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合コン

ノブたちに連れられて数分歩いたところにある和風の居酒屋に入った。


「へえ、こんないい感じのお店あるんだね」


座敷に上がって私が言うと、


「ここならどんな酒もあるから。みんな酒好きなんだろ?

あっ、お前一応幹事だからそこ座れ」


ノブが手前の席を指差し、自分は向かいに座った。


「とりあえず、みんなビールで大丈夫?」


「うん」


「すいませーん、生5つとコーラ1つお願いしまーす」


「コーラ?」


「ああ、端の奴はちょっと酒飲めないから」


「そうなんだ?」


「で、何食う?ここはなんでも割りと旨いんだ」


「私たち、好き嫌いないし、飲むときあまり食べないから。ノブたちのオススメでよろしく」


「そっか。なら適当に頼むな」


店員がジョッキを持ってくると、食べ物を何品かオーダーした。



「それじゃ、とりあえず乾杯するか」



初めまして~


みんなで乾杯して飲み会が始まった。


「自己紹介するか。俺はノブ、隣はサニー、いい奴だよ。その隣はえーじ。えーちゃんて呼んでくれ。イケメンだろ?みんな同じ大学の友だち」


続けて男子の方を向いて、


「こいつは葵。中学からの同級生。っと、あとは葵頼む」


「うん。私の隣はアヤ、酒乱?笑。その隣はなっちゃん、酔ってもかわいいよ。こっちも同じく大学の友だち。よろしくね」


よろしく、よろしく、と小さく乾杯しながら飲んだ。


「なんか…あれだな。3人いて3人ともかわいいって珍しいな」


ノブが言い、他の2人も頷いている。


「なにそれ?笑合コンの決まり文句?笑」


私が言うと、


「いやいや、そんなことはないよ」


「そもそも私がかわいいに入ってる時点でおかしいよね笑」


「あっ、確かに笑。ってか、酒飲みで賑やかって言ってたけど、おとなしい?」


「あっ、ごめん。うちら酔わないとエンジンかからなくて…

ウィスキーボトル入れていいかな?」


「えっ?いきなり?いいけど…何で割る?」


「ストレートで」


「マジか。もう頼むの?」


「うん。とりあえずビール空けよ」


「本当に?大丈夫?お前ら。こんなん初めてだけど…」


「大丈夫だよ。じゃ、始めますか」


アヤとなっちゃんが笑って頷き、


「ノブたちも付き合ってもらうからね。よっしゃ空けるぞ、乾杯~!」


もう一度乾杯して皆ジョッキを空けた。


まだ飲み始めて10分くらいだった。


「すげーな。すみませーん、ウィスキーボトルと氷、グラス5個で」


相変わらず私とノブしか話していない。


「いつもこんな飲み方してるの?」


「今日はちょっとペース上げてるよ。多分30分くらいで変身するから」


店員がウィスキーを持ってきた。


「私が作るから。ノブとサニー?はロックいける?具合悪くなるとかある?」


「大丈夫だけど…」


「えーちゃんは…コーラいる?」


「まだ大丈夫だよ」


「おっけ」


私はウィスキーダブルロックを5個作って皆に配った。


「さて…と、んじゃ、いこっか、乾杯」


「えっ?まさか、空けるの??」


「うん。無理?」


「いやいや、無理とかじゃなくて、そういう飲み物じゃないだろ」


「うーん…でも、そのほうが多分楽しいよ?」


「マジかよ…飲み比べかよ…しょうがねーな、サニー付き合え」


「決まりだね。よっしゃ、いくぞ~。乾杯~!」


皆で一斉に空けた。


「2人とも、結構強いね」


ようやくアヤが口を開いて少し笑った。


私は笑いながら次のロックを作っている。


男子はダブル、なっちゃんもダブル、アヤと私はシングル。


「私たちと同じ早さで空ける男子はほぼいないよ」


アヤが続けて話している。


「マジ、いきなりこんな飲まされたの初めてだよ~」


「だから最初に飲むって言ったよ笑。ノブ、ウィスキー空いたから、日本酒冷やいこ」


ウィスキーグラスを渡しながら言った。


「今度は日本酒かよ?なんなの、お前ら」


「あっ、一応私も幹事だったね。すみませーん、冷や3本とグラス5つくださーい」


「ちょっ、葵…!」


「ノブくん?私と乾杯しない?」


アヤがノブに挑戦的な目を向けている。


「先に言っておくけど、アヤと飲むのは自殺行為だよ笑」


「姫に言われちゃ断れねーな。とことん付き合うよ」


アヤとノブが再びウィスキーを空けた。


「2人ともやる~笑はい、これね。あと、店員さん、コーラ1つお願いします」


アヤとノブに日本酒を渡した。


「3人の中で、誰が一番強いの?」


今度はサニーが口を開いた。


「なっちゃん」


アヤと私が同時に言った。


「あれ~?なっちゃんなんでまだウィスキー?」


私が言うと、


「葵ちゃんはいつも私だけ量多いよ~」


なっちゃんが笑いながら言った。


「なっちゃん、俺が日本酒注ぎたいな~」


今度はノブが言いだした。


「えーっ、じゃあ…私はサニーに注ぎたいな」


なっちゃんがすかさずサニーに絡む。


サニーが苦笑した。


「決まりだね。なっちゃんとサニーでいってみよー!」


日本酒も次々と空いていく。


私は焼酎、ウィスキー、日本酒を次々と注文する。


「えーちゃん、コーラいる?」


「うん、ありがとう」


「おっけ」


「ってかさ、葵全然飲んでなくない?」


酔っぱらったアヤに絡まれた。


「飲んでるし。ってか、飲むならアヤと飲みたいな~」


「私も葵と飲みたいよ~。ノブ、付き合うよね?」


「また俺かよ~」


「じゃあさ、今度は3人で、一番空けるの遅かった人おかわりね」


「悪いけど、私は負けないからね」


アヤがいたずらっぽく笑う。


「せーのっ」


負けたのはノブだった。


しかしアヤが、


「葵~、私が飲んだの水だったよ~」


「あはははは、それ普通に焼酎だったから」


「絶対違うし~。ノブ、飲も!」


この席はもう大丈夫だ。


周りを見ると、なっちゃんとサニーがいつの間にか2人で話し込んでいる。


私は適当に酒を頼んでえーちゃんの隣に行った。


「えーちゃん、隣いいかな?」


「うん」


「ごめんね、こんな飲み会で。びっくりしたでしょう?」


えーちゃんはちょっと笑って、


「合コンは何度かやってるけど、こんなに楽しいのは初めてだよ」


「楽しいってか…ごめんね、みんなアホで。こんなんだから、あんまり相手にされなくて」


「そう?俺はすごいいいと思うよ」


「えーちゃんて、カッコいいだけじゃなくて、優しいんだ?モテるでしょう?」


「そんなことないよ」


「見たらわかるよ」


そのときだった。



「葵~!」


アヤの呼ぶ声がした。


「ちょっと行ってくるね」


私はアヤのところに行った。


「アヤ、どした?」


「葵!ノブひどいよ!やっぱり葵のこと全然考えてないよ!」



あっ…


横でノブが酔っぱらいながらうなだれている。


「葵には悪いことしたと思ってる…俺いつも葵に甘えてて…」


「甘え過ぎなんだよ!葵も葵だよ!だいたい…」


「アヤ!!酔いすぎだよ!ノブは何もしてないよ。アヤは、今飲んでて楽しくないの?私は楽しいけど?」


「楽しいけど…」


「ノブ、ごめんね。アヤは酔うと説教始まるんだよ…気に入った人に。だから、ノブは悪くないし、言いがかりだから、気にしないでやって」


「あと、アヤ、酔いすぎだよ」


私はそう言ってえーちゃんのところに戻った。


「そろそろ時間だし、カラオケに移動しようか」


えーちゃんに言われた。


「うん。会計しなきゃ…」


「葵ちゃんも酔ってるし、俺がやるから」


えーちゃんが立ち上がって会費集めと会計をして、みんなで外に出た。


アヤはさっきまでとは打って変わって静かになっていた。


「アヤ、大丈夫?歩ける?」


「葵…ごめん、私大変なことしちゃった…」


「別にアヤは何もしてないよ。ちょっと酔っただけじゃん」


「違うよ…私…」


「ほら、アヤ、カラオケ着いたよ。一緒に歌おう?」


みんなでカラオケルームに入ったが、アヤは部屋の隅に座り込んでいる。


サニーとなっちゃんが2人で歌い出した。


私はアヤの傍に行き、


「大丈夫だから、ね、アヤ」


アヤは泣き出した。


「私…葵に」


「だから…」


そのときだった。

ノブが私たちのところに来た。


「俺が話すから、葵は戻れよ」


そう言って、


「アヤ~、泣くなよ~」

アヤの頭を優しく撫でている。



あっ…



そうか、そうなんだ…



「サニー、次はサザン歌ってね!」


私はそう言って部屋を出た。


横を見ると非常階段があり、それを登ったら屋上に出た。



酔った身体を涼しい風が通り抜ける。


私は煙草に火をつけた。



多分これからつらいことが起こるんだ。


アヤのことも、ノブのことも、私が一番良く知ってる。


だから、わかる…



今は考えたくない、まだ考えたくない。



すると、私のほうに近づいてくる人影があった。



「えーちゃん」


「トイレかなとも思ったけど、こっちかなって。サニーがサザン歌うのにって言ってたよ」


言われてみると、サザンが遠くから聞こえてくる。



「リクエストしたのに失礼だね、戻らなきゃ」


私が立ち上がろうとすると、えーちゃんはそれを押さえて隣に座った。


「なっちゃんがいるから大丈夫だよ」


そう言って煙草に火をつける。


「私も酔っぱらっちゃって、風にあたりたくて」


「葵ちゃん、ノブのこと好きだったんだ?」


「…ノブが言ったの?」


「ノブはそんな奴じゃないよ。アヤちゃんがあれだけ騒いだら聞こえちゃうよ」


「あれは…」


私が煙草に火をつけようとしたら、えーちゃんがそれを取り上げて、火をつけて一服して私にくれた。


ちょっと照れくさい自分を隠して、


「あれは、大昔の話で…なんていうか、アヤが話を大きくしただけだよ」


「ってか、戻らないと…」


「いいんじゃない?戻りたくないでしょ」


「…」


私はまた箱から煙草を取り出したが、それはまたえーちゃんに奪われた。


そして、いきなりえーちゃんの唇が私の唇に触れた。


びっくりして、目を閉じることもできなかった。


多分僅かな時間だったのだろう、えーちゃんは顔を離して煙草に火をつけて私にくれた。


「…いつも、こんなことしてるの?」


えーちゃんは少し笑っただけで何も答えず、自分も煙草に火をつけた。



ファーストキスだったんだけどな…

想像してた相手じゃなかったな…


あの人は…あの娘の傍にいるんだろうな…


「葵ちゃん」


「えっ?」


「あんまり優しいと、傷つくよ」


「…」


「そろそろ戻ろう、酔いも冷めたでしょ」


「うん…」



部屋に戻ると、アヤが駆け寄ってきた。


「葵!大丈夫?」


アヤはすっかり元気になっていた。


「ごめんごめん、トイレで寝ちゃって」


「ノブ、俺車取ってくるし、そろそろみんな送ってくよ」


「えーじ悪いな。よろしく」


「葵、最後にいつものやつやろうよ!」


「やろっか笑」


「はーい!2人で本物よりカワイイPuffyやりま~す♪」



明日からのことは、明日考えようー



もう全ては始まってしまったのだからー

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