出会い
やっと念願の大学生になった。
これで自由に生きられる。
今までの全てから解放されるー
私は学校が嫌いだった。
他の生徒と同じことを求められる日々。
個性を異端と扱われる環境。
全てになじめなかった。
友だちもほとんどいなかった。
学校とは、義務教育とは、監獄だと思っていた。
そんな私が高校まで学校に通ったのは、ひとえに
大学に行きたいー
その気持ちだけだった。
大学に行って、好きなことを勉強し、似たような価値観の友だちを作る。
大学は私にとっての希望だった。
私の入った大学は、お坊ちゃん、お嬢ちゃん、優等生が多いミッション系の大学だった。
お世辞にも優等生とは言えない学生だった私は、大学に入ってもやっぱり異端だった。
行儀良く挨拶して会話しても、どこか違和感があったし、不良だと噂されたりもした。
ーやっぱり友だちはそんな簡単にはできないかぁ…
それでも良かった。好きなことを勉強できる。
元々ひとりには慣れているし、別に困ることもなかった。
そんなある日、たまたま取った法学の講義で講義が始まるのを待っていた。
すると、私の目の前を知った顔が横切った。
「アヤちゃん?」
通り過ぎた彼女が振り返り、私を見て微笑んだ。
「葵ちゃん。この講義取ってたんだ?」
そう言って私の方に戻って来て、
「この講義、私も知り合いいなくて。隣いいかな?」
「あ、うん」
アヤちゃんは同じ学科で、長い黒髪とぱっちり二重の美人だった。
笑顔が素敵で、男子生徒の注目の的だった。
正直私は興味もなかったし、自分とはほど遠い存在だと思っていた。
隣に座ったのはいいが、何を話したらいいのかわからないままお互いに黙っていたら講義が始まった。
法学は、一般教養の中から選ばなければいけなかったから取っただけで、元々特に興味があったわけでもない。
講義は5分で飽きた。
15分でイライラしてきた。
30分で我慢の限界を超えた。
「アヤちゃんごめん、私さぼるわ」
すると、アヤちゃんから意外な返事が返ってきた。
「私も限界。一緒に抜けよ」
二人で講義を抜け出した。
外に出て、二人でベンチに向かって歩いた。
「いやー、あの講義つまんないわー、単位取れるかな?」
「なんとかなるよ~、それよりやっと講義さぼれた~、あはは」
「えっ?アヤちゃんさぼりたかったの?私もさぼったの初めてだよ」
「だって、大学生って、授業さぼって遊んだりしてるイメージじゃない?
そういうのがやりたかったの~
でも、みんななんかマジメだからできなくて」
「あはは、そうだったの?
私もそういうの憧れてたんだけど、なんかみんなそんな感じじゃないし…
アヤちゃんだって、そんなふうに見えないよ?」
「見た目で判断されてもね笑
葵ちゃんはさぼってるようにしか見えないけど笑」
「何それ、失礼じゃない?笑
アヤちゃんて、もしかしておもしろい人?」
「アヤって呼んで。ちゃんとかさ、いらなくない?
学校始まって1ヶ月も経つのに、誰ともちっとも仲良くなれないよ」
「じゃ、私は葵でよろしく。
私も誰とも仲良くなれなくてさあ。
正直アヤのことだって優等生にしか見えなかったし」
「葵はヤンキーにしか見えないよね笑
私怖かったし」
「アヤ…顔と口の人格違くない?」
「あはははは」
二人で笑った。
この出会いは運命だと、私もアヤも、そう気づいていたと思うー