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5-2 《!マアリ!-1》

 ―――あたしの母星、キブカ星の大きさは奇しくもこの地球と同じ程度。だが、他の惑星には無い特徴を持っている。それは、「その移動を自由に行える」ことと、「視覚的に認識されなくなる」の二つだ。

 だから、惑星というよりは巨大な宇宙船と呼んだ方が、説明するとしたらわかりやすいかもしれない。


 この星の中心部分にこの星の移動能力を司る「コア」があって、この星のトップ、「キブカ王」によってそれはコントロールされる。

 

 「キブカ惑星調査隊」は「キブカ王」直属の組織であり、有り体に言えばこの星のトップ集団である。

 その目的は、この宇宙に無限に広がる、他の惑星の調査。

 ……まぁ、この星は自由に動けるのだし、それを利用してこの宇宙の色んなトコを旅してみたーい、なんて感じだろう。

 当たり前だが宇宙は広く、そこに広がる惑星も膨大な数がある。好奇心が刺激されないワケが無い。

 それを見て回れるような手段があるのならば、存分に使いたくなっちゃうのが人の性では無いだろうか。


 各分野の専門家が集まる「キブカ惑星調査隊」は、自らの星を移動させながら、他の惑星を発見すると先行してその星に降り立ち、調査を行う。

 ……詳しい調査の方法等は、大量の不可視の飛行型の探査機を飛ばすことだ。その探査機はその惑星中を猛スピードで飛び回りながら、その惑星のデータを収集する。そのデータは、動画や画像の形でも確認することが出来る。

 ……キブカ星のテクノロジーは、この地球とは比べ物にならない。色々な惑星を探索、調査する内にその技術は加速的に高まっていった。

 まだまだ宇宙には我々の知らない惑星があるだろう。しかし、それを承知で敢えて言うが、キブカ星以上にいテクノロジーが進歩している惑星はそう無いだろう。

 

 ある程度の調査が終了し、キブカ王の許可が下りれば、「キブカ惑星調査隊」以外の一般のキブカ星人達も自由に降り立って、その知的好奇心を満たすことができる。

 地球に関しても、調査が終了し、あとはキブカ王の許可が下りれば一般人の自由な惑星訪問ができる、という段階に入っていた。

 しかし。この地球に関しては、キブカ王はその許可を出すのに戸惑っていた。それは、「キブカ惑星調査隊」のメンバーとしても同じだった。

 

 この「地球」という惑星は何かがおかしい―――

 

 調査結果を検討する緊急会議が行われることになった。




 「―――どう思う、テックヴェ総隊長」

 

 キブカ王が静かに問いかけた。

 一応注釈しておこう。あたし達は地球人の使うよな「言葉」を使った不完全なコミュニケーションは殆ど行わない。

 「伝えたいことをそのまま伝える」そういう技術がある。

 語るに当たって、とりあえず言葉を使っているように表現するが……実際とは異なることを理解して欲しい。


 「どう、とおっしゃられましてもなぁ……テクノロジーは我々の遥か下の基準、それ以外の超自然的な能力を持つ者もそう多くなく……例え戦争になっても簡単に勝利できますが。まぁそういう問題ではありませんな、コレは。何と言いますかー……そのー……えー……得体が知れませんな、としか」


いつも飄々とした態度を崩さないキブカ惑星調査隊のトップを務める男、テックヴェ総隊長は、珍しく歯切れの悪い返答をするしかなかった。


 「総隊長!そんな悠長な事を言っている場合ですか!?あの「地球」という惑星の人間達の思想は非常に危険です!確かに今はまだ彼らは我々のように自由に他惑星に行けるような技術はありません。ですが!『今はまだ』等ど言う言葉が我々にとって信用できない言葉であることはお分かりでしょう!例えば―――」


 例を挙げ始めたのは副隊長の女性、ネク氏だ。


 そう、例えば……

 偶然未知のエネルギーを見つけ、技術革命を起きたらどうする。

 偶然強力な超自然的な能力をもった者が生まれたらどうする。

 偶然我々以外の地は球外の生命体によって高いテクノロジーや能力を地球人に授けられたらどうする。


 こんな「革命」といえる例を極端に思う人はいるだろうか?

 ……少なくとも、あたし達のように様々な惑星を探索するような立場であれば、あり得ないと切って捨てられるものではない。


 実際そういうことがあった、と知ることもあれば、ちょうどその「革命」の居合わせたことすらある。

 

 初めて訪れた惑星が、半年程したら原始的な生活からあたし達のような高いテクノロジーとともにある生活へ変容していた、なんて話は、割とよくある。

 こんな話もあった。炎に包まれていた惑星が一夜にして氷漬けになった。

 炎に耐性を持ち、それ故にそこで生きることのできた人達が急激な環境の変化に耐え切れず皆死んでいった瞬間を目撃したことだってある。


 この広い宇宙には、無限の可能性がある。良くも、悪くも。


 「明日には地球人たちは他の惑星に行く技術を手に入れてしまうかも知れない……!そうなったら大変な被害が……」

 「待った待ったネークさーん。理論の過程がぶっとんでるよー。なんで地球人が他の惑星に行ったら大変!って感じになっちゃうのかってのがすっぽり抜けてるから。ちゃんと確認しよ?」


 議論に熱くなったネク氏を抑えたのはこの調査隊の隊員の一人、インダ氏だ。一見彼女は軽薄そうに見えるかも知れないが、こうして話しがねじれてしまいそうになった時にうまくやんわりストップをかける。

 視野が広い、ってやつだろうか。優秀な人だと思う。


 「……すみません、インダ……」

 「じゃ、その確認は僕がしても良いですか?」


 あたしの隣に座っていたアラバが名乗りを挙げる。彼も調査隊の隊員で……あたしの、恋人でもある。いやーん今日も超かっこいいー。

 ……いや本当に。

 うーん、あたしに恋人がいる、なんて地球人達が聞いたら意外に思ったりすんのかな?

 こう見えて付き合い始めて10年。結婚だって考えている。ラブラブよラブラブ。


 「アラバ君。任せた」

 「はい、総隊長。彼ら「地球人」が危険な理由。それは多々あります。同じ星に住む者同士で騙し合い、見下し合い、争い合い、殺し合っています。それだけなら、我々が見てきた他の惑星ではもっと酷い星もあった、とも言えなくは無いですが、地球人達は、実情を見ずに『それでも世界は素晴らしい』と考えている者の比率が、同じような状況のの星の人間達と比べて、高いです。まぁこれについては国や地域によって様々ですが……」

 

 そう。本当は地獄のような星に住んでいるというのに、それを正しく認識できている比率が少ないのだ。何だったら、『ここは地獄だ!最低だ!最悪だ!」と言おうものなら、

 

 「イタい」と嘲られたり。

 「根性無し」と詰られたり。

 「そんなことないよ」と無責任に慰める。


 そんな、地獄でもそこまで無慈悲ではないだろう、と思えるような状況にある国や地域も地球には存在している。そんな所で生きている者にとっては「現実を見る」、なんて不可能だろう。



 ―――さて、地球人の問題はまだまだ山積みだ。アラバはさらに地球人の危険性について語るだろう。

 


 ちなみに。この頃のあたしは今と違って理想に燃えるアツい女だったのだ。

 アラバの話を聞きながら、「それでもあたしは地球を滅ぼすべきでは無いと思います!一つの星を滅ぼすのは、どうしようもない悲劇です!あたしがそうしなくても良いようにします!」と主張する心構えができていた。


 

 ……嗚呼、変わってしまったなぁ、あたし。全く。やれやれだねぇ。



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