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5-4 Hammmmer-3

 「……嘘、だよ……」


 マアリは完全に呆然自失の状態だった。

 

 「リリィは……アタシを助けようとしてくれたんだ。そのリリィの覚悟を……アタシが貶めた?そんな、そんな……」

 

 さてと。

 ……そんなマアリの状態に頓着してる余裕は、こっちには無い。

 なんせこっから大仕事だからな。


 「まぁー全部アタシのソーゾーだよソーゾー。ホントに当たってたとしても、マアリ、わざとやったわけじゃねぇだろ?気にすんなよ。それに……」


 アタシはチラ、と先ほど投げ捨てたリリィを一瞥した。 


 「“蜜”はアンタが一番ご存じの通り、とんでもねーご都合パワーさ。リリィ自身がまだ終われねーって思ってたらあの状態からでもひょっこり復活するかもよ?だからそー悲観すんなよ。だから……始めるぞー」

 「……始めるって、何を」


 「わからんのか。まぁショックのあまりやる気無くしたってんならそれはそれでいいけど?アンタ、地球人を絶滅させたいんじゃないの?……そのためには、まずアタシを殺さなきゃいけないんじゃないの?」

 

 ――その言葉がスイッチになったように、マアリの目が鋭くなった。


 「そうか。春野、花子……お前、お前ぇぇぇ……」

 「……ヤル気になったかい?」

 

 うわーやだなぁ。絶対クソ強いんだろうなぁ。


 「……おい、もう一つ聞く。春野花子。アンタはどう思った。リリィに地球人の汚点をたっぷりと見せられたんだろう?……それでも、お前は地球人の味方をするのか?」

 「ははは、地球人の味方かぁ……」


 それは、違うかも。


 「うーん、まぁアンタの考えも、実はアタシ、わかんなくもないのよねー。リリィが言ってたんだけど、『もういい』から滅ぼすっては、正直しっくり来てる。確かに生きる価値無いかもね、地球人。きっと、アタシ達は産まれてきちゃ駄目だったんだ。」


 うん、別にマアリの思想に特別反対してるわけじゃない。

  

 「……でもまぁ、それとは別に、アンタがちょい気に食わない。さっきみたいに、抵抗する手段も無い奴らをぶち殺してくれちゃって……殺してんだから、殺される覚悟くらいあんだろーなコラァ!って気持ちは無くは無いよ」


 まぁ、だけど、それ以上に。

 

 「いくら産まれてきちゃ駄目だったヤツらの中の一人だったとしても、アタシは産まれてきてしまった。このまま終わるのが気に食わないと思ってしまった。……アタシはね、『やりたいこと』をやってるだけなんだよ。“ゲーム”で戦いを知って、そのスリルで最高にテンションが上がって、『生きてて良かった』なんて本気で思ったんだ。あの感覚を、出来る限り味わいたいんだ。人生を幸せに生きたいんだ。だからこそ、命を懸けて、粗末にして、燃やしている。……そう、今もだ。アンタに挑む理由はソレだ。アタシの人生の為だけに、アタシ自身の為だけに。……アタシの青春の為に。アンタに喧嘩売ってるんだよ、マアリ。これが、一番の理由だ。まぁ、それ以外はぜーんぶ後付けって考えてくれても良いよ」



 きっと、アタシ達地球人は失敗した。

 

 取返しがつかないんだよ。失敗したら、本当は駄目なんだ、許されないんだ。

 

 失敗しちゃ駄目だ。失敗したらお終いなんだ。失敗したら、許されることはもう無いんだ。本来。

 

 それでも、アタシも、アタシ達も、失敗する。

 

 取返しがつかなくなる。

 

 それでも世界は回る。

 

 それでもアタシ達は生き続ける。

 

 ……それに耐え切れないヤツだって出てくる。

 

 アタシも、もしかしたら耐え切れなくなったヤツと紙一重だったかも知れない。


 だけど、生きている。


 このまま終わりたくは無いんだ。

 

 それで、どうなりたいか、なんていうと、よくわからないけれど。


 多分、結局、青春がしたいんだ。幸せになりたいんだ。


 それには、命を賭けて、粗末にして、燃やすことが必要なんだ――




 「・・・・・・・・・・・・」



 しばらく、マアリが沈黙した。アタシの言葉を噛みしめるように。

 そして、当然の結果として。



 「……ふざけてるのか?お前」



 ――圧倒的な殺気を込めた言葉を投げつけられた。



 「人生を幸せに生きるため?お前が?お前一人が?――この惑星の人間の命運がその肩にかかっている、というのに、お前はあくまでお前の為だけにあたしに挑むっていうのか?」



 ――ギリギリと空気が張り詰めていく感覚。



 「なんだ、ソレは。なんて自己中心的で、最低な理由なんだ……!!そして何故!!そんな最低のお前が!!よりによってお前が!!あたしの前に立つ地球人最後の希望だって言うのか……!!」



 ――そこまで言うと、急にタガが外れたように笑い出した。



 「っハッ!はヒは、ハハ、ハハはハハはハハハハハっ!!!ハハ、殺す!!春野花子、お前は絶対に殺シテヤルぞ、ハはハハは!!!コんな!!はハ、こンな馬鹿なヤツに!!イカレタヤツに!!負けてたマるか、ひゃは、殺サレテたまルかギゃッハハははははッッッ!!!」



 気の違ったような笑いと共に、マアリが突進してくる。

 


 ――ついに始まる。



 「来いよ、マアリ。最終決戦ってヤツだ……!!」


 アタシ達を断罪するというのなら、やってみせろ。

 ただし、抵抗はするけどな?それはしょうがないじゃないか、殺されそうになってるんだから、殺し返すしかない。

 ――そう、アタシの口角は、ニヤリ、と吊り上がった。

 これが、これこそが、アタシの幸せだ。「やりたいこと」だ。

 戦おう。命を、賭けて、粗末にして、燃やそう。



 それが、アタシの「青春」なんだから――


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