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2-4 訳も知らないで

 「さて、ガールズトークついでに一応説明しておこうかしら。さっき花ちゃんは私の針で目を刺されて、視界を封じられてしまった」

 「もし戦闘中だったらかなり致命的よね。まぁ戦闘中じゃなくても嫌でしょうけど。恐らく花ちゃんは意識的か無意識的かはともかく、目のダメージを最優先で何とかしたかったはず。さっき“蜜”は、その花ちゃんの願望を叶えるために作用したの。『思い通りにする力』……それが“蜜”」


 ホントに都合良いなぁ。だけど、ただの人間がソレを手に入れるためには、一昨日のアタシみたいな目に遭わなければならない。


 「……そうね。地球人が“蜜”の力を手にするためにはマアリか、マアリに創られた生命体から“蜜”をもらわなくてはいけない。その際、“蜜”と地球人との肉体の相性の悪さから、強い拒絶反応が起こる。それこそ、死に至るかも知れないレベルの」

 「おかげで死にかけたよ、全く……」

 「まーどーになったからいいじゃん?」

 

 お気楽に言うマアリ。軽いなぁ。

 

 「元々“蜜”ってのはさぁ、精神とゆーか感情とゆーか気合とゆーか心とゆーか、とにかくそーゆー『それっぽいもの』に敏感に反応してそれに応える力、エネルギーなワケだよ。つまり拒絶反応が起きても、その“蜜”にその『それっぽいもの』を示せばちゃーんと従ってくれるんだよ。つまり中身までヘタレ野郎じゃなかったらどーにかなるのさー」

 

 ホントに軽い。軽いよ。簡単に言ってくれる。

 

 「てか大本?なアンタですら『それっぽいもの』で済ますのか」

 「んー?まーよくわからんし!」

 「オイ」

 「フフ……その辺はどうでもいいしね。ちなみに“蜜”の分け与え方は“針”を使うの。花ちゃんの時はさっき目玉を突き刺したアレよ!」

 「乳首からの針でバトル漫画的能力に覚醒したのかアタシは!」

 

 ますます締まらなくなった。知りたくなかったなぁ。

 

 「乳首から火花出すヤツだっているんだしこれぐらいフツーよ」

 「いやどっこいどっこいだろ」

 

 それにあの人はちゃんとそういう装置を使ってるんだよ。自前じゃないんだよ。

 

 「で、その時に使う“蜜”の量ってのはほんの一滴なのよ。対象に与えられると、その体の中でその量を爆発的に増やし、結果、その人間に元々流れていた血液に成り代わる」

 

 元は一滴……それが血液に成り代わるほどになるのか。何かヤだな。

 

 「でもね、量が増えれば増える程力を多く得られるってワケでもないわ」

 「へ?」

 「どちらかと言えばね、“蜜”は力そのものと言うよりは、そうね……『資格』に近い」

 「……もしかしてややこしいハナシ?」

 「だから説明パート嫌なのよねー……でも後で文句言われるのも嫌だし一応、ね。面倒くさいなら聞き流すべし。SF読むときだってメンドイ設定の説明とか読み流すでしょ?そういうものよ。例えSF好きなヤツでも皆がみんな量子力学だのなんだのに詳しいわけでもなし。『そーいうもんかー』ってテキトーにわかってればいいのよもう」

 

 投げやりな姿勢だった。まぁ確かに戦えさえすれば理屈とかどうでもいいかなアタシも。

 

 「うん……それでね、“蜜”はその人に応えて力を与えるわけだけど、その力はどこから『持ってくる』のかわかる?」

 「?そりゃ……“蜜”自体から……え、違うの?」

 「ふっふっふ……」


 何かマアリがニヤニヤしだした。

 

 「違うんだなそれが!“蜜”はねぇ、繋いでいるんだよ。あたしと花チャンをね!」

 「えー」

 「イヤそうっ!ヒドーイ」

 

 イヤだよそりゃ。なに繋いじゃってんの。キモイ。

 

 「花ちゃんに限らず、この私リリィも、あのゴキブリ戦士やらも、他の地球人代表者達も……“蜜”を通じてマアリとリンクしている。“蜜”にはリンクするための資格としての役割もあるの。そのリンク、繋がりを使って、“蜜”はマアリから力を借りて、それを宿主に与えている、という訳ね」

 「つまり、あたしがスゴイから、花チャンもデタラメできるってぇワケ!元々あたしは『思い通りにする力』を持っていたんだけど、それをいかがわしーい実験の結果、あたしの力にこうやって『他の人に分け与えられる』とか色々な役割を付随したもの、それが“蜜”だよ。あたしの力は今丸ごと“蜜”になってるのさ。」

 「……ははぁ」



 「―――マアリから『どれだけ借りれるのか?』がこの“蜜”を使った戦いにおいての強さになるの。その『どれだけ』を決めるのが、その個人の心だのどーだのっていう『それっぽいもの』ってことね」

 

 ……何かよくわからんけれど。マアリから借りるってことはだ。

 

 「それさぁ、その“蜜”を持ったヤツ次第じゃあマアリの力がゼロになるまで力を借りれるってことになるじゃん。そういう奴が現れてマアリと戦ったらマアリすぐやられちゃうってことでしょ?別にいいけど。何でそんな欠陥のあるシステムに……」

 「……ぶっは!舐め過ぎでしょ、このマアリ様をサァ!」

 

 急に噴き出すマアリ。自分の名前に様つけるやつリアルで初めて見た。感動。

 

 「わかりやすいように言ってあげるよ、花チャァン……あたしが“ゲーム”時に使ってるのはねぇ、あたしが創った生命全ての維持に使う分、観客席を守る透明なバリアの分、そしてあたし側の“戦士”と地球人側の“代表者”が要求してくる分」

「基本的にはこの3つだよ。で、その3つにあたしの力がどれだけ割かれるかと言うと、そうだねぇ、もちろん戦いのレベルによって変わるけど……Cランク戦、オオガミレンの戦いは見たんだよね?あれくらいであたしの力の総量の2割ちょいぐらいだよ。オオガミレン自体は1割弱くらいだったかな?」


 ……アレで、1割弱?


 「ああ、ちなみに花チャンは1割弱なんてモチロンいってないよ?まぁゴミだね」


 ゴミて。ヒドイや。


 「確かに君は他の奴らとは何か違うとは思うよ。バリアフィールドを壊してしまったのだし……でもそれだって耐久性はあたしがどのランクの戦いかによって、で決めているものなんだよ。つまり、アレは『Zランクならまぁあれくらいで十分っしょ?』ってぐらいの弱っちいバリアなんだ。でもまーその予想を覆した点は評価してあげよう。ヨシヨシ」

 「…………」


 想像より遥かにデタラメだった……システム聞いた時にはさっさとマアリだけぶっ飛ばせばいいじゃん、なんて安易に考えてたけど。


 「あたしを直接倒しちゃえばいい、なーんて考えてた?でも残念!あたしはクソ強いのです!やーいやーい」


 ……こんなヤツが、ねぇ。イヤだ。しかしイヤだイヤだ何か気に食わん締まらんとにかくイヤだと駄々をこねても現実はもちろん変わってくれない。……変わってくれよ。


 「まぁそういうことよ花ちゃん。マアリはこの“蜜”の仕組みがあったとしてもとても戦える相手じゃない。だけど……」

 「そう!だけど今回のルールはAランクの戦士まで倒してしまえばいいワケよ。そしたら地球人を絶滅させるのは勘弁してあげよう!って言うんだから慈悲深いよねぇ、ホメてホメて」

 「スゴイネ。アリガトウ」

 「ワーイ」


 このヤロウぶっ飛ばせるもんならぶっ飛ばしたい。


 「ちなみにAランク戦はまぁ2割ぐらいまで借りられるようになればどうにかなるよ。セイゼイ頑張りたまえー!」


 理屈で言えば、マアリを倒したければ彼女の力の5割以上借りられなければ勝てないってことになるけど、普通に“ゲーム”、つまりこのランク戦なら2割で済む……確かに、ウマい話ではある。

 それでもやっぱり気に食わないんだけど、ねぇ。


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