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三九 王都へ

「いやはや、宗介殿は……未知の武器といい鋼の車といい、つくづく我々を驚かせてくださいますな」

「んなこと言われても絶対に売りませんよ」

「はっはっは! それは残念ですなぁ」


 ハンドルを握りアクセルを踏む宗介の後ろで、竜皮のシートに座って豪快に笑う商隊長。それをミラー越しに見た宗介は、諦めたような溜息を吐く。


 盗賊団の掃討を済ませた宗介は現在、計三機のゴーレムを操り、失ってしまった馬車馬の代わりを勤めていた。その内訳は、機関銃を装備した鋼の虎……“虎徹改”が二機と、今まさに宗介がハンドルを握る新たな自動車が一機である。



 新たな自動車こと、重装輪装甲車両型ゴーレム“VoS.02 Bouncer(バウンサー) 6×6(シックスバイシックス)”は、一対のゴツい前輪と二対の後輪、更にアダマンタイト製の分厚い装甲を持つ、六輪駆動オフロードSUVだ。


 スピードこそ“VoS.01 Lancer(ランサー)”に劣るものの、馬力は桁違い。驚異の六輪駆動方式もあいまって、走破性能は戦車並みと言えるだろう。その軍用車の如くタフな外観のモンスターマシンは、大きな荷台や牽引フックも備えており、様々なモノの運搬も可能となっている。


 ちなみに現在は一台の馬車を牽引中だ。他の馬車に怪我人の為のスペースを確保するべく、限界まで荷物を詰め込んだ一台を。それでもズンズンとエンジン音を轟かせて悠々と街道を走るのだから恐ろしい。


 圧倒的な力の下、何者にも止められることのない安全快適な旅を保証してくれる、宗介自慢の一台である。



 で、今宗介達が居るのはそんな代物の内部な訳で、後部座席に座っている商隊長からすれば大変興味をそそることだろう。未知のアイテムに商人の魂が疼くのだ。


 勿論宗介は、バウンサーを筆頭としたゴーレム達を手放すつもりは無い。名目上は“ゴーレム”とは言え、中身は明らかに異端な技術の塊。技術者に流れて解析でもされたら、国家間、及び世界のバランスは音を立てて崩れてしまうだろう。


 既存のあらゆる武器よりも疾く、鋼鉄をも粉砕する礫を放つ弩。動物が要らず、それでいて馬よりも速度と馬力、扱いやすさで勝る乗り物。様々なモノの動力となる内燃機関。どれも手に入れた国、種族が世界の覇権を握るような代物だ。


 しかし、如何に宗介が断ろうともどうにか交渉を続けようとする商隊長の商魂逞しさと言ったら、凄まじいことこの上ない。必死に「何処で手に入れたのか? 誰が作ったのか? その技術について知っていることは無いか? やはり売ってはくれないか?」と、目をギラギラさせて根掘り葉掘り質問してくる。流石の宗介もこれには苦笑いだ。


「いや、ホント、売るつもりも教えるつもりも無いんで」

「しかしですなぁ。一個人が保有するだけというのは、些か勿体無い代物ばかりではありませんか? これらが人間族共有のモノとなれば、魔王軍にだってきっと……」


 やはり馬の代わりにゴーレムを動員したのは間違いだったかと、苦い顔をしてこめかみを押さえる宗介。そんな彼の様子に気付いたエリスが、宗介の腕の中に収まったまま、ミラー越しに商隊長を睨みつけた。


「……それを自分に向けられたくないなら、そのくらいにしておくのが賢明。……迷惑がってる」

「ッ……。それもそうですな。仮にも一大盗賊団を壊滅させる、黒級冒険者の御仁。下手な手出しはかえってこちらの首を絞めることになる……」


 その鋭く冷たい蒼眼――人前なので【影化】で偽装している――に商人の勘というものが警告を鳴らしたのか、うぐっと、気圧されたように引き下がる商隊長。


 ……エリスの眼力は、何気に結構なモノだ。普段は無表情だからか、それとも溢れ出す膨大な魔力が気配として表れているからか、冷たい眼で睨まれるとそれなりの威圧感があるのだ。流石は“鮮血姫”と言った所だろう。


 内心を代弁してくれたエリスに、宗介は「助かった」と頭を撫でてやる。まぁ、実際のところは武器を向けるつもりなど無いのだが……実際そうでもしないと収集が付かなかった。素直に感謝である。


 そんな二人を呆れたように横目で眺めているのが、助手席に座るフォルテだ。


「毎度思うのだが……この鋼の車は、そうやって乗るものでは無いだろう」

「ん? あぁ、確かにそうだがな」


 ハンドルを握る宗介の腕の間にすっぽりと収まるエリスのことを言っているのだろう。明らかに間違った乗り方だと、彼女の【直感】が訴えているのだ。なんとも便利な技能である。


 ともあれ。


「……嫉妬なんて、見苦しい」

「いや、別にそう言う訳ではないが、操縦の邪魔になるのではないか?」

「まぁ、たまに前が見辛かったりすることはあるが……『ここが良い』ってエリスが言うもんだし」


 なぁ? と、腕の中のエリスに目を向ける宗介。こういう類の事は、大抵がエリスたっての要望によるものだ。宗介としても多少恥ずかしいくらいで断る理由も無いので、容認している。エリスも、こういう事をフォルテのせいにすることで気兼ねなく頼める点についてだけは、二人旅にお邪魔虫が着いて来たことに感謝しているらしい。


「……婿殿はどうも、やたらとエリス殿にだけ甘い所があるな」

「まぁ、色々と世話になってるし」


 そんな甘い宗介の胸元に頭を預けたエリスは、ふんっと嘲笑の目をフォルテに向ける。


「……でか女には、ここの座り心地は一生分からない」

「なっ!? で、でか女……」


 アダマンタイトの身体に座り心地もクソもあるのか、というツッコミはさておき。フォルテの身長は、女性の中では高い方だ。それこそ宗介と良い勝負をするか、もしくは少し上回るくらいに。それがまた彼女の凛とした雰囲気に繋がっている為、魅力の一つではあるのだが……確かに、宗介の膝上と言うスペースには収まらないだろう。


 それはともかく。


 ――――“ここ”は、私のもの。お前如きには奪えまい?


 そんな静かな勝利宣言に、一瞬、愕然としたような表情をするフォルテだったが、しかしすぐに大人の余裕というものを醸し出す。


「ふ、ふふっ、そうだな。確かにそこはちびっ子限定だ。誰かさんと違って大人な私には、些か狭すぎる」

「……喧嘩なら、買ってあげるけど? ……駄肉女」

「おっと、身体的側面では勝ち目が無いからと言って嫉妬か? 見苦しいな」


 ジロリと向けられる絶対零度の視線に対し、得意気に胸を張るフォルテ。途端にエリスの目が、一層冷たいものになる。恐らく、騎士服の胸元を内から押し上げる“それ”のせいだ。


 エリスではどう足掻いても勝ち目の無い、それ……。


「肩は凝るし、剣を振るう時は邪魔になるし、ハッキリ言ってあるだけ無駄なのだが、生憎と世の殿方はそう思わんらしいな?」

「何故そこで俺に振る」


 若干、頬を赤らめながらもチラチラと視線を送ってくるフォルテに、宗介は凄まじく反応に困ったように顔を歪める。そんな彼の腕の中、完全に目の光と表情を消失させたエリスが、ボソリと呟いた。


「…………千切ってやろうか」

「!?」


 そのえげつない言葉に思わず胸を抱いて身を震わせるフォルテ。しかし、あくまでも勝者の余裕を崩さないように虚勢を張る。悲しきかな、二人の間には実力という明確な上下関係があるのだ。


「ふ、ふんっ! その発言こそ、私にも勝機があるという証拠に他ならない! まだ勝負の行方は分からんなっ」

「……チッ」


 その言葉に、苦虫を噛み潰したような表情を浮かべるエリス。


 そう。二人による仁義無き“宗介争奪戦”は、もう始まっているのだ。今回の前哨戦は引き分け。まだまだどちらが勝つか分からない。


 まぁ、渦中の真っ只中にいる宗介としてはたまったものではないのだが、折り合いを付けろと言った手前、何も言えないのが現状だ。願わくば穏便に事が済んでほしい所である。


 ともあれ。得意気なフォルテをよそに、エリスは思い詰めたように胸に手を当て、むむむ、と何かを考え込む。


 そして暫くすると、見上げるように宗介の顔を覗き、ポツリと尋ねてきた。


「……大きいほうが、好き?」


 ……と。


 少しばかり不安そうな上目遣いに、頭を思い切り殴られるような衝撃を感じた宗介は、咄嗟に目を逸らしてバウンサーの天井を見上げる。どうやら、会心の一撃であったらしい。


 何が、大きい方がいいのか。そんなこと聞くまでもない。


 チラリと助手席に目をやれば、どう答えるのか興味津々と言った具合に見つめてくるフォルテの姿が。腕の中には、ジッと上目遣いで顔を覗いてくるエリスの姿がある。残念、逃げ場は無い!


 これは答えないと駄目なやつだ、と判断した宗介は、完全に予期しなかった事態にどうしたものかと唸り始めた。そうして、しどろもどろになりながらもオブラートに包み説明する。


「……あー、ほら、あれだ。俺はだな……カツ丼の量や盛り付け方よりも、味を重要視するタイプだ」

「……?」

「つまり、どう言うことだ?」


 その説明の意図が読めなかったのかハテナマークを浮かべる二人に、頭をガリガリ、ガリガリと掻きながら言葉を絞り出す宗介。


「……大きい胸ってのは、必ずしも魅力の一つにはなり得ない。千差万別、十人十色、人によって丁度いいポイントってのがあるんだよ。……良いか? 分かったらこの話は終わりだ」


 何を言わせるんだ全く、と死ぬほど恥ずかしそうな顔でぼやいた宗介は、とにかく必死でバウンサーの運転に務める。全くもって災難も良い所だ。


 そんな彼に、「おぉ~~」と感心したような声を上げる二人であったが、暫くすれば何かに気付いたらしく、宗介を見る目が凄まじいジト目に変わった。


「……ソウスケ自身の好みは、明言されてない」

「さり気なく話を逸らして逃げるのは良くないのではないか?」

「マジで勘弁してくれ……。ほら、後ろで商隊長が凄え居心地悪そうにしてるだろ。人前でする話じゃねえよ」


 当の本人は全力で顔をしかめながら、後部座席の方に目をやる。そこには、どう反応すればいいのか非常に困ったように苦笑いを浮かべる商隊長の姿があった。一応、謝罪も込めて会釈しておく。


 頬を赤らめ、バツが悪そうに咳き込むフォルテ。エリスも渋々と言った具合に定位置に戻る。ジトッと宗介を見上げながら。取り敢えずその頭に片手を置いて撫でてやれば、「……誤魔化されてあげる」と話を切り上げてくれたので、宗介は内心でホッと胸を撫で下ろした。


 そんな具合で話が終わったのを見計らい、商隊長が宗介に声をかける。


「そろそろ、王都が見えてきますぞ」

「やっとか、長かったなぁ」


 初の馬車旅――後半は殆ど車に乗っていたが――に様々なモノを感じつつ、宗介は目を凝らして街道の先を見つめる。そうして緩やかな丘を越えれば、成る程、見えてきたではないか。



 トリッドの街など比較にもならない程に高く聳える、重厚な白い外壁。街道が続く先には、詰所らしき建物が傍に飛び出した大きな城門が据えられており、その更に向こうには、荘厳にして雄大な白亜の城が、夕日に照らされて静かに鎮座している。外から見た回数など数えるほどしか無いのであまり懐かしくは感じないが……その城こそ、宗介を筆頭とした勇者達が滞在していた王城だ。


 ちなみに王都は、魔法や魔道具の技術が特に発達している大都市だ。それこそ、異世界から勇者を召喚するなどという離れ技をこなすくらいに。アングライフェン大帝国が軍事国家なら、聖ルミナス王国は魔法国家なのだ。基本的にその力が他国への侵略に使われることは無いようだが、本気を出せば、人間界二大国家の名に相応しい力が猛威を振るうことだろう。


 更に言えば、最近は勇者が持つ異界の知識により、その魔法技術にも更に磨きがかかっているらしい。トリッド防衛戦で見た“魔導カノン砲”など、色々と試行錯誤しているようだ。



 ともあれ。


「感慨深いものがあるな」


 この、王都の白壁が西から東へ延々と続いている景色は、召喚されてから暫く経ち、フォールン大空洞へと出発した馬車の中から見た限りの光景。


 そして、再びその目に収めることの出来なかった光景だ。


 故に、「あぁ、生きてるんだなぁ」という得も言われぬ感情が湧き上がり、思わず頬が緩むのも、仕方がないだろう。最近は焼け爛れた顔の左半分を動かすのにも随分慣れて来ており、その笑みには違和感が無い。


 ――――違和感が無い?


 否、ついに違和感を感じなくなってしまったのだ。あの頃とは、身体も含めて随分と変わってしまったのに。


 殺人兵器満載の義肢に、胴体の表皮はアダマンタイト。左眼は“龍脈眼”のお陰で正常な視界を得ること叶わず。髪は色が半ば抜け落ちて鉛色になり、極めつけは見るも無残な火傷顔(フライフェイス)


 宗介自身が選んだ道とは言え、こんなにも変わってしまったとなると……やはり物悲しいものを感じてしまう。本当にこれで良かったのだろうか、と。


 エリスも何となく宗介の内心を察したのか、彼の腕の中でただ静かにその身を預けた。


「……ソウスケはソウスケ。その軌跡は、誰も否定しない。少なくとも私は……私だけは」

「……そりゃどうも、救われるよ」


 さりげない気遣いに感謝しつつ、宗介はバウンサーを駆る。


 本来ならば、この辺りでゴーレム達を回収し徒歩に切り替えるのがセオリーだ。エンジン音を轟かせる鋼の魔物で乗り付けては、城門周辺の大混乱は必至である。しかし現在、後ろには馬を失った馬車があり、その馬車には冒険者達が乗っている。


 よもや人力で馬車を引く訳にも行かず、かと言って隠した所で冒険者達の口から宗介のゴーレムについて――ゴーレムであるという情報こそ零していないものの――漏れるのは明白。むしろ、人力に移行することで街に着くのが遅れ、結果、閉め出されてしまっては大変だ。今はもう太陽が沈みかけている為、出来る限り急がねばなるまい。


 そう判断した宗介は、諦めてバウンサーと虎徹改を大っぴらにしたまま王都へ向かうことにした。何かあったら、その時はその時。言い訳も説得方法も、一応考えてはあるので問題はない筈だ。



 そんな具合で楽観視しながら進む一行を城門で出迎えたのは、未知の化け物に警戒心を露わにする兵士達数人と、一機の“ゴーレム”だった。


 一行の眼前に飛び出して進路を塞いだのは、腰関節の宝玉を中心に、四本の腕と四本の脚が生えた二つのユニットを合体させたようなゴーレム。


 何処か見覚えのあるその姿は……そう。確か、“フォールン大空洞”第五十層目で勇者達と戦ったものとよく似ている。と言うかまさにそれだ。手に持つ武器こそ、ハサミから警棒のようなものに変わってはいるようだが。


 一度は殺り合ったその存在に宗介は、敵襲かっ!? と武器を抜きかけたが、どうやらそうではないらしい。そのゴーレムは聖王国の所有物であり、兵士の一部であるようだ。その証拠に、脚を止めた化け物(バウンサー)へとじり寄ってくる兵士達も、そのゴーレムには見向きもしない。勿論、逆もまた然り。


 やがて、ドッドッドッと低い唸り声を上げる化け物の中に人が捕らわれていることに気付いたのか、兵士達が一斉に槍を向けて来たので、宗介は勘違いを正す為にバウンサーから降りる。流石に槍で小突かれるのは頂けない。


「あー、お勤めご苦労さん。こいつはただの乗り物であって、魔物じゃないから安心してくれ」

「そ、そう、なのか? いやしかし、こんな乗り物見たことも聞いたことも……」

「おっと、詮索はよしてくれ。俺達は依頼で来ただけ、依頼主はあっちだ」


 訝し気にバウンサーや虎徹改を見つめる兵士に、ギルド証と依頼書を手渡す宗介。黒級の証を見た兵士は、何やら食い入るようにそれを覗き込んだ後、遅れてバウンサーから降りてきたフォルテや商隊長の姿を見て納得したらしく、本来の業務に戻った。来訪理由の調査、依頼内容の確認、馬車の積荷の検分である。


 特にやましい事も無いので、それらはすぐに終わった。強いて言うなら、後続の馬車に乗せられていた怪我人達に、兵士一同、騒然としたり、馬の代わりに使っていたバウンサーや虎徹改について尋ねられたくらいだ。ちなみに怪我人は、とある勇者様のおかげで潤沢らしいポーションによって無事に治療され、ゴーレムについては、盗賊団の襲撃によって馬を奪われたから代わりに引かせた、と言うことを掻い摘んで説明して事なきを得た。いや、まだ物珍しそうに見つめてくる目はあるが。


 そうして一悶着あったものの通行許可が降りた後、詰所からゴーレム三機の代わりとなる馬を借り、いざ王都へ……という時。


 一人の兵士が、おずおずと宗介達を呼び止めた。


「申し訳ありません、黒級のお二方と騎士フォルテ様。“龍のアギト”の盗賊団についての話も含めて、少しお時間を頂けないでしょうか」


 そう言えばそうだった、と面倒臭そうな顔をする宗介。


 予定ではこの後、報酬を受け取ったら、他の冒険者達に倣って晩飯を食べに行くつもりだったのだ。長い馬車旅において、基本的に飯は不味い。それは言い過ぎたにしても、干し肉等の味気無いものが大半である。故にこういう依頼を受けた冒険者は、街に着いたらその報酬で美味い物を腹一杯食うのがセオリーとなっているらしい。そこまでが馬車旅の楽しみなのだ。


 実際問題、宗介やエリスにとっての主食は血液であり、美味い飯と言うのは殆ど嗜好品に過ぎないのだが……王都滞在の予定を立てるにも、話し合いの場は必要だった。


 と言うわけでお断りさせて頂くのだが……


「明日にでも回してくれ」

「お疲れであることは重々承知しております。しかし、貴方様と話がしたいと言う方もいらっしゃいまして……。何とか、少しだけでもお願い出来ませんか?」


 どうも難しいらしい。宗介は舌打ち一発、エリスとフォルテに目をやる。


 無言で見つめ返してくるエリスに関しては、聞くまでもないだろう。「ソウスケが行くなら何処へでも」と言った具合である。ならばフォルテの意思だが、こちらも特に問題はないようだ。


「まぁ、良いのではないか? 腹こそ減っているが、逆に言えばその程度だしな。急ぎの要件を断る理由も無いだろう」

「んー……それもそうだな。明日に回すだけ無駄か」


 ならば、さっさとこなしてしまった方が良いと判断した宗介は、思い立ったように商隊長の元へと歩み寄る。


「ふむ、お三方はここでお別れと言うことですか。冒険者の方々と一杯やろうかと考えていたのですが……残念ですな」

「や、申し訳ないですけど、そう言うことなんで」

「いえいえ、お気になさらず。“黒”ともなれば、仕方がないですとも」


 そんな風に挨拶を交わす二人に、同じく五日間の旅を共にした冒険者達が残念そうな声を上げるが、それは一先ず置いておくとして。


 宗介は差し出された商隊長の手を握り返し、軽く握手を交わす。


「宗介殿が護衛を請け負ってくださったお陰で、本当に助かりました。ご入用の際は、どうか我が“大鷲商会”をご贔屓に。様々なモノを扱っておりますからな、何かあればお力になれるでしょう」

「それはどうも。それじゃあ、また縁があれば」

「はっはっは! その時は、同じように護衛でも依頼させて頂くとしますかな」


 そんな具合で別れの挨拶を済ませた宗介は、世界を股に掛けるらしい大商会の名前を頭の片隅に刻み込みつつ、兵士に促されるがまま詰所の一室へと向かう。


 様々な道具――恐らくは“魔道具”の類――が壁にかけられたその部屋。パッと見は取調室だ。本来は身分不詳などの怪しい者を捕らえて尋問する部屋なのだろう。カツ丼でも出てきそうな雰囲気である。


 そこに宗介達を案内するや否や「すぐに呼んで来ますので」と出て行った兵士を尻目に、適当な椅子に腰掛けて待つこと数分。


 そろそろ手持ち無沙汰になってきたな、と腕を組み始めた辺りで、律儀にも二回ノックをして部屋に入って来たのは……


「遅れてすみません、あなたが“自動車”に乗って来た方っすか、って、おぉ……これはまた、中々凄い風貌で……」


 宗介と同年代らしい、黒髪黒目の少年であった。

最後の新キャラを一人リストラしました。二人も要らなかった……。

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