2014年2月26日 前期音響学2
「お、来たか」
「おじゃまー」
「邪魔すんなら来るなー」
「え~!」
来て早々のやり取りは、どことなく穏やかなものであった。
今日はすでに用意されていたティーカップを片手に、ソファーにてくつろぐエインズの元へかけよった神月は、昨日と同じものをテーブルに広げる。
「ん、昨日の続きか」
カップから口を離したエインズの問いかけに、神月はうん、とうなずいた。
「流石にちょっと進めてないとだからねー。――と言う事で」
本日のお勉強会の始まりである。
「音は波の一種ですが、その波には2種類の波があります。なんでしょう?」
「横波と縦波。横波は、波の進行方向と垂直に媒質が運動する波のこと。縦波は、波の進行方向と同方向に媒質が運動する波のことで、音は、空気の分子の密度が低い粗波相と、高い密度の密波相が交互に縦に続いている状態である粗密波だから、縦波だな」
「さすが! じゃあ、『ある状態から元の状態に戻るまで』をなんていう?」
「……サイクル?」
「せーかい! 『一サイクルにかかる時間』のことは?」
「周期。で、一秒間のサイクル数を周波数といい、Hzっていう単位で表す」
「じゃあじゃあ、『音の三要素』は何か分かる?」
「大きさ・高さ・音色。……『音の高低』は何で決まる?」
「あ、えっと、周波数! 高い音ほど、周波数は高いんでしょ?」
「正解。なら強弱は?」
「振幅! 強い音は振幅が大きいんです」
「その通りだ。なら『音の強弱』の表現はどういったものでする?」
「えっと……物理的な表現! で、音の大小は感覚的・心理的な表現――loudnessで表すんでしょ!?」
「大正解だ。次は何だ?」
「んと、純音」
「最も単純な音で、正弦波形の音のことだな。ちなみに、周波数の異なる純音が集まった音を複合音といい、複合音の中でも、構成する純音成分の周波数が最低次成分の整数倍になっている音を周期的複合音という」
「うんうん。で、複合音の中の周波数成分のうち、最も低いものを基本周波数って言って、その成分の音を基音というのね」
「後、基本周波数の整数倍である音からなるものを単音と言うんだったか」
「うん、合ってる! 後は……正弦波を規定する物理量は、周波数・振幅・位相の三要素ってやつね」
「ふむ。位相ってのは、一周期中のどの時なのかってのを表す量のことだったな」
「そうそう。――後の小難しいのは飛ばして――」
神月の瞳が、今日一番の輝きを見せた。
「フーリエの法則!」
楽しそうにそう告げる声に、エインズがしゃーねぇなぁ、と説明を紡ぐ。
「周期的な波は整数倍の周波数の、正弦波を足し合わせて作ることが出来る、という原理のこと――だろ?」
ふっと笑んでの問いかけに、神月が深くうなずいた。
「うん!!」
昨日の続きである勉強はさくさくと進み、神月にとって有意義な時間となったのだった。