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4-2 革命にふさわしいファンファーレ-3

 どういう風に家に帰ったのかさっぱりわからない。

 気が付けば庭付き一軒家の素晴らしき我が家は目の前。ほんの少しだけ、その姿に安心する。



 しかし、家の中は異様な雰囲気で満たされていた。

 今日は休日。父も母もいつも通りそこにいた。

 しかし二人は呆然とテレビを眺めている。アタシが帰ってきたのにもまるで気付いていない。



 「リリィ、ちゃん……?」

 母が呟いた。父もリリィのことは知っている。腐れ縁らしく、家族の付き合いも多少はあったから。

 普段ほとんど動じることの無い父の顔に、今まで一度も見たことのない混乱の表情が浮かんでいる。


 そう、テレビにはリリィが映っていた。

 見慣れたニュース番組のセットと、お馴染みの出演者、そしてカメラの正面に立っているリリィが揃って真っ赤な血に塗れた映像がそこにあった。

 キブカ星人によるTVジャック、その二回目は、テキトーなマアリによる一回目とはまるで違う、異様な緊張感を持って行われていた。



 「……最初から話すわね、花ちゃん。落ち着いて、よく聞きなさい」

 「……うん」


 それは突然の出来事だった。

 我が家がいつも見ているニュース番組に突如乱入したリリィは、すぐさまそこの出演者達を皆殺しにし、カメラマンやプロデューサー等に放送を止めないよう脅迫した。

 そして、一度目のジャックの時に宣言した“ゲーム”の中止、そして現在の地球人代表者の殺害予告、そして代表者以外の地球人にすら無差別な殺害を行うことを宣言し、「地球人絶滅」を目標とする計画の実行を明らかにした。

 それは他のテレビ番組でも行われているらしく、突然の乱入、出演者の殺害、そして宣言……それが手当たり次第に行われていると言うのだ。

 リリィは本気だ。何度も確認したその事実が重い。


 「あれって、確かにリリィちゃんよね……なんだか変な恰好してるけど……」

 母があたしに問う。

 そういえば、アタシの家族にはリリィは洗脳を施しているのでは無かったか。

 ……それも、必要なくなった、ということか。事態は動いている。クソッタレな方向に。



 アタシは、質問に答えられずに、2階の自分の部屋に、逃げ出して、飛び込んで、鍵を閉めた。

 

 とりあえず、整理だ、頭を整理しなければ。

 そんな言い訳を頭の表面の薄っぺらいところで思いながら、ベットに入り、掛布団にくるまった。

 

 なんで?なんで?なんで?リリィ、なんで?

 

 


 ―――いつの間にか眠っていた。なんだか逃げていたような印象で、起きた時はまるで「夏休み最終になっても宿題がまだ終わってない」みたいな焦燥感を何十倍にもしたような思いを抱いた。


 怠け者のアタシの頭も、その焦燥感に引っ張られて回転し出した。 


 今もやってんのかな、リリィ。TVに出て、人間殺して……アタシと別れてすぐ行動を起こし始めたのかな。なんか置いて行かれた気分、なんて勝手なことを考えたり。



 ―――なんで?なんで?なんで?リリィ、なんで?


 その理由、クドイくらい先ほど説明してくれた、という印象もある。

 だけど、何かが引っかかる。


 さっき、世界を丸ごと見てきた。今それを言葉に直すことはできないけど。その感想としては、「クソッタレ」である。


 「まぁ気を落とさないでよ、世界はさっき花ちゃんが感じた程クソッタレじゃないよ。いいとこ、あるよ」


 そうリリィは言ったけど。アタシにはそうは思えなくなってて。

 リリィだって、今のアタシと同じ気分になっちゃったから、あんな風になっちゃったのか―――


 そこまで考えて、プツリ、と思考の糸が切れる。

 


 なんか、違う。

 クソッタレの、世界。それに考えを引っ張られ過ぎだ。


 そうだ、リリィ「自身」の考えってやつが、あの時のリリィの言葉には薄い。

 ……薄い、気がする。

 もう一度、昨日のリリィとの会話を反芻していた。

 

 なんだ、なんだろうか。リリィの凶行、その理由としてこれ以上な無い程もっともそうな理由。

 クソッタレの、世界。「もういい」から、終わらせる。

 


 違うのかも知れないし、それで十分かも知れない。だけど、だけどだ。

 アタシとリリィはドロドロに腐った腐れ縁。そいつが違和感を訴えている。

 

 リリィは、まだアタシに何か言っていないことがあるんじゃないか―――


 ……ほとんどこじつけだ。そんなモンいちいち確認していられるか。

 だけど気づいたら、



 (リリィ、まだ言ってないことあるでしょ)



 なんて、例のテレパシーもどきをリリィに送っていた。

 あの“真価の闘技場”で何度も行ったそれを。確かに送れている、そうに決まっている、だけど返事は無かった。

 けど、アタシはまたこじつけた。答えられないんだと勝手にこじつけた。

 

 なんだろう、コレは。こんなに強引に考えを進めるようなヤツだったか、アタシは。リリィのことだけじゃなくて、アタシの自身の事もさっぱりわからなくなってきた。

 

 なんつーか、リリィとは色んな事があった。どれもいちいち表現するほど大層なモンじゃないけれど。描写するまでも無い、小さな思い出の積み重ね、惰性に塗れた腐れ縁。

 でもそれって意外と、アタシとリリィにとっては重要事項、ってやつだったのかも知れないな。

 なんせ、ソレに引っ張られるみたいに、アタシは昨日のリリィとの会話の中にある違和感を見出した。

 リリィはまだ何か言っていないことがある。隠していると言っても良いだろう(良いのか?まぁ良いや)

 寝て、起きて、ちょっと考えただけで。


 「ははっ」


 乾いた笑いが口から洩れた。とりあえず起きよう、と今何時よ?と思って部屋の時計を見た。

 ……ちなみにそれは日時まで表示するタイプのデジタル時計だからわかったのだが。



 あのリリィとあった日から、一週間も経っていた。

 一週間、何も食わずに寝続けたのかアタシは?


 ……それでもわりと体の調子が悪いわけじゃないのは、“蜜”の力か?ベットから抜け出し、軽く腕や足をグッ、グッと準備体操みたいに動かしてみた。異常無し。

 ……一週間か。寝ているようでいて、リリィの事をずっと考え続けていたのかも、なんて思いが不意に浮かんで、何故かまた笑いだしそうになった。

 

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