4-9 《?死神?-2》
「・・・・・・・・・・・・」
それは、作業的なイメージさえ浮かんでくる光景だった。
花ちゃんが襲い掛かってくる。
アタシはそれを向かい打つ。この大きな針で貫く。
真っ黄色い“蜜”が吹き出し、舞う。
―――そして。
また花ちゃんはまた立ち上がってくる。
あの黒いボロ布に包まれながら、自分に自分で死に至る毒入りの針を叩き込んで、そしてそれを乗り越えて。
また向かってくる。突き刺す。
……また向かってくる。また突き刺す。
まだ向かってくる。突き貫く。
……まだ向かってくる。また突き貫く。
まだまだ向かってくる。会心の突きを心臓に突き刺してやる。
……まだまだ向かってくる。また会心の突きを心臓に突き刺してやる。
しかし。それでも、まだ、またもや、性懲りもなく、飽きもせず。
まだ。まだまだ。まだまだまだ。
まだまだまだまだまだまだまだ…………―――!!!
ベルトコンベアで流れる部品を処理するような作業を繰り返す。
その度に心がざわめいてくる。
いや、それはきっと気のせいだ。
アタシの力は「無限」だ。
何の問題も無い。
幾らでも向かってくるなら、それを幾らでも打ち砕くまでだ。
「何……?」
立ち上がる度に花ちゃんの体には骨だけの部分が増えていく。
「何だってのよ……?」
立ち上がる度に花ちゃんの体の骨だけの部分の黒い炎は勢いを増す。
「何でそこまで……?」
もうその顔すらほとんど骨だけになっていた。
「ふざけんなふざけんなふざけんな!!もういい加減にしろ!!諦めろ諦めろ諦めろ、お前は!!私より!!弱いんだ!!!」
自分でも全く分からなくなっていた。何故こんな必死なんだ。“蜜”は「無限」の力だ。そんな力をもっているんだ、自分さえしっかりしていればいいんだ。
相手がどれだけしぶとくとも、それをこの「無限」の力で超えればいいだけの筈だ……!
「―――――――――!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!」
まさか自分の喉からこんな声が出るとは思わなかった。形容不可能な絶叫と共に。アタシは大きな針を大量に増殖させ、それをマシンガンの様に発射し、殆ど骨だけになった花ちゃんの体を無茶苦茶に串刺しにした。
「っ……はは。ははははははははははは!!!」
笑いだしてしまう。
だってそうだろう。それでもまた、あの黒いボロ布に包まれた後、同じように立ち上がるのだから。
アタシはまたも絶叫と共に花ちゃんに向けて先ほどの大きな針を連射した。
さっきよりもずっと強く。
……しかし、どうやら作業は終わったようだ。
ソレはベルトコンベアから流れてきたとびっきりの異物と化していた。
ソレは手にした大鎌で全ての針を叩き落していた。
叩き落された針には、いまソレが纏っていた黒い炎が燃え移っていた。
そして、その炎に焼き尽くされて、針は消えた。
その光景に、アタシは完全にキレた。
「『無限』の力があるんだ、私には!負けるわけない、殺されるわけない、死ぬわけない!!例え……花ちゃん……!アンタも『無限』に至ったとしてもだァァァァァッッッ!!!!!」
もう滅茶苦茶に攻撃した。大きな針を生み出してひたすらに突き刺そうとした。
躱された。受け流された。捌かれた。
当たった。だが黒い炎に燃やし尽くされた。
今アタシの前に立っていたのは。
黒いボロ布を纏い、
岩を切り出して作られたような大鎌を持った、
真っ黒い炎に包まれた骸骨だった。
「死神」
それにこれ以上なく相応しいその姿をしたソレ……ソレが、今の春野花子だった。
―――いつしか、アタシは素手でソイツをぶん殴っていた。思い切り蹴りつけていた。
いつの間にか、あの針を出せなくなっていた。
それに気づき、ふと我に返る。
「……なんで?」
「……ガス欠じゃね?『無限』じゃなかったぽいな、ソレ。……いや、他に原因があったりすんのかね。わかんねーよなぁー……こんなデタラメパワーの事なんてさ」
声がした。目の前の骸骨から。そうなる前と同じような口調だったのが、気色悪かった。
「まぁ、そんじゃ。こっちの番だ。」
そう何でもないように宣言された。
“真価の闘技場”のそこら中に散らばっていた大鎌達が一斉に動きだし、上空に飛んで行った。
そしてそれらは、一つに固まっていって、巨大な球状の物体になった。
それを構成する大鎌達は全て黒い炎に包まれていた。
だから、ソレは、太陽に見えた。
全てを切り刻み、焼き尽くす、黒い太陽だった。




