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結論



ここまで読んでくれてありがとう。


今回で東方逃走録は完結だが、後書きにお知らせがあるから、しっかりそこまで読んでくれるとうれしい。



春花の首めがけて振り下ろされた白刀は、春花の首を薄皮一枚斬って止まった。


「なっ!?」


素戔嗚は必死に刀を振ろうとするが、腕はピクリとも動かない。


さらに、


「く!?な、なんだ!これは……!狂気が…消えていく…?」


素戔嗚から急激に力が失われ、代わりに、暖かい力が場を満たす。


「……?」


その様子に、春花もようやく周りを再認識し始めた。


「くそっ!!」


素戔嗚の体が一瞬ぶれると、離れた位置に昔の姿の素戔嗚が現れる。


「……大丈夫か?」


そして、春花に手を伸ばす影が一つ。


それは、先程まで素戔嗚が乗り移っていた人間だった。


「え?」


「ほら、立てよ」


その人間は、春花の手を取ると、引っ張り上げて立ち上がらせる。


「あなたは…」


「あなたじゃない、俺は鈴風隼人だ。」


「なんで…自己紹介なんか……、私を恨んでるんじゃないの?」


春花の疑問に、隼人は苦笑いをしながら答える。


「……確かに、俺はあんたを恨んでいた」


「だったら…!」


「…だけど、もういいんだ」


「なんで………?私は、あなたの幸せを奪ったんだよ?そんな私を、どうして助けるの?」


「なんでかは俺にも分からねえ。でも、体が勝手に動いた。そしたら、今までの恨み辛みが全部どうでもよく思えた。……だから、もう気にしてはいない。だから、あんたも気にするな」

その言葉を聞いた瞬間、春花は罪が許されたと感じた。


今まで悩んでいたのが馬鹿みたいに思えた。


「……ありがとう」


「礼はいらねえよ」


吹っ切れた春花が地に落ちた黒刀を手に取ると、ようやく素戔嗚が復活する。


「……貴様、許さんぞ」


その言葉を聞いて、隼人は素戔嗚の方を向く。


「別にお前に許される義理はねえよ」


素戔嗚から放たれる殺気に、隼人は白刀を向ける事で応える。


「今思えば、お前には散々世話になったな」


「最初から最後まで操られていた人形風情が!」


二人は睨み合い、火花を散らす。


「…待って、私も戦う」


そのとき、黒刀を手にした春花が、隼人の隣に並ぶ。


「素戔嗚……ここで決着をつける」


「鈴風春花……今ここで殺す」


狂気だった素戔嗚がゆっくりと実体を纏う。


「もちろん、俺も忘れんなよ」


素戔嗚が実体化したと同時に、二人は駆け出した。


「そこっ!」


隼人の胴を薙ぐ一撃を、素戔嗚は後ろに下がることで避ける。


「はっ!」


そこを春花が黒刀で縦に切り裂く。


横に飛ぶ素戔嗚だったが、避けきれず左肩を斬られる。


今まで長い間共に戦ってきたかのような、絶妙なコンビネーションだった。


実際に共闘するのは初めてだが、お互いの体に残る魂の残滓が完璧なまでの連携を実現させていた。


「く!貴様ァ!!」


素戔嗚が刀を振り切った姿勢の春花に新たに生み出した草薙の剣で切りかかると、それを隼人が受け止める。


そのまま鍔迫り合いになるが、隼人はそのまま刀を押し込み、刀ごと叩き斬る。


「桜符「舞い散る桜・盛者必衰」!」


体勢が崩れた素戔嗚に、春花のスペルが襲いかかる。


春花が刀を振ると、軌跡をなぞるように桜の花びらを模した弾幕が発生する。

そのまま春花も素戔嗚の元に飛び込み、刀を振るう。


体勢を崩した素戔嗚が避けれるはずもなく、素戔嗚は体を切り裂かれる。


「任せる!」


そして、春花が後ろに下がった瞬間、隼人が霊力をスペルとして放つ。


「任せろ!砲符「未来からの呪怨と祝福」!」


瞬間、隼人から二本のレーザーが素戔嗚に向かう。


スペルに直撃した素戔嗚は吹き飛ばされるが、ギリギリで体勢を立て直す。


「ぐはっ!!」


「隼人!」


「春花!」


二人が互いの名を呼び、共にスペルカードを構える。


「「これで終わらせる!」」


「「神符「真実の刃」!」」


二人がスペルを唱えると、二人の目の前に巨大な刀が現れる。


二人でそれを掴むと、大きく振り上げる。


素戔嗚は避けようとするが、体が動かない。


「くそ!!俺は狂気だ!狂気がある限り、何度でも貴様等に立ち向かうぞ!」


そして、素戔嗚は巨大な刀に斬られ、空中に溶けるように消えていった。


「………終わった?」


素戔嗚が消えたのを見た春花だったが、いまいち実感が湧かなかった。


「ああ、終わったんだ」


隼人に肯定されることで、ようやく実感が湧いてくる。


「それじゃあ、一緒に村に行こ?」


「……いいのか?」


「悪いのはあなたじゃなくて、素戔嗚だったんだから」


「ハハ、さっきと逆だな」


先程とは逆の立場になったことに気づいた二人は共に笑いあう。


「春花~!」


そのとき、遠くから聞き慣れた仲間達の声が聞こえる。


「ちょっと待ってて、今説明してくるから」


「頼む」


そして、春花は仲間達の元へ走っていった。


「春花!」


「澪!空!水花!」


「春花!大丈夫だったのかい?」


三人は春花を囲んで体のあちこちを見る。


「大丈夫だよ」


「………怪我はないね。急に弾幕が飛んでいたから、心配したんだよ?」


「それを見て、私達は急いで来たんですよ?」


「澪、心配かけてごめんね、空、ありがとう」


「ところで、あの人は誰?」


水花が隼人を指差す。


「……あいつは!」


それを見て、澪が拳を構える。


「待って!隼人は味方だよ!」


その姿を見て、春花が慌てて澪の前にでて、先程までのことを説明する。


「……まさか、春花がね…」


「今まで黙っててごめん」


「別にいいんだよ」


「ありがとう。じゃあ、ちょっと隼人を呼んでくるね」


「隼人~!」


「春花、もういいのか?」


呼ばれたのに気づいた隼人が春花の元に歩いてくる。


そのとき、隼人の前に澪が立ちふさがる。


「澪?」


「…あたしのこと、わかるかい?」


「……ああ、操られていた時の記憶もある。本当に、すまなかった」


澪が言っている意味を察した隼人は、澪に向かって頭を下げる。


「頭を上げてくれ、あたしが言いたいのは、もっと単純なことだ」


「……なんだ?」

隼人が頭を上げると、澪は拳を握る。


「一発だけ殴らせろ」


瞬間、澪の腕がぶれ、隼人が大きく吹き飛ぶ。


澪は鬼の中でも最強の存在。


拳で殴るという行為を究極まで突き詰めた結果、彼女に物理的理由で殴り飛ばせない物はなくなった。


そんな澪の腕から放たれた一撃は、的確に隼人の顔面を捉えた。


「澪!?」


「あんたがあたしを倒したことについては別にとやかく言うつもりはない。ただ、あんたが春花に復讐するためにこそこそ動いていたのが気に食わなかった、ただそれだけだよ」


隼人はゆっくりと起き上がり、こちらに向かってきた。


「……すまなかった」


「分かればいいんだよ。……そうだ」


澪は春花の方を向く。


「春花、今から宴会をしよう!」


「え、宴会?」


「こういうときは、一緒に騒げばわだかまりも無くなる。それに、みんなにも伝えた方がいいだろう?」

澪のその言葉に、空も便乗する。


「そららら、それは名案ですね!それでは、私は準備をしてきます」


いうが早いか、空は村へ向かって飛翔する。


「あ、待って!料理は私がするからね!」


その姿を追う水花。


「それじゃあ、あたしも先に行ってるよ」


そういい残し、澪も村へと歩いていき、後には春花と隼人だけが残った。


「………行かなくていいのか?宴会を始めるそうだぞ」


「そうだね。早く行こうか」


そう言って二人が歩きだそうとすると、


「見つけた!」


目の前にスキマが開き、紫が現れる。


「紫?どうしたの?そんなにあわてて」


春花の質問に、紫は身を乗り出して答える。


「実はね!遂に「幻想郷」計画が完成したのよ!!私の長年の夢の完成まで、後少しなの!!」


「本当に!?」


春花が共に喜んでいると、紫は真剣な眼差しで春花を見る。


「それでね、実は、あなたにも幾つか協力をして欲しいの」


「協力?」


春花がそう聞くと、紫は指を二本立てる。


「まずは、場所の話。幻想郷は周りから隔絶させるから、なるべくいろいろな地形があるのが最高なのだけれど、それにあなたの村の周辺を使わせて欲しいの」


「うーん、それは、村長に聞いてみないとわからないよ。私はあそこを管理はしていないから。ただ、妖怪の山はOKだよ」


「ありがとう。あと、幻想郷を作る際に、あなたの能力を借りたいの」


「隔絶させるなら、さしずめ、切り離す能力かな?」


「そうなの。それでここら一帯を切り離して、さらに私の能力で境界をいじる事で完成させるわ」


「それに関しては問題ないよ」


春花と紫が二人で盛り上がっていると、


「あ~、そこの二人、ちょっといいか?」


「あ、ごめん!」


「あなたは、どちら様?」


「俺は鈴風隼人、半人半神だ」


「隼人、半神だったんだ…」


「鈴風?と言うことは?」


「詳しくは後で話すけど、私の兄弟みたいなものかな」


「そういうわけだ」


「それは失礼したわね。私は八雲紫、スキマ妖怪よ」


「それじゃあ、今度こそ本当に村に行こっか。ついでにみんなにもこの話をしよう」


「じゃあ、はい」


春花の話を聞いた紫がすかさずスキマを開く。


「場所は博麗神社前よ」


「ありがとう。紫」


「すまない」


そう言って、三人でスキマをくぐる。


「春花、遅かったじゃないか」


「あれ?いつぞやのお菓子泥棒だ」


三人が神社に着くと、すでにかなりの数の人や妖怪が集まっており、あたりには料理の匂いがただよう。


「遅れてごめん。じゃあ、始めようか?」


春花がみんなの前に立つと、先程までの喧騒が嘘のように静まる。


「ええと、先ずはお知らせが二つ、まずは、彼、鈴風隼人が新しく村の仲間になります」


名前を呼ばれた隼人が前にでて、一礼をする。


「鈴風隼人だ。よろしく頼む」


続いて、春花は先程紫にされた説明と同じ様なことを言い、意見を聞く。


「太陽の丘は別に良いわよ」


最初に賛同したのは風見幽香。


「俺たちも賛成だ!」


「私達も、問題ありません!」


「春花さんがそういうのなら、この村は協力しよう」


幽香を皮切りに、次々と賛成の声が挙がり、全員が賛成した。


「みんなありがとう!それじゃあ、心配事もなくなったし、乾杯!」


「「「「「乾杯!」」」」」


みんなで酒を酌み交わし、料理をつまむ。


その様子には、妖怪も人間も関係なかった。


隼人も酔っ払いに絡まれる内に村人に慣れていった。


それから数時間後、片付けを終えた春花は、紫と共に神社の拝殿の奥にいた。


「じゃあ、始めるわよ?」


「大丈夫だよ」


先ずは、春花が空間を切り離す。


「紫!」


「それ!」


続いて、紫が結界の境界をいじり、術を完成させた。


「名付けて、「博麗大結界」ね」


「術の核は私と紫。私達二人が死なない限りは解けはしないね」


「これで……私の夢が」

「おめでとう。……ふわぁ、なんだか眠くなってきたよ」


「あら、だったら、今日はもう寝たら?彼氏さんを連れて」


紫のからかいに、春花は顔を真っ赤にする。


「そ、そんなんじゃないよ!隼人は家族みたいなものだよ」


「つまり、家族と言えるほどの仲なのね。熱いわね~」


「もう……紫、少し度が過ぎるよ」


「冗談よ。ほら、今日はもう寝なさいな」


「ありがとう」


そういって、春花は神殿兼自室に向かう。


「あ、隼人、住むところ無いじゃん。……しょうがない、とりあえず、今日は私の部屋に止めるか」


春花が拝殿前の敷地に向かうと、隼人は一人で酒を飲んでいた。


「……隼人、今日の寝る場所だけど……」


「……ああ、別にそこらで野宿でもするさ」


そういうと、隼人は立ち上がる。


「それだけどね。今日は、私の部屋に泊まるといいよ」


「……は?……いいのか?」


「いや、ほら、私達って家族みたいなものだし、これから先の為にも、ここで親睦を深めた方が良いかな~、なんて」


「……わかった。案内してくれ」


「こっちだよ」


二人は神殿に向かった。


「ここが寝室だよ。扉はいつも施錠してるから、外にでるときは私に声掛けて」


「すまないな」


そういって、隼人はかべに寄りかかる。


疲れていたのか、しばらくすると寝息が聞こえてきた。


「あ~、そこで寝ちゃうんだ……」


春花は隼人に毛布を掛けると、自分も寝床に入る。


「それじゃあ、おやすみ」


その言葉を最後に、部屋で聞こえる音は二つの寝息だけになった。








東方逃走録 完




東方逃走録は完結したが、春花達の生活はまだまだ続く。


後日、次回作を書くから、それもよろしく!



次回、「九尾の神と幻想郷」


第一話「目覚める九尾」


お楽しみに!



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