三六 再会へ向けて
「なんで俺がこんなことを」
心底面倒臭そうな顔でぼやきながら、時計塔広場の片隅へと向かう宗介。元々は時計塔だった筈の残骸が積まれているそこに辿り着くや否や、その手に抱えていた大量の瓦礫を放り投げ、そうしてまた瓦礫を運びに向かう……。
つまるところ、宗介は戦闘跡の掃除に駆り出されているのだ。
勿論、彼以外にも力持ちの冒険者や暇を持て余している職人達が奔走しており、東門付近や時計塔広場はガヤガヤと喧騒に包まれていた。これが終わればギルドやトリッドの領主から今回の迎撃戦における報酬も配られるらしく、悪魔との戦闘が終わってからさして時間も経っていないと言うのに、皆必死である。
なお、宗介達が上級悪魔グラムを打倒した後に逃走して行った残党の悪魔達は、冒険者達の追撃やエリスの魔法、宗介による狙撃でその殆どが討伐された。それでも取り逃がした者は……トリッド活火山に鎮座する宗介自慢のゴーレム、“ベテルギウス”によって殲滅されている頃だろう。ある種の固定砲台として創ったあれの攻撃能力は群を抜いており、トリッド活火山を踏破して魔界に戻ろうとする者は爆炎の洗礼を受けて絶命する以外に道は無い。
ともあれ。
「影の功労者であることは重々承知しているがな、生憎と全員参加だ。諦めて頑張ってくれ」
「まあ、良いけどさ……腑に落ちねえ」
「……理不尽」
現場監督に任命されたらしいフォルテの苦笑いが混じった労いの言葉に、逃げ帰った後も折角の休みを奪って行くのか、と件の悪魔に恨みの念を向ける宗介。その彼の隣に、フヨフヨと浮かびながら寄り添うエリスも、気に入らなさそうに眉を顰めている。
しかし、愚痴を言っても仕方が無いのだ。
「さっさと終わらせるか、っと」
宗介はおもむろに、翼手とロボットアームをも動員して大量の瓦礫を持ち上げた。元より、彼の身体はゴーレム。無限の筋力を誇る彼にとって、こう言った土木作業はお手の物である。それが好きか嫌いかは別として。
「ん……それに、丁度良い特訓にもなる……。《真なる自由を此処に》」
宗介に続き、エリスも魔法を行使する。重力を緩和し対象を浮遊させる魔法だ。バチバチッと過剰魔力のスパークが迸った瞬間、無数の瓦礫がフワリと宙に浮かび上がった。
自身を浮遊させ、更に数十の物体を浮かせる。成る程、重力魔法の特訓にはもってこいだろう。
途端、周囲の冒険者達が一斉にざわついた。たった一人で数十人分の瓦礫を運ぶ少年と、自身も宙に浮かび土星の輪のごとく瓦礫を運ぶ少女という、なんとも現実離れした光景が目の前に広がっているのだから当然だ。
「どんな筋力してんだよ、あいつ!?」
「天使みたいに浮いてるあの美少女は何者だ!?」
「アホのラインハルトを投げ飛ばした新人じゃねえか?」
「アホだけど実力だけはあるラインハルトが?」
「さ、さっきからボクのことをアホ呼ばわりしているのは誰だっ!?」
「銀髪ちゃんの方は、凄え容赦の無い魔法使いの子だよな」
「ああ、逃げる魔物を串刺しにして焼き払った奴な」
「くそっ、ニュービーなんぞに負けてられねえぞ!」
久々の仕事続きに高揚しているのか、それとも新人に活躍を奪われているのが気に食わないのか、皆、思い思いに気合を入れ直して瓦礫掃除に奔走する。一部、宗介達に慄いている者も居るようだが、この調子ならば瓦礫の処理は日が暮れる前に終わりそうだ。一応、即席でゴーレムを量産すれば、より迅速な処理も可能だが……必要無いだろう。
そんな具合で、復興作業は様々な喧騒に包まれたまま続いたのだった。
◆
日が落ち切る少し前。
瓦礫の処理を終えた宗介達は、フォルテも含めて冒険者ギルド及びギルドマスターの元に訪れていた。理由は、幾つかの話をする為である。場所は何度目かの応接室だ。
「炎帝討伐に続き、冒険者としての君達の初仕事が“上級悪魔”の討伐とはな……。あれだな、そう言う星の下に生まれたのではないか?」
「勘弁してほしいですよ、全く」
ゴルドの言葉に、はぁっと溜息を零す宗介。波乱続きにそろそろうんざりしてきたらしい。そんな彼の内心を察したのか、ゴルドも思わず苦笑いを浮かべる。
「しかし、君には礼を言っても言い足りんな。本来ならば国から勲章と爵位でも送られる程だぞ」
魔王軍幹部の一角を討伐し、街を襲撃した悪魔達との戦いでも随一のキル数を叩き出し、更にはその指揮官である上級悪魔、グラムを撃退した――グラムの本来の目的は宗介であったようなので、正確に言えばマッチポンプのようなものだが――とあれば、絶賛活動中の勇者達も驚く程の大活躍である。宗介が死んだ筈の存在ではなく、そして吸血鬼化していなければ、それこそ国の英雄として讃えられるだろう。
惜しむらくは、彼がフォールン大空洞攻略時に戦死したことになっている点だ。よもや、既に存在しない者を讃える訳には行かないし、よもや魔人族となって這い戻って来た者を人類の味方として受け入れることも出来ないのである。
勿論、宗介はそれを理解しているし、元より賞賛される為にやった訳でもないので、丁重にお断りさせて頂く。
「それは流石に」
「まぁ、そう言うと思っていたがな。昨日も言ったが改めて礼を言おう」
「はぁ……」
どうしたものかと困ったような顔をする宗介。別に礼を貰っても困るだけなのだ。
ともあれ、感謝してくれるならばそれに越したことは無い。交渉事に持ち込むならば、恩というカードにもなる。
と言うわけで、宗介はそのカードを手札に加えるや否や、本題に入ることにした。
「ところで、礼ついでに聞きたいことがあるんですけど」
その言葉に、訝しげに目を細めて腕を組むゴルド。しかし拒否はせず「言ってみろ」と促して来たので、宗介は遠慮なく尋ねる。
「勇者の動向について、教えてほしい」
「勇者の?」
「正確には、リーダーの天谷悠斗が今、どこに居るのかを知りたいんですよ」
「ふむ……」
予想外だったらしい質問に、ゴルドはどうしたものかと考え込んだ。どうも、単純に意図が読めなかったのだろう。
「どういう理由だ?」
故に飛び出したその疑問に、宗介はおどけるように肩を竦めて答える。
「幼馴染と会うのに理由が必要ですか?」
「初めて聞いたぞ、そんな事実」
「まぁ、今言ったんで。それを抜きにしても、俺だって勇者の端くれですから。一緒に戦えるならそれに越したことは無いでしょ。そう言う訳なんで、あいつらが今どこに居て何をしているのか……教えて貰えませんか?」
宗介はそう言うと、真っ直ぐにゴルドの目を見据える。嘘で無いことを示す為だ。
勇者の動向は敵側に知られたら一大事である為、国家機密に当たるだろう。仮にも魔人族……種族だけは敵側にあたる宗介がそれを聞こうと言うのなら、相応に真摯な態度が必要だと判断したのである。
しばらくすると、ゴルドは小さく息を吐き、組んでいた腕を解いた。宗介の言うことが真実であることが伝わったらしい。
「成る程、確かに君は勇者であったな。ならば教えても問題は無いか……」
そう言って、ゴルドは勇者達の情報を宗介に話す。
その説明によると、勇者達の中心グループ――天谷悠斗を中心とした六人組――は“アングライフェン大帝国”に居る。予定では現在、帝国式の長く面倒な挨拶回りの真っ最中であるらしい。そして次に攻略を予定している大迷宮の名は、“天空の塔”。帝国北部に位置する“ヴィルト大森林”の奥地に聳え立つ古塔である。
……ということだった。
「帝国……確か、奴隷で栄えてる国だったか」
座学で学んだ知識を掘り起こしつつ、宗介は、隣に座ってコーヒーカップを啜っていたエリスから受け取った世界地図――デート中に購入した――を広げて眺める。
トリッドの街が位置するのは、南北に別れた二つの大陸、“人間界”と“魔界”の内、南の人間界……その極西だ。これより西には二つの大陸を繋ぐ唯一の陸地である“トリッド活火山”を含む山脈しか無い。そして、アングライフェン大帝国は人間界の東半分を占める大国だ。
大移動もいい所である。それこそアメリカ大陸を横断するようなものだ。人間界と魔界は、丁度南北アメリカ大陸のように広がり繋がって居る為、なるほど例えとしてはピッタリかもしれない。流石にサイズや形まで酷似している訳ではないが。
更に、トリッドと帝国の距離は直線距離だけでも相当だが、実際には人間界と魔界の間をえぐるように広大な内海が広がっている為、迂回が必要である。
ちなみにその内海には魔王軍幹部の一角である“巨鯨”が住み着いており、加えて四大迷宮の一つ“ネレウス海底神殿”まで存在する為、今現在、海路は存在しない。
「……回り道が、必要」
「だな。フォールン大空洞を経由するか? いや、聖王国の王都に立ち寄って情報収集もしたいな……」
むむむ、と今後の旅路を考え始める宗介達。
宗介には、天空の塔やそこに住まう魔王軍幹部、“龍巫女”の情報が少ない。ルミナス王国王都で調べた情報はフォールン大空洞についてのものだけだったし、この街にはトリッド活火山以外の情報が少なかった為だ。
悠斗達がそこに向かっている以上、宗介の次なる目的地も天空の塔。なのに情報無しというのは、些か危険である。
ならばルミナス王国を経由して情報を集め、そこから帝国に向かうのが吉だろう。
それに、もしかしたら王都で葵と再開できるかもしれない、という考えもあった。まさか非戦闘職の彼女が、悠斗率いる六人の“攻略組”に参加しているとは思えないからだ。
「よし。ちょっと遠回りだが、聖王国の王都を経由して帝国に……天空の塔に向かう。そしてそこで、悠斗と再会を果たす。一応聞くが、異論は無いよな?」
最終的に出た結論は、こうだった。フォールン大空洞経由よりは少々遠回りになるが、別に危険を犯してまで急ぐものでも無いと判断したのだ。エリスも、その判断に異議はないらしい。
「……妥当な判断、だと思う」
「決まりだな」
広げていた地図を畳みつつ、満足気に頷く宗介。そんな彼に、おずおずといった風にゴルドが声をかける。
「あー……わざわざ大迷宮まで向かわずとも、連絡を取って何処かで顔を合わせれば良いのではないか? 一応、可能だぞ?」
彼が言うには、悠斗達はまだ暫くの間、帝国帝都に留まる予定らしく、その間に長距離通信用の魔道具で話を付けてから会いに行けば良いのでは? ということであった。
しかし宗介は、それを丁寧に却下する。
「有難い話ですけど、驚かせたいんで。今まで通り、俺の事は他言無用で頼みます」
「驚かせたい、と?」
「ええ。俺が、勇者の中で最弱だった……っていうのは知ってますよね?」
「そうらしいな。今の姿からは想像も付かんが……」
だろうな、と宗介は自虐的に笑う。
つまり、それだけ宗介は人というものから遠ざかっているという事だ。少なくとも喜べる話ではないだろう。
だが、そんな自虐的な笑いも、直ぐに悪戯っぽい笑いに変わる。
「死んだと思ってた最弱が、強くなって戻ってきた……そんな具合でドッキリを仕掛けたいんですよ。特に、ピンチに颯爽と助けに入れたりしたら万々歳。そう言う訳なんで、俺の事は勇者達には秘密でお願いします」
「む……まぁ、そう言うなら……」
一応、納得? はしたらしく、何とも言えない表情で頷くゴルド。恐らくは「子供か!」などと思っているのだろうが、まぁ知った事ではない。宗介としてはギルドマスターからの評価より、幼馴染と感動の再会を果たす事の方が余程大事なのだ。
ともあれ。
「それじゃあ俺達はこれで。行くぞエリス。明日は朝から王都に向けて出発だ」
「ん……」
宗介は、「話は終わった」と言わんばかりに立ち上がる。当初に予定していた通り、悠斗達の動向を知れて今後の予定が立ったのだから、これ以上ない収穫だろう。
そんな二人を、慌てた様子のゴルドが呼び止めた。
「あぁ、少し待て。どうせ王都に向かうのなら、一つ、依頼を受けてくれないか」
「依頼?」
そうして手渡された一枚の羊皮紙に、宗介は素早く目を通す。
依頼の内容は、この街から王都に向かう商隊の護衛であった。詳しく説明すると、領主お抱えの商隊が街の復興の為、必要な物資を王都まで購入しに向かうのを護衛しろ、という依頼である。出発は明日の早朝だ。
「何処ぞの悪魔が時計塔を破壊してくれたお陰で、ここ最近景気が悪くなる一方だったこの街には、どうやら資材が不足しているらしくてな。さらに時計塔を直す為の機械技師も数が足りん。それらを補充する為の商隊なのだが……」
「……その思わせぶりな言い方、ただの護衛とは行かないらしいな」
「うむ……。最近、この街と王都を繋ぐ街道に大規模な盗賊団が住み着いているという話があってな。そこで君達には、護衛と同時に盗賊の討伐も頼みたい。勿論、討伐に関しては襲われた場合のみで良いし、護衛も片道だけで十分だ」
ゴルドの説明に、宗介はどうしたものかと考え込む。
ただの護衛依頼に、黒級冒険者を投入する……。つまり、それだけ重要な案件であり、万一にも失敗は許されないという訳だ。どうやらこの街、何気にギリギリの状況だったらしい。主要産業が“炎帝”によって潰されていたのだから無理もないのだが。
宗介はチラリと、隣のエリスに目をやり、意見を求めてみる。
「……私は、ソウスケの判断に任せる」
「そう言うと思ったよ」
返って来たのは予想通りの返答であった。
つまり二人旅でも、他の冒険者達を交えたのんびりゆったり馬車旅でも、どっちでも良い……そう言う訳である。
一応言うと、宗介には“VoS.01 Lancer”を筆頭に、馬車の何倍も早く移動できる手段がある。更にヘリオスの力やアダマンタイトの入手によって、重装甲車両や異世界アレンジ戦闘機など様々なゴーレムを創っているので、やろうと思えば大陸横断など一日で済むだろう。
ただ。
「急ぐ旅でもなし、今まで全速力で駆け抜けて来たから……たまにはのんびり馬車旅と洒落込むのも悪くないか」
「ん……良いと思う」
急ぎ旅は面白味に欠け、落ち着けないのもまた事実。
それならば、面白味の無いドライブ旅か、今まで体験したことのない馬車旅……どちらを取るかなど考えるまでも無かった。
「分かりました、片道だけですけど受けますよ」
「おぉ、それは良かった! 先方には私から伝えておくから、君達は明日の朝一に南門へ向かってくれ。その後は商隊のリーダーが指示してくれるだろう」
安心したようにホッと胸を撫で下ろし、軽く説明するゴルドに、宗介は受け取った依頼書をエリスに渡し、指輪に収納してもらう。これを依頼主に見せ、そして王都のギルドに提出すれば依頼完了……という訳だ。
「それじゃあ、今度こそ俺達はこれで。もしまた、この街に寄ることがあったら、その時は宜しく頼みます」
「うむ。君達は街の英雄だ、大々的に祝うことは出来ないが、その時は出来る限り歓迎しよう。では、良い旅を」
そんな具合で会釈を交わし、ギルドを後にした宗介達。
その後は街が寝静まる時間まで様々な店を回り、明日に控える旅に必要そうなモノを買い集めた。食料やテント、水等だ。吸血鬼である二人にとっては絶対必要という訳でもないが、まぁ、他の冒険者達に合わせるべきだろうと判断した。
そして、昨夜と同じように宿に泊まって一夜を明かし……翌日。
「やぁ、来たね。遅かったじゃあないか?」
「なんでお前が居るんだよ……」
「……ストーカー?」
南門に向かった宗介達を出迎えたのは、件の商隊及び冒険者達と、腰に手をつき悪戯っぽく笑うフォルテだった。
「生憎と、私も王都に向かう用事があってな。ついでに護衛を頼まれたのだ」
用事? と、怪しむような目を向ける宗介に、フォルテは途端に疲れきったように肩を落とす。
「ふっ……。十日も火山に篭って、やっとオフだと思ったら悪魔とやらの襲撃……。私はもう疲れた……だから、長期休暇を申請して故郷に帰るんだよ……」
「お、おう、災難だったな……?」
何と言うか、もう全てを諦め切ったような目をするフォルテに、さしもの宗介も思わずたじろぐ。しかも両方、原因は宗介なのだから手に負えない。
しかしフォルテは、けろっと普段の様子に戻ると、「まぁ、それは表向きの理由なのだがな」とのたまい、そして宗介に詰め寄る。
「私は、君から受けた辱めを忘れてはいない」
「…………あー、やっぱり覚えてた?」
「当然だ! 尊厳を打ち砕き、あまつさえ私の、は、は、初めてを奪っておきながら……っ! そう簡単に逃げおおせると思なよっ!」
途端、周囲の冒険者達が一斉にどよめいた。宗介が咄嗟にフォルテの口を押さえるが、もう遅い。
「おい、あのニュービー……」
「騎士様の初めてを奪っただって!?」
「野郎、あんなカワイイ子を侍らせながら!」
「有罪死刑、慈悲は無し!」
「実力者だろうと知ったことか! 血の一片も残さず絶滅させてやらぁ!」
各々が武器を取り、目を殺意と嫉妬にギラつかせながら宗介へと詰め寄る。
「おい阿呆! 勘違いするような言い回しをするんじゃねえよ! 始めてってお前、戦闘中のお姫様抱っこのことだろうが! 不可抗力だろ!?」
「はっ、始めては始めてだ、違いなどあるまい! 全部君のせいだぞ! 責任は取ってもらうからなっ!」
「ふっざけんなよお前――――ッ!? ちくしょう、どう収集つけるんだよこれ!」
猛然と振るわれた剣の一撃を、宗介は咄嗟に回避する。的確に首を狙った斬撃、当たれば背丈が頭一つ分縮んでいたところだ。
「チィッッッ!! 外したかッ!!」
「逃げ場を与えるな! 取り囲んで袋叩きにしろ!」
「性犯罪者に死の鉄槌を!!」
「「「鉄槌を!!」」
盛大に勘違いしたまま、謎のチームワークを発揮して宗介を四方八方から襲う冒険者達。二挺のシュトラーフェⅡを抜き、銃身で刃を受け止めてその乱戦を切り抜ける宗介。
「そもそもっ、どうして俺がこの依頼を受けると知ってたんだ!?」
「ふ、ふふ……。ゴルド殿に尋ねたらな、快く教えてくれたよ。彼には今度、礼を言っておかなければな」
「やってくれたなギルドマスターっ!! こんなことなら迂闊に依頼を受けるんじゃなかったよ!!」
多分、ゴルドに悪意は無いのだろう。宗介とフォルテの関係など知る由もないので。
ともあれ、冒険者達の猛攻に、宗介は真剣にシュトラーフェⅡの引き金を引くかどうか考え始める。威力だけ言えば対物ライフル級のそれは、革鎧程度しか身につけていない冒険者達など豆腐のように貫くだろう。
しかし、流石に殺すのはどうなのかという訳で、致命の刃達に冷や汗を流しながらも悩む宗介。その時、不意に頭上から声がかかった。
「……ソウスケ、こっち」
「っ、助かる!」
重力魔法で、妖精の如くふわりと浮き上がって避難していたエリスが、宗介にもその魔法を行使する。途端に数十センチ程浮き上がった宗介は、翼手のスラスターエンジンに火を付け、颯爽と空へと舞い上がりエリスを回収する。
「アレはヤバイ、逃げるぞっ」
「……ん」
「あっ! おい待てっ! くそ、絶対に逃がすなっ!!」
「「「おうっ!!」」」
空へと逃げた二人を、地上から正義と怒りと嫉妬を宿した冒険者達が、フォルテの指揮の元に追いかける。
初依頼は開幕から、呆れたように苦笑いする商隊のリーダーをほっぽり出して幕を開けるのだった。




