるかな?」
「もしかしてあれですか?」
俺は病院の中に入ると早速レオルドの姿を探し始めた。すると受付近くの休憩所で椅子に座っているのをジャンヌが見つけた。
俺達は顔を見合わせるとレオルドに声を掛けた。
「レオルドさん。ジャンヌとタクロウ着きました」
「ん? おお、待っていました! ん? そちらの方は……」
レオルドは俺達を確認すると険しかった表情をやわらげて立ち上がった。するとルシェルがいることに気が付き、俺に質問してきた。
「今回の依頼に協力してくれることになったルシェルだ」
「よ、よろしくお願いします」
「ふむ、人数は確かに多いほうがいいな。では案内するのでついて来てほしい」
レオルドは早速娘のいると思われる病室を目指して歩き始めた。
……ちなみにルシェルは現在臨時でパーティーに加わることになっているが正式加入はしばらく見送ることになった。色々理由はあるが、一番の理由は俺との相性問題であった。俺は能力の関係上後方にいることが多くなるため、前衛の危険が高くなる。そのためルシェルに前衛を張れるだけの能力があるかを一度見ておく必要があるのだ。
「タクロウ、これから訊ねる人物はどのような人なのですか?」
「あのレオルドの娘さんで、結構な美人さんだ。何やら事情有のようだけどな」
ジャンヌは初対面となるため詳細に教えておこうと思ったが、俺もよく知らないのでこの程度のもうすでに分かっていることしか教えることが出来なかった。情けないぞ俺。
「……タクロウの好みでしたか?」
「(ストーカーに付きまとわれていなければ)好みであるとはいえるか、な?」
「……しょぼーん」
どうやら俺はまた言葉を間違ったようだ。どうもこの主語が抜ける癖が治らない。この癖のせいであらぬ誤解を生みだして学生時代は酷い目に合った。気を付けよう。
「……タクロウは鬼畜ですね」
何故かジャンヌもお怒りだった。
……あの短い返答の中にこれだけ怒られる要因があったというのか? 俺にはわからない。だって俺バカだし。
と、どうもかみ合わない会話をしているといつの間にか病室に着いたようでレオルドが中で誰かと会話をしていた。
「失礼します」
俺は恐る恐る中を確認しながら入室した。ミアという少女は個室の病室の窓に近い位置に置かれている布団に座ってこちらを出迎えてくれていた。
「……」
「……元気そう、だね」
無言になられると辛い。何を言えばいいか分からない。俺女の子に気の利いた言葉掛けられない……。
「……タクロウだっけ? 覚えてるよ。意識朦朧としていたけど覚えてる。助けてくれてありがとね」
俺がしどろもどろになっているとミアはそのお淑やかそうな見かけに反してやけにフランクな口調でにっこりと笑った。
「え? 覚えてるの? あの状況下で意識あったの? ご、ごめん! 一声かけてから能力使うべきだった!」
俺はそこでレオルドが気絶したのを思い出し、ミアを炎で包み込んだときに怖い思いをさせたのではないかと思って申し訳ない気持ちになった。意識がないと思って確認もせずに能力を使ったのは軽率であった。
「あの時は驚く余裕もなかったから大丈夫。炎の力を使えるんだよね? それで守ってくれたの?」
「……」
俺は無言で頷いた。
するとミアは少し考え込んだ後、レオルドの方を見た。
「お父さん、私護衛受けてもらうよ」
「大丈夫か? 無理してないか?」
「うん。あの人なら安心できるから……」
レオルドはミアを心配そう気遣った。
……どうやら何かストーカー以外にも問題を抱えているようであった。二人の会話に疑問を覚えたのか、ジャンヌはレオルドに質問した。
「あの、何かあるんですか?」
「あ、いや……。実は娘、対人恐怖症でして、私以外とはなかなか会話することが出来ないんです。それもこれもあの卑劣なストーカー男のせいで……」
レオルドはそう言うと眉間にしわを寄せて唇を噛み、悔しそうに拳を握りしめた。
「……ストーカー男のせいで対人恐怖症になったのか。じゃあ、わざわざこの病院に来てくれって言ったのはミアが俺達を拒絶するかどうかを見るため?」
「ああ。あらかじめミアから話を聞いて、タクロウ君なら大丈夫と言われていたから君を指名したんだ。でもやっぱり実際に会ってみないと分からなくてな……、面倒をかけたね」
「いえ、それはいいんですが……。それが本当だとすればそのストーカー、許せないですね」
レオルドは俺の言葉に力強く頷いた。対人恐怖症になるほどのトラウマを植え付けたそのストーカー、何としても捕まえなければいけないようだ。
「あ、でも、ミアはなんで俺なら大丈夫なんだ? 助けたから?」
「違うよ。……あなたの炎、とても心地が良かったから。変かもしれないけどそう感じたの。あの男が使った炎は怖かったのに、あなたの炎は優しかったから」
――まあ俺の能力の隠された力が作用したと勝手に解釈することにするか。
俺は深く考えることを放棄した。ミアが大丈夫と言っているのだから問題ないだろう!
「分かった。改めてよろしく頼むよ。俺たちは全力でお前を守るよ」
その言葉にレオルドとミアはホッとしたようで緊張した表情を崩した。
今回は今まで経験のない対人戦があるかもしれない。気を引き締めなければいけないと俺は気合を入れた。




