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業火剣乱の狂奏曲《コンチェルト》  作者: ムササ
第一章 機械の奏でる狂奏曲
3/113

#2 はい、あーん


 ミーディア学園初日、フリーダムナイツの操縦士を育成するこの学校はその性質上高校に分類される。

 だが、フリーダムナイツの操縦士の育成は全人類にとって急務であり、中学校からフリーダムナイツの学習を取り入れている。


 グリモアに対し、フリーダムナイツ以外の現存する兵器は足止め程度にしかならず、それ故に世界の軍事バランスは崩壊。

 結果的にフリーダムナイツの基礎理論を保有しているアメリカが、実際にはその技術を独占していた。

 当然それに危機感を募らせた諸外国はフリーダムナイツの運用規定、通称モスクワ協定を強制的に定める。

 それによってフリーダムナイツの情報開示と共有、研究の為の新たな国連機関の設立、さらには人間に対する軍事利用の禁止が定められた。


 だが人間がそんな事をしている間にもアウターによるグリモアの進行は続き、遂にアフリカ大陸が陥落、アフリカ大陸はアウターの手に落ちた。

 更に進行は続き、オーストラリア大陸に狙いを定めたアウターは進行を開始、それに慌てた世界各国の首脳はフリーダムナイツの試験運用も兼ねて試作型のフリーダムナイツ50機と軍隊を投入。

 それによってフリーダムナイツの威力はわかったものの、現存兵器は壊滅。

 そのままフリーダムナイツのみ本国へと帰り、オーストラリア大陸もアウターの手に落ちた。


 皮肉にも世界の五大陸の内、二つの大陸を犠牲にする事で、フリーダムナイツの運用は飛躍的に進歩。

 今に至る。


 そして島国であり、それなりの技術力のある日本にフリーダムナイツ操縦士育成機関、ミーディア学園を建て世界からフリーダムナイツの操縦士を目指す若者が集まり、日本は一躍世界の一大プロジェクトの真っ只中に落とされた。


 〜〜〜〜〜〜〜


 二時間目、座学。

 学園の案内を一通り終えたらその様な授業を一通り教えられる。

 いくらフリーダムナイツの育成を目的とする学校とは言え、勉学も他の高校に比べ少ないものの、ある。

 その為、『ジュエル』と呼ばれる体内器官がある者たちは殆どこの学校に通う。(それには各国のエゴも絡んでいる為、殆どジュエルを持つものは強制的に入学させられる)

 ジュエルを持たない者にとってこの学園は憧れであり、尊敬の対象であった。


 多賀先生の妙に緩い座学を一通り聞き流して、二時間目終了のチャイムが鳴る。

 今日の授業は後一つだけである。

 入学式が終わった時間が遅いため最後の授業の前に昼食の時間となっている。


「ふー、やっと終わった。さあ昼飯食いに行こうぜ」


 俺は美月とライラ、オルトを誘ってさっき案内して貰ったばかりの学生食堂へと向かった。


「おおー、凄い立派だねー」


 開口一番ライラがそう告げる。

 確かにその食堂はかなりの広さを誇っており、メニューもかなりの数が伺える。

 流石は世界の一大プロジェクトの中心的位置に存在する学校である。

 確かによく見れば所々にある調度品も素人目に見ても良いものだと分かるくらいには高そうである。


「此処が空いているな」


 美月が見つけてくれたテーブルに四人で腰掛ける。


「「お先にどうぞ」」


 席に着くなりデクアルート兄妹がそう言ってくれた。

 別に盗られる様な物は置いていないのだが、席取りを兼ねて座って貰う事にした。

 そうして俺と美月は二人でメニューを見に行った。


「何食べようか」

「私は、そうだな。このブリの照り焼き定食にしようと思う」

「おお、旨そうだなそれ。じゃあ俺は生姜焼き定食にしようかな」


 俺たちは食券を買い、昔から変わらぬ白衣を着たおばちゃんに食券を渡すと、3分も待たずに二人分の食事が出てきた。

 そうしてテーブルに着くとデクアルート兄妹も買いに行き、二人はそれぞれカルボナーラとボロネーゼを貰ってきていた。


「「「「頂きます」」」」


 おお美味いなこの生姜焼き、白米がよく進む。

 生姜も程よく効いていて、ボリュームもありこれで600円は安い。


「ねえねえ、どうせなら一口ずつ食べ合いっこしない?」


 美月と俺を交互に見渡してからニヤッと笑ってライラがそう提案してくる。


「おお、良いこと言うな俺もそのパスタ食いたかったんだ」

「私は、構わんぞ」

「じゃ、決まりだな」

「はい、オルト兄。あーん」


 ライラがフォークとスプーンを使い、オルトに差し出す。

 ちなみにライラがカルボナーラである。


「おお、これも美味いな」

「でしょ、オルト兄もちょーだい」

「ほれ、あーん」


 オルトがライラにボロネーゼを差し出す。

 おお、やっぱり仲が良い兄妹は良いものだな。

 ん?美月なんでそんな顔を赤くしているんだ?


「オルト、俺のも食うか?」

「ああー、すまん俺生姜食えないんだ」

「そうなのか、ごめんな」

「いや、良いんだ」

「ライラはどうだ?」

「ゴメン私もちょっと苦手かな…」


 ん?じゃあ何で食べ合いっこしようなんて言ったんだ?



「あっ、じゃあそのパスタを…ってもう無いし…」

「あっ、ゴメーン全部食べちゃった」


 なんか棒読みでそう言われた。

 そっとオルトの方を見ると動揺であった。


「じゃあほれ美月、あーん」


 あげる相手が一人しかいなくなったので美月に生姜焼きを一つ摘んで差し出す。

 あれ?なんでさっきより顔が赤くなってるんですか?美月さん。


「ばっ…鋼夜……おま……あ、あーん……って……」


 あれ?なんでそんなニタニタしながら見てるんですか?オルトさん、ライラさん。

 ああ、分かった高校生にもなってあーんされるのが恥ずかしいんだな。


「ほいっと」


 隙を見つけて美月の口に生姜焼きをねじ込む、これぞ必殺不意打ち。


「!!!!!!!!」


 真っ赤な顔で俯きながらモグモグと口を動かす美月は何故か俺を睨んでいた。


「ほら、生姜焼きあげたんだから俺にもブリの照り焼きくれよ」

「そ、その、なんだ。お前も……あ、あーんをやって欲しいのか?」

「いや?別にお前が恥ずかしいなら良いぞ」

「い、いや!そうではない!良いぞ!ほら、口を開けろ!」


 妙に慌てた様子の美月の様子を変に思いながらも俺は口を開ける。


「あ、あーん」


 妙にニヤニヤしながら見てくるライラを見ながらその日の食事は終わった。




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