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真実


そろそろ逃走録も終わりが見えてきた…。




ところで、あなたは、自分では耐えきれない真実を知ったとき、一体どうしますか?




春花は、素戔嗚が現れたと報告が来た場所に来ていた。


「素戔嗚は…」


周りを見渡すが、どこにも素戔嗚の姿が見当たらない。


場所を間違えたのかと思った春花だったが、


「よく来たな」


突然背後から声がする。


「………まさか、タルタロスから脱出するなんてね」


しかし、それに驚く素振りも見せない春花は、ゆっくりと後ろを振り向く。


「あのときの屈辱、今でも忘れん」


そこには、どことなく春花に似た姿をした、依頼をしてきた少年……その姿を纏った素戔嗚がいた。


その言葉を聞いて、春花の中の素戔嗚への怒りが頭角を表す。


「本当に、二度と会いたくなかった」


「俺は会いたかったぞ。貴様を絶望の淵に落とすのを目的に、今まで生きてきたからな」


「……くだらない」


素戔嗚と会話をすればするほど、春花の怒りは増していく。


「貴様さえ居なければ、俺もこんなことはしなかったかもな」


「……なんで澪を襲った?」

怒りのあまり口調が威圧するものに変わったことに、春花は気づいていない。


「貴様の仲間を傷つけることと、あとは、暇つぶしだ」


「………本っ当に、くだらないことばっかりするね。……聞きたいことも聞けたし、そろそろ、始めようか?」


春花はゆっくりと素戔嗚から距離をとり、黒刀を構える。


「そうだな。さぁ、殺し合いの時間だ」


そういうと、素戔嗚は手に見慣れた刀を出現させる。


「……っ!?それは!?」


まさか白刀が素戔嗚の手にあるとは思わず、春花の動きが止まる。


「「白刀」……実際に握ってみると、素晴らしいものだな」


素戔嗚は、二度三度白刀を振ると、刃を太陽の光にかざす。


「なんであんたが私の刀を……」


「そもそも、貴様は疑問に思わなかったのか?」


「何を言って……」


「いくら貴様が規格外とはいえ、特別な能力者でも無い者が神力等だけで物質を創れる訳が無いだろう」


「………だから、何を言って「そもそも、」


春花の言葉を遮り、素戔嗚はさらに言葉を紡ぐ。


「貴様の過去はいろいろ不可解だっただろ?例えば………記憶は無いはずのにところどころ変に知識があったり(・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・)」


「っ!?何でそれを!」


今まで誰にも話したことが無い秘密を言われ、春花も戸惑う。


「だから、俺が貴様の疑問に答えてやろう。とはいっても、これは体の持ち主の記憶からだがな」


「……止めて」


このまま素戔嗚の話を聞いてはいけない。


春花は強くそう思った。


だがしかし、真実を知りたいという気持ちもあった。


その二つの相反する思いが、春花の動きを封じてしまう。


そして、素戔嗚の言葉は止まらない。


「貴様はな、この世界の住人(・・・・・・・)じゃないんだよ」


「…………」


「貴様が使っている体をは、本当はこの体の持ち主が使うはずだった。それを貴様は奪った」


「……どういうこと?」


「貴様は、元居た世界から「逃げ出した」。その結果、貴様の魂は偶然その体に入った。そして、その体の元の魂は、お前の元の体に入るしかなかった」


この世界の魂と体の数は等しい。


例えば、一つの体から出た魂が別の体に入るには、そこに元居た魂を追い出す必要がある。


そして、魂は必ずどこかの体に入ろうとする。


入れなければ、消滅する。


消滅しないためには、追い出された魂は空いているたった一つの体に入るしかないのである。


たとえ、その体がどんなに辛い人生を歩んでいたとしても。


「そして、体の再構築を終えた二人は、それぞれの居場所で目を覚ました。貴様は森で、こいつは科学に満ち溢れた不幸な世界に」


「思わずあるかもわからない力に縋って逃げ出してしまうほどの人生を、こいつは歩まなければならなかった」


「本来なら、貴様が歩んだ人生をこいつが歩むはずだった。しかし、貴様はこいつの幸せを奪い取り、代わりに不幸を与えた」


「そんなこと…」


「事実だ。こいつの能力は、「あらゆる武具を創造する程度の能力」。本来、能力は魂に付いていくが、体に能力の残り香があったが故に、貴様は白刀を創れた。それが、貴様が幸せを奪った何よりの証拠だ」


「……私が…奪った?」


春花は、素戔嗚が放つ言葉をただ呆然と聞き入れていた。


確かに、そう考えれば今までのことが全て納得がいく。


永琳と町で暮らす際、それ程困らなかったのは、元から似たような科学レベルの場所に住んでいたから。


時々感じる既視感は、既に元の世界で知っていたから。


初めての出来事もなんなく出来たのは、それ程の人生経験があったから。


その事実を知った春花は、もはや素戔嗚に対する怒りは無かった。


「そうだ。貴様の所為だ」


「私の……所為…」


カラン…。


春花の手から黒刀が落ちる。


それを拾い上げる気力すら、今の春花には無かった。


そして、春花は力無く膝をついた。


「…ククク、どうやら心も折れたようだな。さて、そろそろ息の根を止めるか。……ようやく…ようやく悲願が達成される」


素戔嗚は、春花にゆっくりと近づき、白刀を振り上げる。


そこまで来ても、春花は動かない。


「死ね」


そして、白刀は春花の首めがけて、圧倒的速度で振り下ろされた。





ようやく…ようやく建てたフラグを回収できた。


最初の春花の能力、「あらゆるものから逃げ出す程度の能力」がもはやフラグだったのだ!


感想、誤字脱字の指摘、質問、待ってます。

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