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4-7 泥水のメロディー-1

 「似非紳士淑女のオマエラ!久しぶりだなぁオイ!まぁ1ヶ月くらいの話だけどよ!俺はもー待ちくたびれちまったぜぇ!ラスト“ゲーム”の始まりだァァァッッ!!!」

 

 実況のマイクンが声を張り上げるのが、地球人代表者側の入場口の扉の前で聞こえてくる。


 「オレはもー溜まりに溜まっちまったぜ!この1ヶ月……全然声張る機会無かったんでなぁ!今日はその分ぶちかましてやるから覚悟しとけよぉッ!!!」

 「ウオオオオオーーーーーーーーーッッッ!!!」


 歓声が実況に応えて轟く。

 あの異形の観客達も今日を待ちわびていたらしい。テンションは上々。

 今日の決戦に相応しい。


 「オマエラも知っている通り!“ゲーム”は本来中止されている!だが!だが!だがぁ!!他ならぬリリィがこの“ゲーム”を認めているんだよ!今日のリリィの相手は、彼女にとっても特別な存在だ……きっちりそいつの“ゲーム”を“ゲーム”として終わらせてやりてぇ……そういう計らいってことだ!」

 

 ザワ……ザワ……しだす観客達。


 「ワカルかい、このオス猿メス豚ドモォ!コイツはなぁ、『因縁の対決』ってやつだ!!!特別なんだ!スペシャル極まりねぇ最高にクレイジーな戦いだってぇ話だァ!!!……オイ、テメェら、そんなんでイイのかァ!?このぶっ飛んだ戦いを迎えるのにそんな白けたテンションでイイのかい!?」

 

 「オラ、もっと声張ってみな!もっと狂ってみな!!もっともっとぶっ壊れてみな!!!最後だ、ラストだ、際限なく果てなく限りなく!楽しんでいきやがれクソッタレどもォォォォォォォォォォッッッ!!!!!」

 

 今日のマイクンはマジだ。言ってるコトのテンションが高すぎて訳わからんが、まるでその命を全て賭けているような、鬼気迫る叫びを“真価の闘技場”に強烈に響かせ、観客達を興奮という大海に叩き込むようだった。


 歓声はまだ“ゲーム”が始まっていないのにも関わらず、ほとんど形容不可な程だ。叫んでいる。狂っている。壊れている。グチャグチャのカオスの極みの状況だ。


 「ああ、早く見たいみたいミタイィィィ!!さぁ、まずは我らが“戦士”側の入場だ!!!Cランクの“戦士”!しかし本来のヤツとは別のヤツが立候補してきやがった……そう!!!オレ達がみーんな知ってるアイツだ!今地球人を絶滅させようと大暴れかましてるアイツだ!!最早その戦闘力は天井知らず!!!Aランクなんて目じゃねぇぞ今回はなぁ……さぁ、その姿を見せてくれ!!!入場!!!」


 扉の向こうでさらに興奮が高まった。


 「マアリ姐さんの創った生命体の中でトップの戦闘能力を誇る女……最強の女王様!そう、そいつがこのリリィだァァァァァァァァァァァァ!!!!!」


 爆発でもしたのかという歓声が響き渡る。ビリビリと体にも響くくらいに。


 「地球人代表者共が束になってもアッサリ虐殺できる程になっちまったこのリリィ!!!最早オレにはこいつが倒れる光景がさっぱり思い浮かばねぇ……とんでもねぇ、なんて言葉じゃ足りねえぐらいトンデモネェ、対峙する者すべてを絶望に叩き落す最強最高最悪の“戦士”だァァァァァァァ!!!!!」


 言葉の限りを尽くしてその強さを叫ばれるリリィ。そして、それに挑むのは……


 「そして、あろうことかそのリリィに挑むのは!そのリリィが地球人だった時の親友だ……リリィはその親友だけを“ゲーム”にスカウトした……それを自ら殺しにいかなければならなくなったとは何たる皮肉かっ!!!」

 「……いや、悪い。そーゆー話じゃねーな、コレは。何がどーなろうがこれは“ゲーム”だ。勝つのか、死ぬのか?それだけだ……」

 「そうそいつは、そうだなぁ……初めて“蜜”を手に入れた時の戦いでは、『暴走』したまんまZランクの“戦士”に勝っちまった、なんて伝説を残した」

 「そこからは連戦連勝、“戦士”達を次々に虐殺して、怒涛の勢いで勝ち進んでいった。オマエラも覚えてるだろ?」

 

 「……だが、一つ問題が起きちまった。強すぎたんだ、そいつ。どんどん強くなっちまって、“戦士”達がまともに相手が出来なくなっちまった。この前なんてDランク戦を開始一秒でバッサリだ。盛り上がらねぇったらねーぜ」


 「だけど今日はそんな心配も無さそうだ。なんせ相手はリリィだ。……いいか、オマエラ。あの『死神』の本気が今日は見れる!奴が本気で戦う姿が見れる!!ヤツの『真価』がこの上なく見れるんだオマエラ分かってんのかァァァァァァァァ!!??」


 「視せろ!!!」

 「観せろ!!!」

 「魅せろ!!!」

 「みせろ!!!」

 「ミセロ!!!」

 「ミセロォ!!!!」

 「ミセロォォォォォッッッ!!!!!」


 「オウ、ワカッテルよーで何より!!!さぁ出てきな!!!入場!!!」


 アタシは大鎌を構え、黒のボロ布を纏った、「地球人代表者」としての姿になり、開いた扉の向こうに進み出て、その姿を“真価の闘技場”にいる全ての者の前に堂々と晒してやった。


 「これぞ狂戦士!これこそが『死神』!!!春野花子ダァァァァァァァッ!!!!!」


 またも爆発したような歓声がアタシを包んでいく。


 「おお、見ろよあの鎌!!!アレで“戦士”達の命をバッサバッサと刈り取っていきやがった!!!恐ろしい、オソロシイぜ花子チャン!!!しかもあの鎌増やせるは直接持ってなくても自在に動かせるわでやりたい放題だ!!!その能力をつかった必殺のフィニッシュムーブ、『無限廻葬(むげんかいそう)』っつー今だ誰にも破られたことの無い切り札までもってやがる、地球人代表者最後にして最強の一人!!!」

 

 「それが春野花子だ!!!だが今日の相手もまた絶望的な強敵だ……『死神』と『女王様』どっちが明日を迎えられるのか!!?ソレが、今!まさに今!!決まる!!!」


 ミセロミセロのコールがグチャグチャになって“真価の闘技場”に無秩序に響き渡る。


 アタシとリリィは自然と歩み寄って、目の前で対峙し合う。



 「……やはり、来てしまったのね。花ちゃん。仲間になっておけば死なずに、殺さずに済んだのに……!」


 リリィの言葉が開口一番それだったので、思わず吹き出してしまった。


 「何がおかしい……!」

 

 すると怒った調子で言葉を繋げてきた、アタシはさらに笑ってしまう。


 「っははは!リリィ、アンタ結局変わってねーじゃん。『異常な程普通』……ソレがアンタ。『どこにでもいるフツーな』ってヤツさ。どっかの主人公でもやってな!」

 「…………」

 「アンタアタシに隠してること、あるだろ?『飽きたから』なんて馬鹿みたいな誤魔化し方しやがって。騙されるわけねーだろ。でも、アンタが本気で地球人を絶滅させようとしてるってのは分かった。そんなスケールでけぇことやってる癖に理由がさっぱりわかんねぇってのは、正直堪えたよ、リリィ」

 「…………」

 「だからこそ、だ。ワケもわからずなぁなぁでアンタらの仲間になっちまうなんて、アタシにとっちゃ一番無い。『やりたいこと』なんかじゃねぇ。父さんが言ってたんだ、アタシ達はな、『やりたいことをやるしかない』んだよ。まぁそんなこと言って、『やりたいこと』をはっきり言えるかっていうとそうでも無いんだけど」

 「…………」

 「やっぱりその、『やりたいこと』の中にはな、アタシにも人並みに大切な家族がいるから、そこに胸張っていたいんだよ、地球人として……っていうのと、ワケわかんねーコト言ってるやってるテメーをぶっとばすやりたいってのが入ってるんだと思うんだよ」


 そこまで言うと、リリィはため息交じりに、


 「……私の“蜜”の力に対する認識は花ちゃんとはまったく違うものになってる。それは、絶望的な差よ。アタシをぶっとばす?……無理ね。戦いにはならないわ。『有限』と『無限』の埋められない差を見せてあげる」

 「ばぁか。知るかよんなこと。結局アタシ達は、『やりたいことをやるしかない』んだからな―――」



 

 「さぁ、そろそろ始めようじゃねーか。……これで、ラストだ。もう誰も止めはしねぇ。全部ミセテいきやがれ、その力を、『真価』を!!!……ラスト“ゲーム”だ!!!レディッ………………ファイッッッッッ!!!!!」


 

 戦いの火蓋が落ちる。“蜜”の力にアタシは命じる。

 あのクソッタレなリリィを、ぶちのめせ――――――



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