己の宿命、託された力
うまく書けない(T_T)
「あ、もうこんな時間、私そろそろ宿に戻るね」
春花は、あれから毎日白玉楼に通っていた。
というのも、初日に幽々子から、「もし良ければ、明日から暇なときはここに来てくれない?」と頼まれたのであった。
この話は、依頼について考えていた春花にとってはまさに渡りに船だった。
それ以来、春花は毎日ここへ来ている。
「ねえ春花?今日はもう少し居てくれない?」
いつものように帰ろうとする春花を、今日は珍しく幽々子が引き留める。
「良いけど……。どうしたの?」
「実はね……。あなたに話したいことがあるの」
「話したいこと?」
「そうなの。まずは庭に行きましょう」
移動中~
「やっぱり、この桜はいつ見ても綺麗だね」
「話したいのは、その桜と、私について」
「幽々子について?」
「私はね、特殊な能力を持っているの」
「能力?」
幽々子が能力持ちということに、春花は驚く。
それというのも、春花は幽々子が能力らしきものを使ったところを見たことがないからだ。
「私の力は、「死へと誘う力」。この力を持つ者の近くに居れば居るほど、その者は死へと近づく」
幽々子が言うには、その能力を持つ者の周りには死の気配が満ちていて、常人なら近付いただけで立つことが出来なくなり、数時間と持たずに死ぬという。
「私はね。その力の所為で、私の周りには誰も居ることができなくなったの」
「…………」
「私の周りに居れるのは、私より力がある者のみ」
「なぜ、その話を私に?」
「あなたのことを信頼しているからね」
春花の問いに幽々子は笑いながら答える。
「それは嬉しいね。じゃあ、その話は紫にも?」
「ええ。………紫もあなたも全然気にしないのね」
「うーん、逆に聞くけど、なんで私が気にしなくちゃいけないの?」
「え?」
まさかそんな返事が返ってくるとは思わなかったのだろう、幽々子は驚いた表情で聞き返す。
「別に私に実害は無いんだから、それは私にとっては無いのと同じなんだよ。だから、私はそんなことは気にしないよ」
「………ぐすっ」
春花の答えに、少し下を向く幽々子。
「あ、えっと、大丈夫?」
「ええ、あなたの返事が嬉しくてね。ある程度力があっても、この話をすればみんな私から離れていったから、そんな言葉を言われるのも、初めてで……」
「安心して、私はそんな理由では離れないから」
「……ありがとう」
春花のその言葉に、笑顔で礼を言う幽々子。
「じゃあ、次はあの桜について話すわね」
「あの綺麗な桜?」
「そう……あの桜の名前は、「西行妖」。死を振りまく、妖怪桜」
「妖怪桜?」
「ことの始まりは、今から数百年前、ある一人の有名な法師が、この桜に魅せられ、桜の下で死を迎えたのが最初よ」
幽々子はそこで一度お茶を飲み、間を空ける。
「その後、その法師を慕っていた者や、同じくあの桜に魅せられた者があそこの下で死んでいった」
幽々子が指さすのは、西行妖の真下の地面。
「そんな風に何人もがあの桜の下で生涯を閉じていく中、遂に自ら命を絶つ者が現れ始めた」
「自殺…!?」
「最初の自殺を皮きりに、次々と自殺者は増えていったの。そして、死んでいった数々の人の魂は、すべてあの桜に取り込まれた」
「桜が、魂を?」
「人を死へと誘う力があの桜にはあったみたいで、その後も自殺者は絶えず、遂にあの桜は妖怪になった」
「そして、私は最初に死んだ法師の末裔。私の家系はあの桜の所為で人が死ぬのを止めるのがその命に刻み込まれた宿命。そして、長い間あの桜のちかくに居たからか、私にもあの桜と同じ力が備わってしまった」
「それが、「死へと誘う程度の能力」?」
「ええ。…このままあの桜があったら、これからももっと人が死ぬ(………けれど、それも私の代で終わらせる)(ボソッ)」
幽々子は言葉の最後で小さくつぶやくが、その言葉は春花には届かなかった。
「………そっか。」
「あら、もうこんな時間ね。春花、あなた今日はここへ泊まっていきなさいな」
「いいの?」
「もちろん。…妖忌!今日は春花も泊まるから、夕食一人分……いや、十人分追加ね!」
「そんなに!?」
「九人は私の分よ」
「さっき私が持ってきたお饅頭二箱食べてたじゃん」
「あら、あんなのじゃ小腹も満たせないわよ」
「……幽々子ってそんなに食べたっけ?」
「私はいつもそのくらい食べてるわ。そういえば、春花と一緒に食べたことなかったわね」
そんな話をしていると、部屋の障子に影が差し込む。
「……幽々子様、夕食の用意が出来ましたので、今お持ちします」
「ご苦労様、妖忌」
入ってきたのは妖忌。
春花が幽々子と初めてあった次の日に聞いた話だが、ここにいるのは幽々子と妖忌の二人だけで、妖忌が幽々子の世話係兼庭師を勤めているらしい。
最初の出会いこそ最悪(主に妖忌の勘違いの所為)だったが、今ではそれなりに打ち解け、春花はたまに剣の稽古をつけてもらっていた。
最近ようやく妖忌と戦いで勝てる様になってきたので、最近は試合をよくしていた。
「あ、師匠、私もお手伝いします」
「いえ、春花殿はご客人。客人に手伝いをさせるほど、この魂魄妖忌、耄碌しておりませぬ」
「私は客としてではなく、師匠の弟子として言っているので、遠慮はいりません」
春花が手伝いを申し出ると、妖忌は堅物らしく断るが、続く春花の言葉にはさすがの妖忌も驚いく。
「ほう、そうまで言うのならば、手伝ってもらおうか」
「はい、師匠」
こうして、三人で夕食を食べ始めた。
「………幽々子?それって一体何人分?」
「だいたい成人男性ニ十人分くらいですぞ」
「……うう、見てるだけでお腹がいっぱいになりそう」
「あら、じゃあ春花の分ももらって良いかしら?」
「まだ食べるの!?」
「………この食欲により、白玉楼の財政の九割は幽々子様の食事に使われております」
「……師匠、ご苦労のほど、ご察しします」
「……すまぬ」
「さあさあ、そんなことばかり考えてないで、みんなで食べましょう」
「そうだね」
十数分後~
「ふ~、食べた食べた」
幽々子の目の前にあった料理の数々は、すべて幽々子の腹の中へ消えていった。
「それはさすがに早すぎるでしょ」
さらに幽々子の食への進撃は続く。
「妖忌、食後の甘味をお願い」
「承知しました」
「……もう私は驚かない」
もはや春花も幽々子の食事関係でのツッコミを諦めた。
~~~~~
「ごちそうさまでした」
「ふー。お腹いっぱいになったら眠くなっちゃったわね」
「そうだね。少し早いけど、もう寝る?」
「あ、春花、どうせなら一緒に寝ましょうよ」
「へ?な、何言ってるの?」
「うふふ、冗談よ」
「それでは春花殿、御部屋へ案内致します」
「わかりました」
「お休み、春花」
「お休み幽々子」
「……これでお別れね。春花」
春花が去った後、幽々子は一人部屋でそう呟いた。
~~早朝~~
「ふぁ~あ」
朝、春花が目を覚ますと、なんだか庭の方が騒がしかった。
「~~!~!!」
「ん?どうしたのかな?」
春花が部屋を出て、庭へ向かうと、
「………様!、……子様!!」
桜の下で妖忌が何かを抱え名を呼んでいた。
「……師匠?いったいどうしたんで……っ!?」
春花が近付いてみると、妖忌が抱えていたのは、幽々子だった。
「幽々子!?」
慌てて駆け寄り、体を揺するが、目には既に光は無く、その胸には一本の短剣が深くまで突き刺さっていた。
幽々子は、物言わぬ死体となって、桜の下に横たわっていたのであった。
死亡から既に時間がたっていたのか、幽々子の下の地面は赤黒く染まっていた。
「非道い………、誰がこんな事を……」
そのとき、春花は幽々子の元に一枚の手紙があるのに気がついた。
「これは……」
裏を見ると、「春花と妖忌へ」と書いてあった
「師匠、これ……」
「それは……。春花殿、読んでもらっても、よろしいだろうか?」
「わかりました。読みます。」
「春花と妖忌へ
これを読んでいるということは、私はもうこの世にいないということになるわね。
春花、こんな事に巻き込んでごめんなさいね。
妖忌も、今までありがとう。いきなり分かれる羽目になってしまってごめんなさい。
そして、これは主としての最後の言葉よ。私が死んでも、絶対に後を追ったりしないでね。
最後に、春花、あなたには西行寺家に伝わる宝刀を渡すわ。是非役立ててね。
その代わりといってはなんだけど、私の死体を使って、この西行妖を封印してくれないかしら。これでもう誰も桜によって苦しめられる事は無くなるから、お願い。
最後に、二人とも、今までありがとう」
「……以上です」
「幽々子様は、儂が考えることはお見通しということか」
「………師匠、幽々子の願い、叶えましょう」
「……承知した」
春花は幽々子を西行妖の真下に横たえ、詠唱を始める。
「……この者の体を触媒に、彼の物を封印したまえ……封符「枯れ逝く桜」」
春花の詠唱の終了と、スペルカードの宣言と共に、桜と幽々子が淡い光を放ち、幽々子は宙に浮き、桜へと引き寄せられていく。
「……さよなら、幽々子」
幽々子が桜に取り込まれると、桜は急に花びらが散った。
その後も、しばらく二人はその場に残った。
「………それでは、遺言通り、宝刀をお渡ししますので、蔵へご案内致します」
「わかりました」
そうして二人が立ち去ろうとしたとき、西行妖が先程とは比べものにならない光を放つ。
「な、何!?」
目を焼きそうになる光が消えた後、春花の目に映ったのは、
「………幽々子?」
「これは……亡霊ですな……しかし……こんな事が……」
二人の思考が止まる中、倒れていた幽々子はゆっくり起き上がる。
「……幽々子様!!」
慌てて妖忌が駆け寄るが…
「……あなたは、誰?」
「え?」
「それに、此処は何処なのかしら?」
幽々子は心底不思議と言わんばかりに首を傾げる。
「……わたしは、魂魄妖忌と申します。今後あなたに仕えさせていただく者です」
「そう……、そこのあなたは?」
「わ、私は通りすがりの旅人だよ」
「あら、そうなの。」
「(なんだかよくわからないけど、ここは早めに帰った方がいい気がする)」
特に根拠があった訳では無いが、春花はふと思った。
「それでは、幽々子様、御部屋にご案内致します」
「ありがとう」
どうやら自分の名前は覚えているようで、幽々子は妖忌について行き、白玉楼へと入っていった。
しばらくすると、妖忌だけが戻ってきた。
「師匠……いいんですか?」
「どうやら幽々子様は名前以外の記憶が消えているようだ。しばらくは記憶の錯乱があるようです」
「そうですか……」
「そして、これが刀です」
妖忌が渡してきたのは、黒の鞘に桜の花びらが散らされた比較的シンプルな見た目の刀。
「名を、「黒刀 千本桜」」
「……本当に良いんですか?」
「いや、むしろ春花殿に持ってもらった方が良いでしょう」
「ありがとうございます」
「……これから、どうするのですかな?」
「とりあえず、村……故郷に戻ろうと思います」
「そうか……それでは、またいつか」
「はい」
そうして、春花は白玉楼を立ち去った。
終わりが締まらない。
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