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なっちゃん

それは後期の授業が始まってすぐのことだった。


「葵、今日講義サボらない?」


声をかけてきたのはなっちゃんだった。

なっちゃんがそんなことを言うことは滅多にない。


「私はいいけど…」


そう言ってアヤを見た。


「私はたまには出ようかな。出席なら出しておくよ」


「さんきゅ。いつものカフェにいるし、終わったら来てね」


「アヤちゃん、ありがとう」


2人でそう言っていつものカフェに向かった。


「珍しいよね、なっちゃんがサボるなんて。何かあった?」


「…ちょっと葵に相談があって」


「そっか。何?」


「サニーのことなんだけど…」


「うん」


「私、どうしたらいいのかな…?」


「どうしたらって…夏休み、仲良く話してたよね?」


「うん…それはそうなんだけど、サニー何も言ってくれなくて、電話番号とかも聞かれてなくて、私から言うのもなんだか…って感じで…」


「えっ?電話番号も知らないの?」


「うん…なんか、ダメなのかな…」


「サニー何してんだろ…奥手か?」


「次にいつ会えるかもわからないし…みんなで会っても、サニーは何も言ってくれなさそうだし…」


「確かに…なっちゃんは、サニーのこと好きなんだよね?」


「うん」


「なら、告白しちゃえば?」


「えっ?私、告白とかしたことないし、大体電話番号も知らないし…」


「そういう話は直接会ってしたほうがいいよ。サニーたち、今ごろ学校にいるんじゃない?」


「えぇっ?学校に行くの?私が?告白しに?」


「うん。それが一番早くない?」


「えーっ、無理だよ~。そんなん無理じゃん!」


「でも、なっちゃんは我慢の限界だから講義サボったんだよね?」


「それはそうだけど…」


「私からノブに話つけるのは簡単だけどさ、そういう話って直接本人同士でしたくない?」


「…」


「それにさ、サニーがなっちゃんのこと好きなのは確実なわけで、もしなっちゃんが学校まで行ったら、サニーうれしいんじゃないかな?なっちゃんが逆の立場だったらうれしくない?」


「…」


「いきなり学校まで行って告白とか、超かっこいいと思うよ」


「…そうかな…?」


「うん。別に、どっちから言わなきゃいけないとか、そんなルールはないんだし、初めての告白がサニーって、すごくいいと思うよ。サニーいい奴だし。私はなっちゃんが戻ってくるまでここで待ってるから、行ってきたらいいよ」


「…うん、わかった。行くだけ行ってみるよ!」


「がんばってね、なっちゃん」


「うん!」


なっちゃんはカフェを出て行った。


…しかし…そもそも会えるかな…ノブの学校行ったことないけど…


そんなことを考えていたら、アヤがカフェに入ってきた。


「お疲れ~って、あれ?なっちゃんは?」


「ノブたちの学校に行った」


「えっ?ひとりで?」


「うん」


「何しに?」


「サニーに告白しに」


「えっ?マジで?だってなっちゃん、学校知ってるの?」


「知らない。少なくても、私は知らないけど…」


「それに、キャンパスあるんだよね?どこにいるかわからなくない?」


「そうなんだよね…よくよく考えると、そもそも会えるんか?って話だよね…」


「…葵…無責任に煽ったんじゃないの?」


「うん…さすがに無謀過ぎたかなと…」


「そりゃ無謀だよ。…まあ、行ったのはなっちゃんだから、今更言っても仕方ないけど…」


「とりあえずなっちゃんが戻ってくるまでは私はここにいなきゃいけないわ。それくらいしかできないけど…」


「しかし、すごいね、なっちゃん。よく行ったなと思うよ」


「うん。時々すごい度胸あるよね」


「…会えるといいね…行ったんだから…」


「うん。もう祈るしかない」


アヤと2人でしばらく待ったが、なっちゃんは戻ってこない。

日差しは夕陽に変わろうとしていた。


「葵ごめん。私今日バイトだから、そろそろ帰るわ」


「うん。付き合わせてごめんね。また明日」


「なっちゃんによろしく」


アヤがカフェから出て行った。


…それにしても遅いな…

私が煙草に火をつけると同時になっちゃんが戻ってきた。


「なっちゃん!」


思わず立ち上がった。


「葵、遅くなってごめんね!」


「いやいや、そんなことはどうでもいいけど…会えた?」


なっちゃんはにっこり笑って頷いた。


「マジで!?それで?」


「付き合うことになった」


なっちゃんは笑顔で言った。


なっちゃんの話によると、駅に着いて地図を見て、バスに乗って校門までたどり着いたものの、どうしたらいいかわからず校門の辺りに佇んでいたらしい。

そこに、昼御飯を食べ終わったサニーたちが学校に戻ってくるところで会えた、と。

ただ、サボれない講義があって、しばらく待っていてこの時間になったらしい。


「マジで!?超運命じゃん!」


「いやいや、葵のおかげだよ。行って良かった、ありがとう」


「私は何もしてないよ。がんばったのはなっちゃんだよ」


ー多分今日はノブから電話が来るだろうー


「とりあえず、葵待たせてるからって1度戻ってきたんだけど、ちょっとまた行ってくるね」


「うん。良かったね、なっちゃん」


幸せいっぱいのなっちゃんと別れて家に帰った。


予想通りノブから電話が掛かってきた。


「いや、もう、超驚いたよ~。すげーな、なっちゃん」


「うん。正直私も驚いた笑」


「なんかさ、昼飯食って学校戻ったら、いきなりサニーが、なっちゃんだ!って言って走り出したんだよ。は?って思ったら、本当になっちゃんいてさ、マジびっくりしたよ~」


「ま、会えたんだから、運命じゃない?良かったよ」


「どうせなら3人で来れば良かったのに」


「そしたら告白できないじゃん」


「その話なんだけどさ…、葵、俺もどうしよう…」


「…まさか、ノブまで電話番号聞いてない、とか言わないよね?」


「すまん、聞いてない…」


「…って、ノブもサニーも夏休み何してたの?」


「いや、なんとなく言い出せなくて…」


「…」


「葵頼む!俺にも力貸してくれ!」


「…ノブって車持ってたよね」


「ん?ああ。えーじのワゴンみたいにみんな乗れるわけじゃないけど」


「ならさ、今度えーちゃんと、ノブの車2台出してもらって遊びに行こ。…意味、わかるよね?」


「あっ!…葵、ありがとな」


「ラストチャンスだと思ったほうがいいよ」


「わかった。日にち決めてまた連絡するよ。葵、さんきゅな」


「お礼は、上手くいってからってことで」



えーちゃんに電話してみようー

私は受話器を置いて、再びそれを手に握ったー

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