表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
71/74

5-6 若者たち-2

 リリィと、アタシ。二人は、マアリを共に見据えている。

 倒すべき、殺すべき相手として。

 アタシ達二人の視線を受けて、マアリは溜息をついた。


 「リリィ……キミねぇ。どーゆうことなんだよ。あの時はあたしに味方してくれたじゃないか。その隣にいる春野花子と殺し合いすらしてくれたじゃないか。何で今更。あたしに下半身をふっ飛ばされて、んでもってその隣の春野花子にぶっ刺されて、ゴミのように投げ捨てられて……そこから立ち直ってまで春野花子の味方をするって……いや、まったく。白状するとキミのことがさっぱりわからないよ、リリィ。」


 その言葉に対して、少しだけ考え込むリリィ。


 「確かに……私は、確かにアンタに同情して、アンタの力になろうと思っていた。だからこそ、花ちゃんと殺し合った。全てを賭けて、ね。そしてその、全てを賭けた戦いで、私は負けた。死んだのよ。その前も地球人の頃に一回死んでるけど。まぁ、その時の意味わからない内の出来事とはワケが違う。私の命も思想も全てを賭けて挑んだ戦いで、死んだ。私はその時、満足してたのよ。全部出し切ったと。もう悔いは無いと」

 「……そういう事なら、やはり、リリィ。あたしがキミを生き返らせたのは、キミにとって本当に余計だったということか」

 「……悪いわね。頼ってもらったっていうのに。でもね、そうよ。余計だったわ。私は、あの戦いに負けて、死んで、この世界から完全に退場した。それで良かった……」

 「・・・・・・・・・・・・」

 「まぁ、今ここに立っているのは、アンタに生き返らされて、そんでもってアンタと花ちゃんの戦いを見て、黙ってられなくなったから。私はね、いくら生き返ったって言ったって、また花ちゃんと殺し合うなんてゴメンよ。その話は終わったの。あの戦いが終わって、私にとって花ちゃんは、『大切な友達』に戻ったのよ。だから、前と同じように、助けたいと思ったし、思ってるの」

 「……全く……本当に余計なことをしてしまったんだな、アタシは。あの戦いが終わったら、元の関係に戻るなんて……全く予想がつかなかった……」


 ふぅー、とため息をつきながらマアリは空を仰いだ。


 「……それで?だからと言ってどうするつもりだい、リリィ。確かに、あたしの力は無限では無いかも知れない。でも、“蜜”の力を一番上手く扱えるのはあたしだ、という事は変わらない。キミ達が二人がかりになったところで、結果は変わらない。勝つのは、結局あたしだ」

 

 そうだ……マアリがとてつもなく強いのは間違いない。確かに、リリィがアタシの味方になってくれてもまだ厳しいのはわかる。だけど……


 「それでも、アタシはまた戦えるようになったぞ、マアリ」

 「……ふん。それが、どうした……確かに、キミを騙して追い詰めようとしたのは事実。だけどそれなら、正攻法で叩き潰してあげよう」

 「そうよ、花ちゃん。勝ち目は確かにある。だけど、私達二人とマアリの力の差はまだ圧倒的。この差を埋めるためには、決定的な一手がいる。……私に、アイデアがある。それに乗って、花ちゃん」


 リリィがそう言うと、リリィの手のあたりの空間が歪み、そこから何かが出てきた。

 

 「……ソレは?」

 「私の新しい武器みたいね。ブーメラン、かな。うん、私に似合ってるかも」


 なんで似合ってるのかはよくわからないが、それは確かにブーメラン、らしい。

 アタシのように真っ黒い炎に包まれた、真っ黒いブーメランだった。


 「今の花ちゃんに似てるわね。何だか照れ臭いわ」

 「……今更って感じだよ。『大切な友達』なんて今まで言われたこと無かったよ?」

 「……私ね、ずっと花ちゃんに憧れてたの。高校時代、花ちゃんが不良グループを追い払っちゃったの、覚えてる?あの頃から、ずっと」

 「……ごめん、覚えてない」

 「でしょうねぇ。花ちゃんにとってはどーでもいいことだったみたいだし……」

 「……アタシは、リリィとあの『アドベンチャー&トレジャー』であの変なコーナー探してた頃から、特別に思ってたよ、リリィのこと。だってあそこ、アタシ達二人で来た時だけ見つかったんだよ?凄い、特別な場所なんだって、リリィとアタシだけの特別な場所なんだって、凄いワクワクして、だからリリィとはずっと一緒にいようって……」

 「……あのさぁ。キミ達二人がなんやかんやでラブラブなのはわかったから、そろそろあたしのこと無視しないでくれないかな。それとも空気読まずに攻撃していいかい?」


 「「……すいませんでした」」

 

 アタシ達二人は素直に謝った。うむ。そんな場合じゃないっすよね。


 

 「作戦はこうよ、花ちゃん。このブーメランを私が思いっきりマアリに向かって投げる。それが当たって、マアリがひるんだ隙に、花ちゃんがその大鎌で今度こそぶった斬る。以上」

 「え、えー……」

 

 適当過ぎるだろうよ……


 「勘違いしないで。『思いっきり』っていうのはね、ここでは『命を賭けて』っていうことよ」

 「……え……?」

 「どうせ本来死んでいる命。本来は余計なのよ、私のこんな出番はね……だから、この一撃に命を、全てを賭ける。絶対に、マアリの隙を作ってみせる。だから、そこを逃さないでよね、花ちゃん」

 「・・・・・・・・・・・・」

 

 リリィはあくまで、あの戦いの結果、「死んでいる」というのを大切にするらしい。

 ――そうだ、こんなの本当はおかしいんだ。それがちょっと間違いが起こっているだけ。

 だからこそ、ただの一回だけ……アタシに力を貸す「だけ」にしているんだ。

 ……その命に賭けて。


 「あのさぁ、作戦、まる聞こえなんだけど、リリィ。それがわかっていて、あたしがそんなんに当たってあげると思う?というか、当たっても意味があると思っているのかい?」

 

 その挑発に、一切動じないで、リリィは向き合った。

 

 「――えぇ、思うわ。アンタの死ぬ光景を、私はこの命を、全てを賭けて実現して見せる」 


 これ以上ない、固い意志を感じさせる言葉だった。


 「あぁ、あぁ!そうかい、なら、やってみせろよ、リリィ!このアタシに届いて見せろ……!!」


 リリィの一撃を迎えるように手を広げるマアリ。

 

 今からの一撃に全てを賭ける心構えをするリリィ。


 

 アタシは、逃しちゃいけない。

 リリィが作る、マアリのその隙を。

 信じる。絶対に疑わない。



 リリィは、アタシが勝つ道を切り開いてくれる。絶対に。



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ