庭師の勘違い
書き溜めを作らねば!
「ここが白玉楼………」
春花がたどり着いたのは、ここら一帯の中でもかなり大きな屋敷。
庭には、これまた大きな桜の木が植えてあり、その花びらが舞っている様はとても綺麗な景色を描いていた。
「……へぇ、あながちただの噂じゃないのかもね」
春花が眺めている桜からは、莫大な量の妖力が発せられていた。
噂の真偽を確かめようと、桜に近付くと、
「……そこの者、何をしている」
突然後ろから声をかけられる。
後ろを振り向くと、そこには刀を二振り背負った老人がいた。
「……?」
しかし、春花が注目したのは、老人の周りを漂っている白い塊。
「そこの者、何をしていると聞いている」
老人から再びの質問がされるが、今度は多少の怒気と、不審がっている様子が含まれている。
「あ、いえ。たまたま通りがかったらとてもきれいな桜が見えたので、つい近くまで寄ってしまいました。……ところで、あなたの周りを漂っているそれは一体…?」
春花は、依頼主との約束があるため、まずは適当(これも本心)な理由と、少しの疑問を述べる。
しかし、老人は春花の質問に顔色を変える。
「……お主半霊が見えるのか!?まさか、物の怪か!は、さては幽々子様を狙って!?そうはさせんぞ!」
老人は背中に背負う刀の内、長刀を抜刀する。
「あちゃー。なんかもう話し合いできなさそうなんだけど……」
「なにを今更!怪しい物の怪め!お主の好きにはさせんぞ!魂魄妖忌、押して参る!」
老人……妖忌は刀を手に春花に切りかかる。
「うわっ!?危ないでしょ!」
春花はそれを横に跳ぶことで避ける。
「く、これを避けるか。しかし、この楼観剣に、切れぬものなど無い!!」
避けられたことに一瞬驚く妖忌だったが、そこは一流の剣士(と思われる)だけあって、すぐに次の斬撃を放つ。
「ちょっ!」
しかし、それも転移で避けられる。
「あー、もう!少しは話を聞いてよ!」
「物の怪の話など、聞く耳持たんわ!」
続いての斬撃は、春花の手前で振り抜かれ、はずれたと思われたが、その斬撃の軌道をなぞるように妖力弾が放たれる。
それは春花に当たった………様に見えたが、そのまますり抜ける。
「なに!?」
「ふー。危ない危ない。念のために幻術使っといて良かった」
「くっ!小癪な!面妖な術を使いおって!!」
妖忌に諦める様子はなく、高速で春花に接近すると、一息の合間に十以上の斬撃を放つ。
春花は、そのすべてを、転移で避け、幻術でごまかし、さらには柄を殴って無理やり軌道をそらすことで避けた。
「避けるでない!!」
「避けなきゃ私死んじゃうからね!?」
実際には刀で斬られた程度では死なない春花だが、本人はそのことを知らない。
「ふっ!はっ!てやっ!」
「ちょ、ま、危な!?」
勝負(という名の一方的な攻撃)はこのままずっと続くと思われたが、それは唐突に終わりを告げる。
ズルッ!
「あ」
ゴツン!!
妖忌が踏み込もうとしたその瞬間、小石を踏みつけた妖忌は、足を滑らせ、そのまま近くの岩に頭を強く打ち付けた。
「えーと……、大丈夫?」
「…………」
春花が妖忌の様子を見ると、白目をむいていた。
「……完璧に気絶してるね。とりあえず、治癒符「パーフェクトヒール」」
春花は懐からスペルカードを取り出し、妖忌の傷を癒やした。
「傷は癒えても目は覚めないから……どうしよう?」
その時、
「あら、春花じゃない」
聞き慣れた声が聞こえた。
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